第6話 断罪と尻拭い

「で、これはどういうことなんだ、パシフィカ侯」


 クリィヌック王国王都、その中央にある王宮の、大会議室。

 その中央に身を震わせながら立つパシフィカ侯爵を、上座に据えられた一際豪華な椅子に座る男がジロリと見据える。


 年の頃は四十過ぎ、金髪碧眼の美男子、だったとは思われるのだが、流石に歳には勝てず頬に丸みが出てきている。

 しかしそれはむしろ貫禄となってますますの威厳を醸し出していた。

 ハジム・ノース・クリィヌック。このクリィヌック王国の国王である彼は、普段の温厚さはどこへやら、不機嫌さを隠そうともせずにパシフィカ侯爵を問いただす。


「い、いや、違うのです、これは何かの間違いなのです」


 小刻みに震える身体の揺れが伝わったか、声も震えるパシフィカ侯爵。

 口にする言葉も、言い訳にすらならない有様。

 

 そんな彼の言葉を聞いて、くわっと国王ハジムは目を見開いた。


「その何かがわからんから聞いとるんだろうが!! それとも侯は、己の責任領域も把握できていなかったと言うのか!?」

「ひぃっ!? そ、それは、そのっ! そ、そうです、部下や商会の会頭どもが報告を怠っており……」

「報告が不十分ならば、呼びつけてでも報告させるのが管理者の仕事だろうが!! 真面目にやれ!!」


 ついには部下に責任をすりつけようとした侯爵を、ハジムは一喝する。

 何をどう言い繕おうと、彼が数々の土木事業を管理しきれていなかったことに変わりはない。


「陛下、パシフィカ侯の口からは言いにくいのではないかと愚行いたします」

「うん? それはどういうことだ、ラフウェル公」


 プランテッド家とも交流のある公爵ラフウェルの発言に、国王ハジムは怪訝な顔をしたが……すぐにそれは憤怒の顔へと変わった。

 工期を不自然でない限界まで伸ばし、予算を本来であれば不必要な程に獲得していたこと。

 更には人件費をピンハネしていたことなどなど。

 各種証拠を揃えてラフウェル公爵が糾弾すれば、国王であるハジムが怒り心頭になるのも無理からぬこと。

 パシフィカ侯爵の土木工事における職務権限は全て取り上げられた。


 しかし、それはそれで新たな問題も生まれてくる。


「陛下、恐れながら申し上げます。工期が遅れている地域に関しまして……ヌーガットゥ地方の堤防改築だけは急がねばならぬかと」

「むぅ……ヌーガットゥのこの地域か。確か冬が終われば、大量の雪解け水が流れ込むのだったな……」


 季節は秋、今であればまだ冷え込んでもおらず、水際の工事であっても人足の身体が危険な程に冷えることもない。

 だが、これが真冬となれば身も凍る寒さとなり、大量に降る雪の影響で工事もままならなくなるだろう。


「となると、何とか三ヶ月で残りの工事を終わらせねばならぬ。そのためには相応の人員と資材が必要だが……」


 そこで言葉を切って、周囲を見回すハジムの視線が、一人の男へと向かう。


「……そういえば、貴公の領地では開発が盛んで、人足を始めとする人材も多く集まっていると聞くな、プランテッド伯。

 おまけに、ヌーガットゥは隣の隣、それなりに近い距離だ」


 問いかけられて。

 プランテッド伯爵、つまりジョウゼフはいつもの穏やかな笑みのまま、ゆっくりと首肯する。


「恐れながら申し上げます。陛下のご威光により国内の平穏が保たれているおかげか、ありがたいことに良き人材が来てくれております。

 ……多少のやりくりは必要ですが、陛下のご下命とあらば、身代を賭してでもやり遂げてご覧にいれましょう」


 そこまで言い切って、ジョウゼフは深々と頭を下げた。

 さあどうやってやりくりしようか、と胃を痛めながら。




 痛む胃を抑えながら急ぎ戻ったジョウゼフは、すぐにダイクンを呼び寄せた。


「ということなんだが、……どう見るかね、親方」

「話を伺って、どんだけとんでもない案件なのかと身構えてましたがね。

 こんだけしっかりとした計画書に図面がありゃぁ、三ヶ月もかからねぇくらいですなぁ」


 あっさりと、そう言い切る。

 それに対して、ジョウゼフも驚いた様子もなく頷いて返した。


「……やっぱりそう思うかね? 何しろ素人の私でさえ、こんな長い工期がいるか? と疑問に思ったくらいだったからねぇ」

「いや、伯爵様が素人ってなぁ、ちょいと同意しかねますがね?

