第1章・緑色の瞳の少女と青色の瞳の少女(3)
「?」
「あら。目が覚めたわね。よかった」
明羽はハッとして身体を起こそうとする。が、
「うぐっ!」
左の
「う……うぅ……」
「ああ。ほら。急に動いちゃダメよ。まだ完全に
「誰!?」
警戒心丸出しの
「ちょっとー。確かに私は何もできなかったけど。そんな態度取らなくたっていいじゃない」
「? ? ?」
混乱する
「先に自己紹介させてちょうだいな。私は
「な、何が……。私……私、確か狩人に見つかって、追われて……。……
「ああ、もう、ほら。急に動くから」
「あなたはね。村の外、まあ、村からは大分離れてたみたいだけど。行き倒れていたところを
「…………」
「あなたは七日間眠ってたわ。目覚めて良かった。ホントに」
優しい声に
「ありがとう、ございます」
「あら。お礼言ってくれるのね。嬉しいわ。少しは落ち着いたみたいね」
「……
「あ、あらら?」
泣きべそをかき始めた
「病み上がりで、しかも意識を失う前はかなりの緊張状態だったみたいだものね。精神状態が不安定だわ。ちょっと待ってて。今呼んで来るから」
「……ダレを?」
鼻を
「
「……?」
「
天井付近に開けられた明かり取りの窓から真っ白な光が差し込んでいた。
「昼……」
「あの人。えと、
『
「まさか……アサツキ先生」
「
耳慣れた声に
「
「
飛び付かれて、
「い……イッタタたたたたたたたたっ!!!」
「
「
「ええ。そうね。
「……
「久しぶりだね。
ふわふわとした黄色い髪の少女が嬉しそうに笑う。
「ああ、それにしても……本当に、良かったよおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
「
「
笑顔から急にわんわん泣き始めた
「もう、ホントに、ホントにもう二度と会うことはないと思ってたふたりがなんでって……しかも片方は死に掛けてるしいいぃぃぃぃぃ!!!」
「うん、うんっ。ごめん。
「私達にも色々あって。話す。ちゃんと話すからっ」
「本当だよ!!」
泣いてたと思ったら急に怒り出した
「絶対の絶対の絶対だよ!」
「うん! 絶対の絶対の」
「絶対だね!」
三人は頷き合って、次の瞬間には笑い出していた。
「ハハハ」
「ふふふ」
「アハハ……い……イタタたったたったたたた!!!」
「
「
「
再会を喜び合う三人を
「お。
「誰が入って来ていいって言った?」
「やり直し」
「……」
「えー。こちら
大根役者もびっくりの棒読みだった。
「……」
微動だにしない
「返事ぃ!!」
「あ~ら、
戸を乱暴に開けた青年に
「これは一体……」
「いつものことだよー」
状況の
「つまり、仲がいいってこと?」
「その一言で片付けられると少し複雑だなあ。改めて、俺は
「え、あ、は、ハジメマシテ」
差し出された手を
「イテッ……」
「と、悪い。大丈夫か?」
「大丈夫。ちょと背中が引き
「やっぱりまだ動かさない方がいいか。本当に目覚めたばっかりみたいだしな」
「
「そうなんだが。さすがに
「そう思うわ。
「待って待って待って! ふがっ」
急に叫んだ為に背中に走った激痛に
「なんだなんだ」
「どうしたの?」
「い、今……村長って言った?」
「……言ったが」
「とゆうことは、つまり、やっぱりここって!」
「そうだよ。
見れば
「……先生は、知ってたのかな?」
「分からない。けど、先生の助言があったから今の私達があるのは確かだね」
「先生には助けてもらってばっかりだったな」
「そうだね」
「あー。感動してるところ悪いが。先生って、誰だ?」
「あ、あ、あの! 先生っていうのは多分アサツキ先生のことでっ。南の町にいた頃私達が通っていた学校で先生をしていた人でっ」
「
「へ? 人間、だと思いますよ? ね。
「え? うん。そう思ってたけど……」
「
「……アサツキ先生は人間です」
「
「医者としては止めたいところだけど、。仕方ないわね」
「
「へ? え? は……何? なに!?」
「人間に村の場所が
「ちょちょちょちょっと待って! アサツキ先生は多分この場所のことを明確に知ってる訳じゃないと追うよ? 南門から南東に向かえって言われただけだもんっっっ!」
「多分じゃあな。とにかくその辺りを
「うひゃ……お?」
抱え上げられたものの
「……
「女の子が大声で言うセリフじゃないな。つーか呼び捨てかよ!」
「あはは」
「いいなあ……」
見れば
「
「いや、別に……。私だって男に生まれてればそれぐらい……」
「じゃ、行きましょうか」
「う……」
「う……ううー……」
「観念しろ。無理すんな。背中痛いんだろ」
「……」
「
「
「私も一緒だから」
「でも~……」
「何想像してるんだか知らないけど。悪いようにはしないわよ」
戸に手を掛ける
「尻尾!?」
「いやぁねえ、
真昼の真っ白な光が
反射的に閉じた目蓋を
「尻尾……尻尾? 本物?」
