筋肉探偵
あニキ
誰が呼んだか筋肉探偵
「皆さんにお集まり頂いたのは他でもありません、この事件の犯人が分かったからです」
そう皆に言い放つキャップを被った男。いや、キャップとパイプタバコだけは探偵っぽいが、その大きすぎる方や胸、はちきれんばかりの太腿。
彼こそが――筋肉探偵である。
「それで、一体誰が」
「殺されたのは密室ですよ?!」
被害者は密室で窒息死していた。開かぬドアを無理やりこじ開けて入った先に倒れていた男……
このホテルを訪れてから3人目の被害者である。
「まず、この密室……これはトリックです」
「トリック?」
「はい。犯人は被害者を殺した後、勢い良く扉を閉めました。そう、扉のフレームが歪む程にね。立て付けの悪くなった扉は誰が引っ張っても開かず、無理やりに壊した。ソレこそが証拠隠滅であり、密室トリックの完成だったのです」
「な……じゃあ、まさか」
「そう、それを実行出来るのは1人しかいない。偶然居合わせた元ラグビー部で被害者の知人、鍛え抜かれた筋肉を持つ佐藤さん、貴方しかね」
探偵の指す先に居たのはムキムキの胸筋を震わせて驚く佐藤だ。
「お、俺がやったって証拠はどこにある!」
「確かに、1人目の鉄アレイ殺人、2人目のプロテインドリンク飲み過ぎ窒息殺人……どれも貴方がやったという証拠は薄いでしょう。しかし、貴方は最後の殺人に自身の筋肉自慢をしたいが為に……ミスを犯した」
「何?!」
筋肉探偵が被害者の身体を仰向けに転がすと、その両頬に乳首のような痕があった。
「恐らく、貴方は筋肉を何とか殺人に生かしたい為に胸筋で挟んで窒息させたのでしょう……この乳首痕が何よりの証拠です。そして、同じように当てて痕にハマる人こそ犯人……さぁ、胸を当ててみてください」
「……もう良いよ、そう……俺が犯人だ」
「どうして、筋肉を犯行に……」
「あいつらが、細マッチョ派だって抜かしやがるから……思い知らせてやったのさ。筋肉は大きくてなんぼだ、筋肉こそ力だって」
「筋肉が……泣いてますよ。貴方の愛する筋肉をそんな事に使うなんて」
項垂れる筋肉質の犯人。探偵はパイプにプロテインを流し込んで黄昏た。
「筋肉こそ全て……でも、筋肉を裏切れば、筋肉にもまた裏切られる。塀の中で筋肉と対話して、今度こそ真っ当な筋トレに励んでください」
こうして、筋肉探偵は今日も筋肉を使わずに普通の推理で事件を解決した。
筋肉探偵 あニキ @samusonaniki
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