 ともあれ、これなら問題はねぇですな。……計画自体には」


 ダイクンの言葉に、ジョウゼフも悩ましげに眉を寄せ息を吐き出す。


「人足と資材が充分にあれば、ということだよね?」

「ええ、おっしゃる通りで。こればっかりはあっしにはどうにも」


 そう言いながらダイクンは視線を移す。

 その先に居たエイミーは、こくんと一つ頷いて見せる。


「資材に関しては、何とかできる、かも知れません。

 実はこちらに来てから、挨拶もろくに出来ていなかったので、前の職場の取引先にお詫びの手紙を出したのですが、そこから細々とやり取りが続いていまして……」

「なるほど、そちらから資材の調達が出来るかも知れない、ということだね。流石だよエイミーくん」

「そんな、とんでもないです!」


 ジョウゼフの賞賛にエイミーは恐縮するが、実際の所これは大きかった。

 後は資金さえあれば、資材の目処は立つだろう。


「予備費もあるし、陛下も無理を言っているからと臨時予算を組んでくださるそうだから、資金の問題も恐らく大丈夫。そうなると、だ」

「後は頭数、ということですなぁ……」

「今、建設現場などで優先順位をつけて、工期を延ばしてもいいところから人員を出せないか算出しています。

 それでも充分な数が集まるかは不透明で……」

「エイミーの嬢ちゃん、悪いが何とか頼むよ。数さえ揃えりゃ、後は何とかする。

 カシム達が育ってきてるから、現場の仕切りは問題なく回せるはずだからよ」


 既に手を打っていたエイミーへと、ダイクンは頭を下げた。

 娘か孫かという歳の彼女へと、まるで頓着することもなく頭を下げるその姿に『ここは上から下までこうなの!?』と内心で慌てながらも、エイミーは静かに頷いて返す。


「ええ、なんとかギリギリ出せるところまで出してもらえるよう、交渉してみます」

「もしゴネるとこがあったら言ってくんな、俺が頭の一つや二つ下げりゃ、大体の現場は言うこと聞くだろうからさ」

「はい、って、ええええ!? ちょっ、親方にそんなことまでさせられませんよ!?」


 頷きかけて、エイミーは慌てて手を振りながら言葉を打ち消す横で、ジョウゼフが同意するように頷く。


「そうだよ親方、あなたがそこまでする必要はない」

「そ、そうですよね、伯爵様……」

「頭を下げるのは私の仕事だしね」

「そっちなんですか!?」


 安心しかけたのもつかの間、さらなる爆弾発言にエイミーは声を上げずにいられない。

 だが、ジョウゼフはいつもの穏やかな笑みを見せて。


「そりゃそうだよ。もちろん親方が頭を下げても効果は絶大だろうけど……私が頭を下げて、言うことを聞かない人はこの領内にいないだろう?」

「結構腹黒い計算してた!? いや確かに断れる人はいないでしょうけども!? でもやっぱり色々問題かと!」


 混乱するエイミーの耳へと、更なる混乱を巻き起こしかねない人間の声が響いた。


「確かにお父様が頭を下げれば言うことを聞く者が大半でしょうけども。流石にそれは最終手段、最後の切り札とすべきではないでしょうか」


 口を挟んだのは、もちろんニコールである。

 しかし、ジョウゼフが向ける視線は、やや懐疑的だった。


「確かに最終手段、下手に使えば民衆の心が離れる切り札ではあるけども。だからこそ今切るべきじゃないかい?」

「大丈夫です、まだ、今は切らなくても大丈夫です。恐らく何とかなりますから!」

「ニコール、君の人材発掘能力は私ももちろん認めているのだけれど、流石に今回は、恐らくで進めるわけにはいかない話なのだから、せめて何か根拠が欲しいな」

