一年目 ハル(二)
ミヨが焚き火の前に来たのを確認してマヒロは、手際よく湯気の立った出来立てのスープを器に注いだ。
カットしたトマトと森で取れた木の実を野菜に合わせた彩りサラダ、トロトロに溶けたチーズとカリカリに焼けたお手製ベーコンにトマトを挟んだサンドイッチ。
最後に木製のコップに水と沸かしておいた温かいお湯を半々に割って注ぐ。その全ての食事を一つのトレーに乗せて焚き火の前に座ったミヨの前に静かに置いた。
ミヨは食事を見た瞬間、お腹がグゥと鳴った。食欲が促進されて眠気なんてどこかに飛んで行ってしまった。
黒猫の食事と水を用意してもらうと黒猫は満足げに尻尾を揺らし座った。最後にマヒロ自らの食事を用意して焚き火の前に腰を下ろした。
「……美味しそう」
「だろ? さ、食おうぜ!」
『いただきます』
二人で手を合わせて日々の糧に最大の感謝を込めて食事を始める、毎食必ず行う日課だ。黒猫も習って小さく鳴いた。
「……美味しい」
食欲を促進する強い香りの中にある優しい味、心に染み込んで芯から温まる。ミヨは口からほっと息を吐いた。
「だろ! さすが俺様だな」
「……うん!」
ミヨは控えめに、だけれど幸せを感じていることが分かるような笑顔が溢れた。ミヨの笑顔を見たマヒロもつられて笑った。
きっとイロがそこにあったのならば、【幸せイロ】だろう。
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