第一章 墓前の約束

多軌道世界

 太陽柱を中心に半径約三〇〇〇キロメートル、厚さおよそ三〇〇〇〇メートルの大気層に浮かぶ無数の島々からなる『軌道』。


 その『軌道』が四〇〇〇〇メートルの無島帯を挟んで幾重にも重なる『多軌道世界』。


 古代から人々は空駆ける『船』を造り、異なる島に暮らす人々と出会い、交流し、そして争いあった。

 

多くの船を持ち、多くの島を占有する集落が村となり、町となり、やがて国家となった。

 

 より強く、より豊かに。やがて国家そのものが意志を持つ怪物となり、自らの肥大を望んだかのように互いを喰らい合い、血を流し続けた。


 造船技術・科学技術の発達は国家間の生存競争を活発にさせ、国家の支配域を一つの軌道内から異なる軌道にも押し広げることとなった。


 植民地から得られた資源・労働力は本土発展に惜しみなく使われ、『列強』と呼ばれる国々が誕生することとなった。


 第零軌道:フォン・デ・クロア同盟

      アルバティア王国

 第一軌道:ヴァスコニア連邦

 第二軌道:天威帝国

      灯華皇国

 第三軌道:ラドロア共和国

      パルス王国

      帝政アスィマ・アイン

 第四軌道:グロリア連合王国

      リュミル共和国

      ヴォルケントゥルム連邦

 第五軌道:第五ソルス共同体


 “黄金十二ヶ国Golden twelve”と呼ばれる国々が覇権をめぐり、言葉外交から砲弾戦争を飛び交わす。植民地や衛星国、第三国が大国の思惑に振り回される。


 強ければ栄える。弱ければ滅する。悲鳴を上げることすら許されない。

 “帝国時代”とはそのような時代であった。


(星砂社 五島紀文著 『帝国時代』より抜粋)

      


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