第7話:ラ・モール「死神の館」。

好人とルシルを見つけたルシルのダチがさっそく、ふたりに食い付いてきた。


「ルシル・・・朝、バス停でおまえが連れてたの、人間だったんだな」

「その人間、どこで拾ってきたんだよ」


「うるせえ、バラキエル」


ルシルにバラキエルと呼ばれたやつは、朝、バイクで通り過ぎてった

男の悪魔でやたら背が高くて肌が濃いグレーで痩せてて、頭に立派なツノが

生えたやつだった。

だから当然、ヘルメットなんか被らない。

男の悪魔はだいたい、ほぼ裸に近くて腰に布切れを巻いてるだけだった。


「その人間いいな・・・食うのか?ルシル・・・」

「人間食ったら寿命が延びるって聞いてるぜ・・・ガセかもしれないけど」

それに人間の肉って、めちゃ美味いらしいぜ」


「みんなでバーベキューにして、そいつ食おうぜ」


「バカかおまえ・・・こいつは、この人間は私の彼氏だよ」


そういうと10人くらいの女の悪魔が興味を持ったのか


「彼氏?・・・いいな〜って」集まってきた。


アグラットって呼ばれた悪魔が言った。


「うそ〜人間がよく承諾したね・・・」

「私たちの彼氏になんか人間は普通ならないだろ?」


「うらやましいか?」


「うらやましい〜って、エキストラの女悪魔たちが声をそろえて言った」


そんなに人間の彼氏が珍しいのかと好人は思った。


「ねえ、ねえ、もうやっちゃったのお?、その人間と」


「まだだよ・・・まあ、これからだな」

「まずは身体中、舐め回して私の匂いをつける・・・マーキングしてそれからだな・・・」


「わ〜いいな〜私も舐めたい・・・それだけでお肌が綺麗になりそう」


「ねえ、ルシル・・・私にも、その人間貸してくれない?」


「ダメだね、エイシェト・・・あんたになんか貸したら骨と皮だけになって

帰ってくるから・・・」

「こいつ、あ〜この人、名前をヨシトって言うんだ・・・ みんなよろしくね」

「ヨシトは私だけの彼氏だから・・・私だけのものだからね」


「じゃ〜まだ契約結んでないんだ?」


「まだだってば・・」


「契約って何?」


契約って言葉に好人はすぐに反応した。


すかさずエイシェットが言った。


「契約ってのはね・・・」


「もういい、もういい・・・おまえら、これから死神の館に繰り出すんだろ?」


「おう・・・そうだった・・・行こう行こう・・・」


そう言ったのはアザゼルと言う、けっこうイケメンな悪魔だった。

生徒の中では、まだまともな方だなと好人は思った。


「俺の車で行こうぜ」


ルシルの親しいダチだけで死神の館に行くことになった。

好人にとっては何もかもが初めてにことで、かなり新鮮で刺激的なことだった。


「え?ルシル授業は?」


好人は授業をほったらかして遊びに行こうとしてるルシルに聞いた。


「そんなもん、生徒の何人かがいなくたって、普通に授業するだろ」

「そもそも先生も誰かに自分のウンチクをしゃべりたくてやってんだからさ」


「中には授業が退屈でしかたない先生もいるんだよ」

「そういう時はバックレるに限るの」


「さ、行こう」


学校の裏手の駐車場にアザゼルは車を止めていて、毎日その車で学校に

通っているって彼が自慢げに言った。


自慢通りアザゼルの車はモーガンふうのロングノーズで6輪タイヤの真っ白な

コンバーチブルという車だった。

クラシックでめちゃカッコよかった。

髑髏が二個フロントの両サイドに着いていた。

夜になったら髑髏の目が光るんだってことくらいは好人でも分かった。

今までに見たことのないラグジュアリーなインテリア。


運転はアザゼル、でその車に「ルシル、好人、あとベルゼブブにバラキエル、

アルダト・リリーにエイシェト・ゼヌニム、7人乗って死神の館へ繰り出した。


死神の館まで30分足らずで到着した。

煉瓦造りの怪しげな建物・・・看板に「la Mort」と書いてあった。

ルシルがラ・モールって読むんだと教えてくれた。


店の中に入ると、そこはまあ、カオスだった。

いろんな骨董品で店の中は、足の踏み場もないくらいいっぱいだった。

