第18話

「先輩?」

 バスローブ姿の先輩はベッドに腰掛け、あのブックカバーの本を見つめていた。

 読んでいるというより、視線が定まっていないので何か考え事をしているようだった。

「あぁ、ごめん。何か飲む?」

「いえ。あの今日はごめんなさい」

「ん?」

「少し強引だった気がして」

「あぁ、確かに驚いたけど謝る必要はないわよ」

「あのそれで、返事を頂きたくて」

「返事?」

 先輩は何のことかわからないようで。

「さっき口走ってしまったこと、本気です。私は先輩のことを本気で好きになってしまって……それで先輩はどう思ってるのかなって」


「あら、言ってなかったかしら」

 冗談とかじゃなく、真面目な顔で言う。

 いやいや、ないでしょ、何も言わずに押し倒されたんだから。

「えっ、ないですよ……ね」

「そうだっけ」

 先輩はしばらく宙を見つめ、思い出しているみたいだ。


「そっか、言ってなかったか。でも本気で好きじゃなきゃこんなこと出来ないわよ」

「それはそう……え、それって、好きってことですか?」

「そうだけど、どうして驚くの?」

 いやだって、先輩そんなこと一言も言ってないし、素振りだってーー

「え、待って。私たち付き合ってるってことになる……のか」

 若干パニックになった私は、心の声を漏らす。

「私はずっとそう思ってたわよ、でも最近の様子がおかしくて、誰か他に好きな人でも出来たのかなって不安にはなってた。さっきの情熱的な告白まではね」

 その言葉の後に、ふふっと先輩が笑った。

 先輩の笑顔を見て気が抜けた。


「もう、先輩狡いです」

「嫌いになった?」

「好きですよ」

「ん、知ってる」

 やっぱり笑っていて、それがとっても嬉しくて。

「大丈夫?」

「安心したら、なんか腰が抜けちゃって」

 私はヘナヘナと座り込んでしまった。

「なら、今日は泊まっていく?」

「いいんですか?」

「いいよ、誕生日だしね」


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