第二章 これが恋しいという気持ちなの?

第7話

「それって、いわゆる、アレだよね」

 サークル仲間の蘭ちゃんは、言いにくそうにはぐらかしながらも、好奇心いっぱいのようで目はキラキラしている。

「セフレでしょ」

 キッパリ言い切ったのは、紫穂ちゃんだ。


 私と先輩の関係を、客観的に判断して貰いたくて友達に話してみたのだ。もちろん自分の事だとは言わずに、一般論として。

「セフレ……」


「そんなハッキリ……サトーちゃんには刺激が強すぎるよ」

「こういうのは、しっかり理解した方がいいんだよ、中途半端じゃモヤモヤするでしょ。セフレっていうのはセックスフレンドの略でね、愛がないのに身体だけの関係を続けるってこと」

「愛がある場合もあるけどね」

「でも他に本命がいるわけでしょ、そんなの本当の愛じゃないよ」

 二人は、そうだよねと頷きあっていた。そして、ただ聞いているだけの私に力強く言った。

「もしその友達に相談されたら、そんな関係やめるように言いなよ」

「うん、そうする」


 友達の話として自分のことを相談するのはよくあると思うけど、二人は全く疑っていなかった。私がそんな事をするはずがない、いや、出来るはずがないと信じているからだ。嘘ついてごめん。


 やっぱりそうだよね。

 こんな関係、とっとと解消した方がいいんだよね。

 私がついていかなければ、先輩は無理強いはしないと思う。

 私じゃなくたって、先輩なら他にいくらでも……

 うぅ……

 そこまで考えて気分が落ち込んでしまう、あれ私、なんでこんな気持ちになるんだろ。


 トン!

 見慣れた指が机を叩いた。

 顔を上げたら先輩の顔。

「またボーッとしてる」

 そう言って通り過ぎる。

「あぁ、確かに佐藤はいつもあんな感じだよな」

 そう言ったのは爽やかイケメンの先輩、名前は何だっけ。氷室先輩を狙ってるのかアレコレ話しかけている。なんか嫌な感じだ。二人は離れていった。


「ねぇ、氷室先輩と仲良いの? 声かけられるなんて」

「へ、そんなことないよ。たまたまじゃない?」

「そっか、まぁサトーちゃんのボンヤリは有名だからね」

 紫穂ちゃんの発言に蘭ちゃんも頷いてる。

 え、そうなの?


「最近さ、男の先輩たちが騒ついてるのは、氷室先輩がフリーになったかららしいよ」

 えぇ、そうなの?

「へぇ、争奪戦始まるのかな? ま、私たちには関係ない話だよね」

「サトーちゃん聞いてる?」

「へ、う……うん、そうだね」

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