怪しげなものばかりで店内が飾られていた。


おまけに美人だけど顔色の悪いウェイトレスがパンツが見えそうなミニスカートで

注文をとりにうろうろしていた。

俺たちが座ってる席の左横の客にウェイトレスが注文を取りに来きて少しかがむと

パンツがしっかり見えた。

好人は条件反射って言うの?・・・ついスカートの中を覗き込みそうになった。


「ヨシト・・・どこ見てんだよ・・・パンツなら今朝見せてやったろ?」


ウェイトレスは振り向くと俺たちのところに注文を取りに来た。

彼女もまた悪魔なんだ・・・。


みんなはそれぞれ、自分の好きな飲み物を注文した。


好人はルシルと同じものにした。

頼むたって、メニューを見てもどれがなにか分からないんだからしょうがない。


出てきた飲み物・・・ドブの水を汲んできたのかと思うほど色ケツがめちゃ

悪かった。

好人は恐る恐るその飲み物を飲んでみた。

これは見た目と違ってかなりいける代物だった。


「美味いわ・・・これイケる・・・」


「そうだろ・・・モノは見た目で判断しちゃいけないんだよ」


店内には他にも、悪魔であろう方達がいて、この光景はいつものようにいつもの

ことのようだった。

話の話題は人の中傷か恋愛話・・・そのへんは人間の世界と変わらないと

好人は思った。


好人はふと我に返って人間界のことを思い出した。


(みんなどうしてるんだろ・・・友達にも会いたいよな)

(いつになったら僕は僕の家に帰れるんだろう・・・)


こんな世界に閉じ込められたままならホームシックになりそうだと好人は思った。


好人の気持ちを、ここに止めていたのはただひとつ。

それは興味と好奇心をそそられるルシルとのセックスだった。

ルシルは悪魔だけど、それ以上に魅力的だった。


悪魔とセックスしてみたい・・・今は、そんな気持ちがふつふつと湧き

上がっていた。


(ルシルは、いつエッチをさせてくれるんだろう?)


昨夜、ルシルにじらされて好人は、なんでもいいから早くエッチがしたくて

しかたなくてムラムラ悶々としていた。

自分の冷凍バナナをちょっとシゴいたらすぐイキそうって思った。


それに、気になる契約・・・契約ってなんだ?

エッチするために、なにか約束させられるのか?


悪魔たちの馬鹿話は夕方まで続いた。

(こいつらは毎日、こんなことばかりして生活してるのか?)


「ねえ、ルシル・・・この連中って、毎日ここでこうしてダベってるの?」


「そんなことないよ・・・それぞれみんな自分の趣味や世界を持ってるよ」

「ここへ来たのも一週間ぶりだよ」


「アザゼルは、カーレースに出てるし、バラキエルはバイクレーサーだしね。

今年、ワールドチャンピョンに輝いたよ」


「まじで?」


「アルダト・リリーは普段ファッションモデルやってるし、エイシェト・ゼヌニム

はロリータファッションの世界じゃカリスマモデルだからね・・・」


「みんなそれぞれ何かやってるんだよ」


「その点、何もやってないのは私だけ・・・」

「でもま、今の私にはヨシトがいるから・・・それでいいや・・・」


「趣味が男なのか?・・・俺は趣味なんだ」

「俺の他にも、男のコレクションたくさんいたりしないよな・・・」


「バーカ・・・デリカシーのない男だな、ヨシト・・・」

「私はどんなイメージなんだよ・・・そんなことするか、私はヨシト一途だよ」

「ヨシトがいるから趣味なんかやってる暇ないって言いたかったの」


「それにさ・・・なにか趣味とか持つと、それにのめり込むしエネルギー

しこたま使うだろ?」

「そういうのは私、ウザいから・・・」


「ウザいって・・・はあ・・・なるほどな、エネルギー使うのが嫌だから、

エッチさせてくれないんだ・・・」


「いちいち、感に触るようなこと言うな、ヨシト・・・」

「そんなんじゃないよ・・・エッチは趣味じゃなし・・・もっと神聖なもんだよ」

「分かった・・・そんなに飢えてるなら、帰ったらさせてやるよ、エッチ」


つづく。

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