第6話
次の金曜日のサークルの日。
さすがに先輩の姿を見れば緊張し、また動悸がはじまる。あんな事があって意識するなという方がおかしいだろう。
それなのに、先輩は普段通り。
どっからどう見てもいつもの先輩だった。
そう、きっと先輩にとったら何でもない事なんだろうな。
会話はもともとないから、視線を合わせないようにすれば大丈夫。
サークルの今日の課題の小説もあまり頭に入ってこないけれど、無難な感想を言っておけば過ぎていく。気にしない気にしない。
今日はこのままサッサと帰ってしまおう。
帰りのバスに乗り込む。何人かの後から先輩が乗ってくるのがチラッと見えた。先輩は後ろの方へ座ったようだ。私の横を通り過ぎていった。
「ぷはっ」
あれ私、先輩が通る時息を止めてたみたいだ。気にしないなんて言いながら、思いっきり気にしてるじゃないか。
まぁでも、通り過ぎてくれたのならばこのまま私はいつもの日常を繰り返すだけだ。
バスや電車に乗っている時、私は空想をする。周りを見れば、イヤホンで音楽を聴いたりスマホをいじったりする人が多いが、私はしない。頭の中でいろんな事を思い浮かべるのが好きだ。友達からはよく『ボーッとしてる』と言われる。まぁその通りなんだけど、その時間は私にとっては至福の時なんだ。時には小説のストーリーが浮かんでくる時もあるんだよ、たまにだけどね。
今日もあれこれ考えているうちに時間が過ぎていく。今日は主に晩御飯何にしようという議題だったけど。
ふと視線を感じて見上げると、そこには先輩の綺麗な顔があって「来て」と言う。あれ、デジャヴ?
バスは止まっていて、先輩の降りる停留所だった。
強制的に降ろされた訳ではない、今回は腕も掴まれてない。
それでも、来てしまった。
そしてーー
そんな事が何度もあって、今に至る。
私は流されやすい性格ではあると思う。でも、どうしても、抗えないよ。先輩の目に惹きつけられる。こんな事、初めてだ。
これが、どういう感情なのか私は知らない。
私と先輩の、この関係をなんと呼ぶのか私は知らない。
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