迫る約束の日
5月22日水曜日、曇り。
明さんとの約束の日が今週末と迫ってきた。
プレゼントのスマホケースだが、俺のセンスで選ぼうと思っているが、この前追分に手帳をプレゼントした時に全く喜ばれなかったので、正直、明さんに喜ばれるのか少しだけ不安である。
だから、俺なりに明さんの好みを分析してみたのだが、木原や辰田准教授のように、子猫のような小さくて可愛い系のデザインが好みなのだと思っている。
かといって、あまりに可愛さを全面に押し出したようなスマホケースでは、使って貰えないと思う。
デザインと機能を併せ持ったそんなスマホケースを探しているのだが、これは! というものが、未だに見つからないでいた。
俺は、そんなにプレゼントをしたこともないので、難しい。割りと大きなショッピングモールとかに行って探しているのだが、ピンッと来る物がないんだよな……。
この店では見つからない。そう思った俺は、店から出ようとした。
「あら! 桜居君?」
急に名前を呼ばれて振り向くと、曽根華さんが普段お店で見る格好とは全く違う格好をして、立っていた。
「華さん! お疲れさまです!」
「お店の感じじゃなくて良いのよ~。今日は、何かお買い物?」
「はい!スマホケースを探してて……。ある人にプレゼントするんですが、なかなか良いものが見つからなくって。困ってるんですよ。華さんはどうして?」
「旦那との結婚記念日が近くって。旦那のベルト、ぼろぼろだから新しい物をね! ここ、スマホケースの品揃えも良いでしょ~!」
品揃え良いと思って来ましたが、しっくりくるスマホケースは見つかりませんでした。とは言えない俺は、
「ホント、凄い品揃え良かったです!」
と当たり障りのない返事をした。
「ここも良いけど~、あそこも良いのよね~! ほら、『三日月』を出て最初の信号機を左に曲がってすぐのショッピングセンター! あそこの品揃えもなかなかのものよ~!」
確かに『三日月』の近くにショッピングセンターがあるのは知っているが、そんな感じが全然しない。
「ホントですか? 全然、そんな感じしないんですが……」
「ホントよ~。まあ、試しに行ってご覧なさい。」
華さんが言っているショッピングセンターは、原付で素通りしているが、そんなスマホケースを豊富に用意している感じはしないがな……。
「ありがとうございます。今度のバイトの時に寄らせて貰います」
「いえいえ~!それじゃ、またね~!」
華さんと別れた俺は、バイトに入っているであろう追分にメッセージアプリのメッセージを入れた。
『バイト帰りに近くのショッピングセンターに寄ってくれないか? そこで、スマホケースが売っているのか調査して欲しい』
返事はすぐに来た。
『お疲れ。何、スマホケース探してるの? あそこのショッピングセンターで良いのがあるとは思えないのだけどな……』
だよな。
『華さん情報で、凄い品揃えが良いらしい。頼むよ』
『まあ、寄るだけならいいよ。また、連絡する』
なんだかんだ言っても、協力してくれる追分、やっぱり優しい。
俺が次にバイトに入るの金曜日だから、時間がないんだよな……。
追分の頼みは、また聞いてやらないとな。
◇◇◇
俺は、それからも何軒かスマホケースを探して回ってみたが、これだ! というものは見つからなかった。華さんのことは信じてるが、もしも、そこにもなかったら……。
俺は中途半端にプレゼントをするよりも、お祝いの言葉を言うだけで良い気がしてきていた。
そんな時、追分からメッセージアプリのメッセージが入った。
『スゴいぞ!! 俺も思わず、新しいスマホケース買っちまった』
どうやら、凄いらしい。
『ありがとう! iPhoneのスマホケースあるか?』
『あれ、お前iPhoneだったっけ?』
『ある人にプレゼントをしたいんだ。あるか?』
『あるぞ! iPhoneのスマホケースも凄い種類だ!』
『わかった。ありがとう。また、何かあったら言ってくれ』
そう追分には返しておいた。
明日は、ゼミのプレゼン資料をまとめないといけないから、買いに行く時間は割けない。
金曜日、ゼミの発表して昼からバイトだから、その時だ。
明さんが好きだろうなというデザインは俺の頭の中に既にある。
もしも、プレゼントを喜んでくれたら、告白も一気にしてしまおうか。
そんな気持ちになっている。
慌てて告白しても上手くいかないと思ったが、いつまでもだらだらとしているのもどうかと思う。
自分の好きだという気持ちをおもいきって伝えてしまおうか。
うぬぼれかもしれないが、わりと明さんと良い感じになってた時もあった。
両思いかもしれない。
あまりそこまで浮かれてしまうと、ダメだった時に恥をかくから、自分の思いとして留めておくが、脈アリだと思う。
まさか、交通事故の加害者と恋仲になるなんて思ってもみなかったが、好きになってしまったのだからしょうがない。
あの時、明さんが俺を引き留めなければこんな風になることもなかっただろう。小田原教授も初めのゼミの日に言っていたが、不思議な縁で結ばれて居たんだな。
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