花園の乙女は美を愛でる
高久高久
乙女が集まると姦しい、とはよく言ったもの
「さて、集まりましたか――」
とある学園の会議室。集まった4人の女子生徒。名を亜紀、伊佐美、卯月、恵麻という。どの生徒も見た目麗しく、優雅な佇まいを見せている。
この学園の上位カーストに属する4人の女子だ。男子有志が作成した『告白したい女子』などというランキングのトップに必ず名前が載る常連たち。
そんな彼女達は、時折会議室を借りて集まり会合を開く事がある。
中で何が行われているかは不明。
秘密の会合とされており、中では漫画のようなお茶会が繰り広げられているやらなんやら色々と噂されている。その様な想像から、この会合を『花園』と生徒達は呼んでいた。
「では、今日こそ決着を着けましょう――」
亜紀が口を開くと、伊佐美と卯月が頷く。恵麻はそんな3人を眺めているだけだ。
「――今日こそ、
「あ、足だって負けてないよ!?」
「腕や肩しか勝たん」
――人々が勝手に名づけた花園という会合。その実態は、筋肉フェチによる
「何よ!? なんで
大胸筋フェチ、亜紀による熱がこもった発言。これに対し伊佐美と卯月が首を傾げる。
「包み込まれるなら腕や肩だって。それに腕は抱かれるだけじゃなく、こっちが抱きついた時に感じる逞しさがある。上腕二頭筋の力コブ――あれこそ男性の象徴とも言える。更に僧帽筋や広背筋のあの安心感――もう抱きたい。抱きつきたい」
頬に手を当て、溜息を吐く卯月。上腕二頭筋、三頭筋や三角筋に僧帽筋や広背筋といった腕、肩周りの筋肉フェチである。
「み、みんな上ばっかり見すぎだよ。足だってあるんだよ?」
「足っていうと、どうしてもすね毛とかの方に目がいっちゃって……」
「伊佐美は足フェチだから」
「ひどいよ!」
伊佐美という少女は足フェチ――足の筋肉フェチである。
「た、確かにすね毛とかあるけど……でも想像してみてよ、ランニングとか走っている人を。その人の足を見たことがある? ふくらはぎがこう、盛り上がった感じの! タイツ履いている人でくっきりと下腿三頭筋の浮かび上がったフォルムがたまらないよ! そもそも足っていうのは普段から立っているから使う場所なんだよ! そこの筋肉が逞しくないわけがないの! 太もも――大腿四頭筋やハムストリングスなんて人体で最も強力な部位とか言われている筋肉なんだから!」
「そ、それでも、それでも私は大胸筋を――推すわよ!」
「僧帽筋しか勝たん」
結局のところ、単なる自分達の主張を繰り広げているだけである。その様子を残りの1人――恵麻はただ眺めていた。
「ところで、恵麻は今日は大人しいわね」
「何時もなら腹筋回りの事を語るはずなのに」
「『あの腹直筋の割れ目がいやらしくて触りたい』とか言ってるのにね」
3人が言うと、少し恥ずかしげに恵麻が口を開く。
「あー……確かにアタシ、腹筋フェチだったけどさ……その、最近他の部位も悪くないんだなぁ、って……」
「「「え!?」」」
恵麻の言葉に、3人が食いつく。
「あの腹筋フェチの鬼が他の部位に興味を持つですって!? 何処何処何処!? やっぱり大胸筋!? なんなら前鋸筋でもいいわよ! あの独特の形がこう、燃えるわよね!?」
「いやいやいや、肩と腕一択。上腕二頭、三頭筋や僧帽筋と三角筋の逞しさは男性の象徴」
「足! 足だよね! 裏ばっかりが目立つけど大腿四頭筋は逞しいし前脛骨筋だってかっこいいよ!」
3人が詰め寄ると、恵麻は困った様に笑う。
「……いや、なんていうか、その、どれも選べない」
「「「選べないってなにが!?」」」
「なんていうか、その……わかっちゃったんだ……
そう言うと、恵麻は照れ臭そうに笑った。
――一瞬、会議室が静寂に包まれた。
「「「――
が、すぐに絶叫に近い声が上がる。
「あんた何時の間に彼氏できてたのよおめでとう!」
「惚気やがってこのやろうおめでとう!」
「全然気づかなかった! おめでとう!」
「ありがとね伊佐美。あと亜紀と卯月は罵るのか祝福するかどっちにして」
「「「とりあえず、その彼氏の筋肉教えて」」」
「あ、やっぱそういう話になる?」
――そんなこんなで、
花園の乙女は美を愛でる 高久高久 @takaku13
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