第3話 『 私は転生者 / 三度目の記憶 』
私の人生は、姿形を変えて
王都から随分と離れた田舎で生まれた私は、小さい頃から『冒険者』になるのが夢だった。
誰もが恐れる魔物に勇敢に立ち向かい、財宝や秘宝を探し求め自由に生きる姿はまさに私の憧れだった。
憧れの存在になるために、私は親の反対を押し切って村の道場に通った。
一応、魔法は使えたが魔法使いになれる素質はなかった。別にそれは構わないと割り切り、剣術をひたすらに鍛え続けた。
雨の日も風の日も剣を振り続け、背も母を追い越した頃、私は既に道場の師に負けることはなくなっていた。
自分は強い。
成長を実感し、私は夢である『冒険者』になるべく故郷を旅立つ。
まずは冒険者ギルドのある近隣の王都へ――そこへ向かう馬車が、盗賊に襲われた。
荷物を全て寄越せ! と荷台の中から野太く威圧をはらんだ声が御者を脅す。
すぐさま私の出番だ! と私は親が『冒険者』になる私の為に買ってくれた剣を握りしめて荷台から飛び降りた。
こんな盗賊相手に負けては冒険者などにはなれないと、修練の日々を思い出しながら奮起する私。
――けれど、現実はどこまでも残酷だ。
やめて! お願いやめて!
私は、弱かった。
威勢よく飛び出したが相手はどうやら手練れの盗賊だったらしい。制止を聞かなかったから振るった剣はしかし呆気なく弾かれて、早々に武器を失った私はそのまま男たちに拘束された。
私を上物だと舌を舐めずさる盗賊たちは御者を殺害した後、馬車と荷台に積まれている金目の物、そして私、全てを奪って拠点へと戻った。
なんとなく、嫌な予感がしたが、それは本当に的中してしまった。
男たちは私を縄で手足だけ縛り直した後、無理矢理服を破き始めた。
屈しないと、奥歯を噛み涙をこらえる私を、しかし盗賊たちはこの屈服し縋る私を想像して嗤う。
そこからは、地獄の始まりだった。
欲情した盗賊――オスたちは、まとめて私の体を使って性欲を吐き出し始めたのだ。
穴という穴に異物を突っ込まれ、体中が蹂躙されていく。嗚咽をこぼして尚それは突っ込まれ続け、鼻がひん曲がりそうになるほどの異臭が鼻孔を犯す。拒絶するカラダとは裏腹に、オスたちの生殖器はそそり立って不愉快なものを無理矢理注いでくる。終われば次。終わればまた次と、蛮族の蹂躙は絶え間なく続いた。
身も心も、死んでいく。それでも、私の体は生処理に使われる。嗤われながら。
『絶望』の二文字が、オスに犯される私にピッタリだった。
強くなったったと驕っていた罰。親に親孝行してやれなかった後悔。オスに道具にされる屈辱――全てが、涙となって溢れる。
思考が負の念と強制的に与えられた快楽に耐えられなくなった頃、この状況を一人傍観していた男がゆっくりと私に近づいてきた。
このオスにも犯されるのかと、もう何もかもがどうでもよくなっていた思考に、男は惨めな姿に成り果てた私を見下しながら言った。
『これは弱く半端者の小娘がイキッた罰だ』と。
正論すらも、私にはもう届かなかった。
夢は叶わず、死を願うばかりの私の虚ろな目に、キラリと鈍色の光が走った。
『殺すんですかい? 上物なのに』『生かしておいて価値がない。お前らも久々に女を味わえて満足したろ』――そんな会話を聞きながら、私は心の中で必死に殺してと乞うた。
今まで、死にたいと思うことなんてなかっ――何度も、死を願った。
――?
それは、壊れていく思考の中でふと湧いた疑問。
この世界に生まれて死を願ったことなんてないのに、なのに何故か私は、何度も死を願っていた気がする。
冷たい地面に頭を擦りつけた恐怖――そんな記憶はない。
愛した人を殺された憎悪――そんな記憶はない。
なのに何故か、死を間際にして、存在しないはずの記憶が次々と蘇ってくる。
なんだ。この記憶は。犯され続け、死を願いすぎたせいで本当に頭が壊れたか。
混濁する思考に喘ぐ私の視界の端に、ナイフの先端が尖って見えた。
――懐かしい。あれで、何人も殺しったけ。
またも覚えのない記憶に触れた刹那――私はようやく思い出した。
それは、かつての『私』の記憶。
これは、三度目の人生なのだと。
理解した瞬間。鈍色の光が私の心臓を貫き、私は死んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます