第6話:悪魔にもいろんなやつがいる。

ふたりを乗せたバスは、ノッキングを起こしながら学校へ向かって行った。

好人はバスに乗る前に運転席なんか見なかったもんだから、改めて運転席を

見て驚いた。

当然運転手がいるもんだと思っていたから、なんと運転手がいないのだ・・・。


「このバスって、誰が運転してるの?」


「だれも運転なんかしてないよ・・・勝手に走ってるんだよ」


「だって・・・それで大丈夫なの?、ちゃんと目的地に着くのかな?」


「このバス、ただに機械だと思ってる?」


「違うの?、どう見てもバスだよね・・・」


「このバスも悪魔だよ、悪魔の一種」

「バスもね、何百年も走ってるとデアボリックになっちゃうんだよ」


「デアボリック?・・・ってなにそれ?」


「長くこの世界で生きてると悪魔的になっちゃうってこと」

「この街、そういうやつ多いから」


「つうかさ、この街にあるものは、ほとんど人間界から誰かが、

パクって来たって話だよ・・・はなっから生産性がない世界なんだよ」


「私は人間界に行く方法なんか知らないけど、そういうこと研究してる頭のおかしな

やつがいるんだろうな・・・。」

「そういうやつは、取り憑かれたみたいに研究してるんだろうけど、大半は

毎日、働きもせず、のっりくらりと生きてるからね」

「私も、その中のひとりだけど・・・」


「働いてないって・・・じゃ〜どうやって食ってくの?」


「食いもんなんてどこででも食えるし・・・だいいち金って概念もないからね」


「食堂もカフェもみんな、やりたいからやってるだけだよ」


「そんな無茶な・・・」


「え〜じゃ、なんでルシルは学校へ行ってるの?」

「将来のためじゃないの?」


「ひとりで家にいたって、つまんないだろ?」


「だからみんな一箇所に集まって、しゃべってコミュニケーション

図ってるの・・・」


「勉強しなくていいのか・・・いいな〜」

「社会に出て嫌な職場で上司にへつらう必要もないんだ」


「そういうことだね・・・まあ人間界の常識はここじゃ通用しないから・・・」


「このバスだって誰かを乗せて走りたいから、走ってるだけ」

「それが飽きたり嫌になったら来なくなるだけじゃないか?」


「いい加減な街だな・・・」


「いいの・・・こいつが来なくなっても別のバスが来るから・・・」


「でも、そんな、みんな勝手に生きてて、犯罪とかおきないの?、治安とか

守れるの?」


「治安は悪いかもな・・・」


「でも泥棒とか強盗とかそんなチンケな事件ばかりだけどな」

「殺人とあまりないし・・・あ〜殺魔ってことになるのかな?」

「私たちって人間と違って基本、刺されたくらいじゃ死なないからね」


「え?死なないって、不死身なの?」


「不死身じゃないけど、傷を負っても数分ですぐ治るから・・・」

「人間と同じで歳は取っていくけどね」

「自分で命を絶たない限り死なないの・・・」


「まあ、一応病院はあるけどな」

「普段はじじいとばばあのコミュニケーションの場になってるよ」

「私たちの学校と同じだね」

「ひとりでいると寂しいから、みんな寄ってくるんだよ」


と、そんな話をしているうちにバスは学校の前で止まった。


バス停の標識には「メフィストフェレス学園前」って書いてあった。


「メフィストフェレス学園って言うのか・・・」


横文字だったりカタカナ表記だったり、漢字があったり・・・

ほんといい加減だなって好人は思った。


好人とルシルがバスから降りるとその前にでっかい洋風の建物がデンと建っていた。


立派な校門の表札にはやっぱり「メフィストフェレス学園」と書いてあった。

なんとなく名門校みたいな響きだった。


他の生徒らしき悪魔も学校へ次々登校してきていた。

その中で血色がいいのは好人だけだった。


だから好人はみんなから、注目の目で見られた。

この世界では人間は珍しくて貴重なのだ・・・。

悪魔の世界では、人間をつれてると一種のステイタスになるらしい。

だからルシルは好人を彼氏にしたかったのだ。


校庭をてくてく歩いてふたりは校舎に入るとすぐの階段を2階まで上がった。

上がって最初の教室がルシルの教室みたいだった。

教室の入り口の上に「2年◯組」って札がかかっていた。


「あ〜ルシル、17才なんだ・・・」


「それは人間の歳で言ったらだろ?」


教室に入ると、いきなり好人はまたまた注目の的になった。

顔色の悪い連中の目がこっちを見ていた。


そんなに人から、注目を浴びることもない好人はルシルの後ろに隠れた。


教室にはすでに、顔色の悪い生徒がたくさん来ていた。

ここでは悪魔なんだろうけど・・・好人以外若干一名を除いては青白いやつ

しかいなかった。


しかも普通では考えられないような、異様な姿形の悪魔たちもいた。

ルシルが普通のまともな女に見えた。


激やせしてるやつとか、色がおかしいやつとか、やたら背の高いやつとか

でぶっちょいやつとか、多種多様・・・まあ個性的な悪魔ばかりだった。


中には朝から、教室の隅でセックスやってるカップルもいた。


「ルシル・・・あそこで腰動かしてる女がいるけど・・・」

「教室であんなことやっていいの?」


「やっていいってことはないと思うけど、男の上の乗ってるのはサキュパス

だから・・・どこででもやるんだよ」


「サキュパスって?」


「サキュパスは悪魔なんだけど、もともと霊体だからね、体を持たない悪魔だから

死体に憑依しているんだよ」

「魔的な方法でセックス用の肉体を構築しているんだ・・・」


「え〜死体に取り憑いてるのか・・・」


私もサキュパスももとはアダムの妻だったリリスの血筋だからね。

出処は同じ悪魔なんだよ」


「まさか、ルシルも死体に憑依してるわけじゃないよな?」


「違うよ・・・悪魔って言っても、いろんな形や種族がいるんだよ」


「死体とエッチしてると思ったら、勃つものも勃たなくなるな」


ルシルが普通の悪魔でよかったと胸をなでおろす好人だった。

って、どこまで信じていいのかも分からなかったんだけど・・・。


つづく。

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