第11話:好人に対するルシルの想い。

占いのじいさんの占いによると、好人にまた、耳鳴りがしたら人間界に

帰れるんじゃないかとそういう答えだった。


そう言われても、肝心な時に耳鳴りなんて起きないもんだ。


それにもう、好人は小さな耳鳴りすら出なくなっていた。

もしかしたらルシルに出会ったことでで好人の心が少しづつ癒されていたから

かもしれなかった。


「しかたないな・・・帰ろヨシト・・・」

「役に立たねえ、じじだよまったく」


結局、胡散臭い占い師は役に立たないと言うことで、ふたりは引き上げる

ことにした。


ルシルは好人に人間界に帰る方法を見つけるって言ったが

占いのじいさんの館に来ても、まともな答えは得られないことを願っていた。


ルシルの思惑通りになったわけだ。

ルシルからすれば好人に人間界へ帰ってもらっては困るわけで・・・。


とりあえず、形だけでも好人には、帰る方法を探してるふりをしとかないと、

彼に人間界に帰る方法をせかされると面倒だと思ったから占い師のじいさんの

ところへ来ただけの話だった。


そんなことも知らない好人は、ルシルはちゃんと自分のことを考えてくれてる

もんだと思っていた。


ルシルは好人にはずっとここににいてもらって、いつまでもラブラブでいた

かったのだ。

好人は、小悪魔ルシルに魅入られてしまっていた。


ルシルが好人に引かれたのは好人の人の良さ・・・人を包み込む優しさがあった

からかもしれない。

ルシルは好人と一緒にいると心が安らいだ。

だから好人が人間界に帰りたがってる姿を見るとルシルは切ない気持ちに

なるのだった。


悪魔との契約、って言うのはセックスすることによってふたりが結びつくと。

お互い永久に離れることができなくなるみたいで、悪魔の世界では、それは

結婚に等しいこと・・・それが契約を結ぶってことらしい。


ふたりがセックスをしたことで、なしくずしにルシルと好人の間に契約が結ばれて

しまったわけで、ふたりは離れられない存在になってしまったんだから、

悪夢の街だろうが人間界だろうが、決して離れるということは永久になくなった。


もし契約を破棄したら、すなわちそれは人間界で言うと離婚を意味するわけで、

どちらかが契約破棄を訴えた時点で、訴えたほうは、罰を受けることになる。

人間だろうが悪魔だろうが愛する人を裏切ったら永久に地獄に落とされて、二度と

太陽は拝めなくなるのだ。


好人は悪魔と契約を結ぶと言うことに対して、あまり深く考えてはいなかった。

好人とってルシルは、一緒にいて楽しい魅了的なセックスフレンド。


学校へ行かない好人は、暇を持て余すかと思ったら、ルシルに迫られてセックス

三昧に明け暮れていた。

ルシルも当然、学校なんか行くわけがない。

ルシルと交わっているうちに、自分もいつしか悪魔になるんじゃないかとさえ

思った。


こうなったらもう開き直るしかない。

ここにいるなら、悪夢の世界を楽しもうと好人は徐々に思い始めルシルに

対する気持ちも、いつの間にか恋人と認めるようになっていった。


ルシルとセックスに明け暮れて、暇ができたら彼女の行きつけの

カフェ「ラ・ムール」で、ルシルのダチたちと暇をつぶした。


付き合ってみるとルシルのダチも案外いいやつばかりだった。

見かけはグロいが、中身はみんないい悪魔だった。


ここで彼らと生活を共にしたら人間界における悪魔への偏見、イメージが

変わっただろう。


アザゼルの家は金持ちらしくて、彼はいつも自慢の真っ白なコンバーチブルに

乗っていた。


バラキエルは天涯孤独の青年で、一番話が面白くて、いつもハーレーみたいな

バイクに乗っていた。


アルダト・リリーは悪魔にしては肌の色が人間の肌の色と変わらなかった。

そのことを本人に聞くと、整形手術で肌の色を変えてるんだそうだ。


昔、リリーが子供の頃、リリーの家に人間がいて家庭教師をしていたらしい。

好人と同じように、この街に飛ばされてきたらしい。

リリーはその人間の女性に憧れて、肌の色を変えたんだそうだ。


エイシェト・ゼヌニムはメンバーの中で一番おとなしい女の子で

フリルのついたロリータみたいな衣装を、いつも着ていた。


カルスマと呼ばれてるだけあって、ひときわ目立っていた。

まるでフランス人形みたいだった・・・。


このメンバーを見ているだけでも好人は、目先が変わって面白かった。


「ルシル・・・もう契約結んだの?」


そう言ったのはアルダト・リリーだった。


「うん、とっくに・・・」


「そうか・・・人間とセックスするとどのくらい若返るんだっけ?」


「だいたい一回のセックスで3才は若返るかな・・・」

「やるたびにエキス吸い取るからね・・・」

「でも、それは一時的にだけど」


「エキスって・・・僕からそんなもの吸い取ってるのか?・・・ルシル?」


好人は驚いてそう言った。


「少しだけだよヨシト・・・心配いらないから」

「全部、吸い取ったら、ヨシとはミイラになって、とっくに土の中に埋められてるよ」


「それってエッチするにおいて、俺にとっちゃすごいリスクだよな・・・」


「その逆も言えてるんだよ」

「好人には私の滲み溢れる愛情を分けてあげてるんだから・・・」

「それで、好人は癒されてるんだよ・・・浄化されてるって言うか・・・」

「だからこの先、病気にもならないし・・・怪我してもすぐに治るよ」


「え?まじで?、そんな効果があるんだ・・・医者なんかいらないじゃん」


「タダでヨシトのエキスもらってるワケじゃないんだよ」


「いいな・・・俺も人間の女とやりてえな・・・」


アザゼルが言った。


「誰かが、この世界に迷い込んで来るのを待つしかないね」

「それか方法は分からないけど、あんたが人間界へ行くとか・・・」


「それだよ・・・実は近々人間界へいけるかもしれないんだ・・・」


「アザゼルが言ってた、そういうの研究してるって人の話?」


ルシルが聞き返した。


「もう少しで人間界へ行く方法が分かるってよ・・・」


「でもまあ、私はできたら、人間界へなんか行きたくはないけどね・・・」


アダルト・リリーがそう言った。


「そんなこと・・・行く方法なんて分かんないほうがいいんだよ」


ルシルがそう言った言葉には「ヨシトはこの世界から帰さないよ」って意味が

籠っていた。


つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る