第45話

「あれ佐藤さん、なんか元気ないね」

 翌日、バイト先の店長に声をかけられた。

「え、そんなことは……」

 バレているみたいで、優しい目で見つめられた。

「その顔は恋の悩みかなぁ」

「あはは」

 笑って誤魔化しながらバイトの準備を始めた。

 小さなカフェだけど、料理の評判が良いため開店すればそこそこ忙しくなるので、無駄話も出来なくなる。

 体を動かしている方が何も考えなくて済むから、今の私にはちょうどいい。

「店長、今日私、夜も入っていいですか?」

「そりゃあ、こっちは助かるけどいいの?」

「はい、お願いします」

 バイトだと言えば先輩が帰ってきても会わなくて済む。

 今は会うのが怖い、でもきっと会いたくなってしまうので、無理矢理会えない状況を作っておこうと思ったのだ。

 先輩には、どうしてもと頼まれて、やむなくバイトに行く事になったとメッセージをしておいた。申し訳ないが店長には悪者になってもらおう。


 帰宅後、恐る恐るスマホを確認する。

「バイトおつかれさま、明日は会える?」

 と、先輩からのメッセージがあった。

「先輩も休日出勤おつかれさまでした。私も今日はさすがに疲れたので、明日は家でのんびりします」

 私が先輩のお誘いを断るなんて滅多にないーーいや、初めてかもしれない。

 それなのに……

「了解」

 あっさりした返事だった。



 その朝は、あまり良い寝起きじゃなかった。

 なんだか嫌な夢を見ていた気がするーー覚えてないけど。

 時間を確認しようとスマホを見ると、新着メッセージが入っていた。



「いらっしゃい」

 笑顔の先輩に出迎えられた。

「来ちゃいました」

「来ると思ってたよ、早く食べたいでしょ、あれ」

「うぅ……はい」



『お土産あるから、気が向いたら来て』

 夜中に送られて来たらしいメッセージは、お土産の写真付きだった。

 定番のお土産だけど、私の好きなキャラクターとコラボした商品だから、これに釣られて私が会いに行くとでも思ってるんだろうな。

 そして私は、お土産目当てという体で会いに行ってしまうんだろうな。

 だって、会いたいんだもん。

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