第35話

 今日の私の行動を振り返ってみて戸惑った。彼女の言動で私の気持ちがこんなにも乱れ、そして変なことを口走ったり無理強いしたり。

 何してるんだろう、恋愛ってこんなに疲れるものだったっけ?


 それでも……


 いつもと同じ部屋なのに、なんだか静かだった。

 お風呂に入ったばかりなのに、なんだか寒かった。

 抱きしめたい、彼女の温もりを感じたい。切実にそう思った。

 彼女は、どう思っているのだろう。同じように私に会いたいと思ってはくれないだろうか。


 静けさの中で、スマホのバイブの音が響いた。


「もしもし、栞菜?」

「なんだ、お姉ちゃんか」

「なんだとは何よ、誰からの連絡を待ってたのよ」

「あ……」

 期待してたのだろうか、私は彼女からの連絡を。

「自分から連絡すれば良いじゃない」

「え? でも、嫌われちゃったかもしれないし」

「へぇ、なら尚更早く連絡しなきゃ」

「なんで?」

「喧嘩の後の仲直りは早い方がいいのよ、時間が経つと拗れちゃうからね」

「そう……なの」

 喧嘩したわけじゃないけど……ないよね? あれ、なんか不安になってきた。

「お姉ちゃん、用事は?」

「え、特にないけど。元気かなぁって思って電話しただけ」

「じゃ、切るね」

「あ、はい。頑張って」



 思い返せば、彼女とはサークルの日に一緒に帰って来てうちで過ごすだけで、他の日に会ったり、電話やメールをすることはなかった。連絡先を交換することすら、しなかった。

「何やってんだ、私は」

 今日何度目かの自己嫌悪に陥りながら、さっき彼女が出て行った玄関をぼんやり眺めれば、視界の隅に見慣れない物が映った。

 傘を忘れていったらしい。


 私は彼女の番号を表示させた。

 初めて会話をしたあの日、スマホを探すために聞き出した番号だ。

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