第3話「入社3日目で退職?」
埴安は、与えられた仕事が、どう考えても続かないと思い、上の人と相談しようと心に決めて出社した。
場合によっては退職も考えていた。
あ〜っ、心臓がバクバクする。
このまま帰りたい。
無断欠勤でクビか!?
それはまずい……やはり相談はしたほうがいいな。
お腹も痛い。
嫌な事があるとお腹にくるのはなんでだろ?
作業服に着替え、坂本さんの所にいく。
「あ、あの、さ、さ、坂本さん……おはな、おはな……」
「お花?」
「お、お話しが、あり、ます」
しどろもどろで話す埴安。
「話しがある? 俺に? なんだ、お前、俺に文句があるってのか? 新人のくせに大したもんだな!」
坂本は、埴安に怒鳴り散らす。
畏縮する埴安。
「あ、いや、坂本さんに文句というのではなく、仕事のことで相談をしたいんですが……」
「なんだ、言ってみろ!」
「あ、あの、で、できれば工場長に……」
「なに! 工場長と話したい!? 俺ではダメだっていうのか!? 何様だお前?」
坂本は埴安の顔に自分の顔を近づけて話す。
「すいません。お願いします……」
畏縮しまくる埴安。
体じゅうから変な汗が出ている。
「しょうがない、待ってろ班長に話してやる」
坂本が班長に話すと、埴安は班長に呼ばれた。
「埴安くん、どういうことを工場長に話したいのか、僕に話してはくれないかな? 話ししだいでは工場長に連絡するから」
班長は、坂本とは違いおだやかな性格で、人の話しも聞く人だった。
埴安は、右肘をケガしていて力仕事は無理なこと、自分は設備管理として採用されたことを班長に話した。
班長は、話しに納得して工場長に連絡して、工場長が会ってくれることになった。
❃
事務室の工場長の席の前に座る埴安。
「製造班の班長から話しは聞いたよ。君の履歴書にも右肘のケガの事は書かれていて力仕事は難しい事はわかった。そこで、どうだろう、製造班から包装班に行くというのは?」
「包装班ですか……」
「この工場は製造班と包装班があるんだ。包装班は力仕事はないので腕が痛くなることは無いと思うが」
「包装班は重くないんですか?」
「アルテミス(お菓子の名前)を包装するだけだから重くはないよ」
埴安は考え込み、思い切って工場長に聞いてみた。
「僕は設備の保守点検と言うことで入社したんですが、保守点検の部所にまわしてもらえないでしょうか?」
「あ〜っ、それか……実は、申し訳ないんだが設備の保守点検の部所というのは無いんだ。お菓子を作りながら機械の点検や修理をしてもらいたいんだ」
埴安は、保守点検の部所があると思っていたので、工場長の話しがしばらく理解できなかった。
「保守点検の部所は無いんですか……」
「そうなんだ。機械は、そうそう壊れないので、普通にお菓子の製造をしながら機械の点検もしてもらいたいんだ。ひどく壊れた時は外注で機械屋さんを呼ぶんだ」
お菓子の製造をするとは思っていなかったので、工場長の話が腑に落ちない埴安。
「坂本君は、人に対する所に少し問題があって、不快な思いをしたと思うけど、包装班には、そういう人はいないから。班長も部下思いの良い人だよ」
「そうですか……」
「とりあえず、明日からでいいから包装班でやってくれないか? 今日は、もう帰っていいよ。そうだ! このコーヒー無料券をあげるから販売部の喫茶店でコーヒーを飲んでから帰りなさい」
「はぁ、そうですか……」
何かよくわからないうちに、明日から包装班で働くことになった埴安。
❃
工場長に言われたとうりに、コーヒーを飲みに販売部に行ってみた。
正面玄関から入ると、工場で作られたお菓子が売られていた。
奥にアテナ(女神)のロボットがあった。
なんだこれ、ロボット?
身長3メートルくらいの背中に羽根が生えた白い像の自動販売機でお金を入れる所がある。
一回二百円。
おみくじ付き。
へ〜っ。やってみるか。
埴安が二百円を入れるとアテナの右の手のひらにお菓子とおみくじが出てきた。
『今日のあなたは、最高にラッキーです。人生の決断の日です』
自動販売機のアテナがしゃべった。
へ〜っ、このロボットしゃべるんだ。面白いな。
出てきたお菓子はアルテミスと言う主力の製品だが、自動販売機は特別な包装だった。
ロボットの横に喫茶店があり、入って工場長にもらった無料券を渡すとコーヒーが出てきた。
僕は一人で喫茶店に入ってコーヒーを飲むなんて初めてだ。これが社会人か?
どれ、おみくじを見るか。
おみくじには、ロボットのアテナがしゃべったのと同じような事が書かれていた。
今日の決断は良かったのか?
本気で退職も考えていたが、とりあえず退職はしないですんだ。
包装班は良いところなのかな?
いろいろと考えながらコーヒーを飲む埴安。
朝にウ○コを出す方法 〜お菓子工場アルテミス〜 ぢんぞう @dinnzou
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