第17話

 私は先輩にキスをした。


 先輩は驚いている。それはそうだろう、何度もキスはしているが私からするのは初めてなのだから。


「先輩に触れたいんです」

「え、ちょっ、待って」

 いつもとは逆の体勢ーー先輩を押し倒す。

 これももちろん初めてのこと。

 やり方なんてわからないけど、いつも先輩からされているように、優しく触れる。


 なんて、考えていられたのも最初だけ。

 好きな人に触れ、肌を合わせ、感じ、理性を飛ばす。先輩の声、表情が私を狂わす。

 先輩、好きですーー大好きなんです、先輩ーー

 何度もうわ言のように伝え続けた。



「今日は先にシャワー浴びてもいい?」

 事が済んで、先輩が浴室へと去って我に返る。

 やっちゃったぁ、私は頭を抱えた。

 よりによって、致してる最中に告白してしまうとは。いやでも、あれは感極まって思わず口から溢れてしまったわけで。呆れられただろうか、先輩の返事が怖い。


「頭、痛いの?」

 顔を上げたら心配そうな先輩がいて、バスタオルを渡してくれた。

「いえ、頭冷やしてきます」

 シャワーで文字通り頭を冷やしながら、先輩のことを思う。

 今までの先輩との時間は、驚きの連続だったけど、今思えば全部幸せな時間だった。私にとっては大切な思い出で、かけがえのないもので。

 もしも、もう会えなくなってしまっても、思い出は消えることはない。いつまでも、この私の胸にあるのだから。

 よし、覚悟は出来た。


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