「そうよう。自慢の自前の尻尾よー」
振り返らなかったが
「……」
「隠さなくてもいいんだ……。本当に人間以外の種族だけの村なんだ」
「そうだよ。
「そっか……そっかー」
「ほら、私って四分の三聖獣でしょ。南の町にいた頃、私は尻尾、母さんは耳と尻尾がバレないようにいつも気を張ってた。父さんは純血の聖獣だったけど、人型に変身するのはあんまり得意じゃなかったし。完璧に変身してる
「良かったね。
「良かった。
「……ご、ごめん。
「え? ああ、うん。まあ、そうだけど……」
「ふたりも!」
「!」
「!」
急な
「もう、大丈夫だからね! もう、何も怖くないよ! 一緒に楽しく暮らそうね!」
「うん。
「これからよろしくね」
「ここっていつもこんなに静かなの?」
でも、真昼だしこんなものかもな? と
「しまった。そうだった……」
「
「ひゃい!」
「ふふ」
それは、しょうがないわねと言わんばかりの笑い方だった。
「
「ごめんなさいね。
「水不足?」
「は、解消されたんだけどね。多分
「で、当面の問題は食料不足でね~。人口が増えるにつれて買い付けるだけじゃ足りなくなっちゃって。何とか畑を作れないかと
「だからね。みんな体力温存するために極力動かないようにしてるのよ。大体家の中にいるんじゃないかしら」
「聖獣以外は、だな。水の心配がいらなくなったから」
「ああ。そうね」
「?」
そんな
「
「え……そうなんですか?」
そう言ったのは
「ちょ、ちょっと。なんで
「そうなんですけど……。人間の中で生活してたので」
「それにしたって
「私は父と母から聞いてて……。そういえば
聖獣の血を引いているであろう三人の声を聞きながら、
「と、悪い。汗が落ちたか」
そう言った
「どうしたの
「暑いんだよ」
当然と言わんばかりの口振りだった。
「こんな晴れの日は滅多にないからな。油断した」
「?」
「この村はね」
「基本的に嵐に見舞われているのが
「そう、なんだ?」
ずっと嵐に見舞われているというのがピンと来なくて、明羽は
「おい。
「
「ああ、悪い悪い」
「それにしても
「そう言えばそうだな」
「
「うん。暑いのも寒いのも我慢できないことはないよ」
「そりゃ。
それは本当に
「
「聞き方!」
「あはは。
「後で角でも見せてもらうといいわよ」
「角!?」
「ちなみに
それはあまりに意味深な笑いだった。
「え!? 違うの?
「おほほほ。教えてあげようかしらどうしようかしら」
「
「え? そりゃあ、この村じゃ有名……」
「じゃ、は、な、ちゃん」
「はひ!」
「ええ~?
「私も
「あら、
「そうだわ。私の種族うんぬんより先に説明しておいた方が良いかしら」
「?」
「?」
少し声のトーンの落ちた
「
「実はここにいる五人と村長以外にはまだ伝えていないの。みんな知ったらきっとビックリするわ。それだけ私達は数を減らしているということなんだけど。まあ、今ここにいる私達はこうして生きている。それが全てかしら。今までも、これからも」
「つまり、
「え、え~? 今のでそこに辿り着く?」
「消去法で」
「すごい! すごいよ、
「ありがとう。
「もう、人がちょっぴり深刻な話してたっていうのに。そんな物とは無縁な子達ね」
「私達にはどうしようもできないことですから。
「まあ、ね」
「え!? じゃあ、本当に
「こっちはこっちでズレてる子いるし」
「そうよ。私は世にも珍しい人間以外の種族と種族が交わって生まれた、聖獣と精霊の
四角い土造りの建物が並んでできた道の先が
「あーあー。あんなに
呆れながらも
「あ、
子供のひとりが
「
ひとりが言うと他の子供達も
「
「えへへ」
「あの、私……」
「いってらっしゃいな。
「
「呼ばれてるね」
「えへへ。いってきます。
「きっと井戸のお礼よ」
「さ、私達は村長の家に向かいましょう。もうすぐそこよ」
村長の家は広場に面したうちの一軒だった。他の建物に比べて一層年季の入っているように見える小さな家だった。
「なんか緊張してきた」
「村長。
言葉の途中だったが
「
「反応があまりにもなさすぎる」
中の様子を探るように
「中には居るみたいね」
「……何にも聞こえねえ」
「
「どうしましょ」
「疲れてるんだろうなあ」
「無理に起こすのもね」
「だなあ」
「ん……」
身じろいだ白い獣に
獣の目蓋が震え、その瞳が静かに開かれた。何ものをも見透かす薄紫色の瞳が四人を
「む?」
村長は何度か瞬きを繰り返す。
「君達は……」
「村長。すみません。起こしてしまって」
そう言われて村長は
「……ああ。そうか、例のふたりが目を覚ましたんだね。すまない。すっかり寝入ってしまって」
「いえっ。村長。私達が急に押し掛けてしまって」
「むしろ、お休みのところをすみません」
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