「ご安心くださいお父様、わたくし、今回ばかりは勝算がございますから!」


 堂々と胸を張って宣言するニコール。

 ……今まで本当に勝算なしで渡り歩いてきたのか、などとエイミーは思ったりしつつ。

 ニコールの説明を聞く内に、これなら行けるかも知れない、とその場に居た全員が考えを改めた。


「なるほど、それならば確かに何とかなるかも知れないね。……よし、ならば、それでいこう。皆、いいね?」

「ええ、ようござんす」

「はい、よろしいかと!」


 ジョウゼフの問いに、ダイクンもエイミーも即座に応じる。

 こうして、プランテッド家によるヌーガットゥ地方の治水工事が幕を開けたのだった。




 その工事現場は、活気に溢れていた。

 

「皆、お疲れさん! 今日も無事故で怪我人なし、っと何よりなことだ!

 そんじゃ、早速今日の表彰にいくぜ!」


 現場を仕切るカシムが声高に告げれば、どぉっと男達も声を上げる。

 しばし叫びたいように叫ばせていたカシムは、落ち着け、と手で合図。

 すると、まるでそれを待っていたかのように、するすると声が落ち着いていく。

 やがて全員が静かになったところで、カシムは咳払いを一つ。

 それからおもむろに、手にした紙を広げた。


「いつものように、皆が片付けてる間にダイクン親方が採点してくださった!

 今日の栄えあるトップは……3班だ!!!」


 カシムがそう宣言すれば、途端にまた、先程よりも大きな声が上がる。

 両手を突き上げて喜んでいるのは、その3班のメンバーだろうか。

 更にはその周囲にいる男達も3班の面々の肩や背中をバンバンと叩き、手荒い祝福をしていた。


「いつも通り、トップには小金貨二十枚を進呈! そんでもって2位も発表してくぞ!」


 沸き立つ歓声、たまに混じる嫉妬の声。

 

 先程彼らが規律正しくテキパキと片付けた理由が、これだ、

 早く片付ければ、表彰され、ボーナスが出るこの瞬間に早く立ち会える。

 そしてもらうものをもらったら後はお楽しみの時間となるのだから、下手にちんたら片付けでもしようものなら、周囲からドヤされることすらあるくらいだ。

 動機は多少不純ではあれど、それもあって彼らの規律は実に高いレベルで保たれていた。


 そうやって盛り上がっていた表彰だったのだが。


「そんで、技術賞は今日も10班! 速さはちょいとあれだが、流石としか言い様のない丁寧さだったぜ!

 技術賞は、小金貨15枚な!」


 カシムがそう告げれば、10班の面々は若干気まずそうな顔で小金貨を受け取る。

 彼らの表情に浮かぶのは、困惑や戸惑い。そして、少しばかりの喜び。

 明らかに、今まで表彰された男達と反応が違っていた。

 同様の反応は、この場に居るおよそ半数からも見て取れる。


 それもそのはず、彼らはプランテッド領から派遣された人足ではない。

 元々パシフィカ侯爵の商会によって雇われ、彼の失脚により解雇され、プランテッド伯爵家により再雇用された人足達なのである。

 そして、これこそがニコールの示した勝算だった。

 つまり、別に絶対プランテッド領で人員を集め、連れていかねばならない、わけではなかったのである。


 当たり前と言えば当たり前だが、工事をしていたのだから、それに従事する人足も最低限進めることが出来る程度には雇われていた。

 彼らはパシフィカ侯爵とその商会の失態により不要となったわけだが、ニコールの読み通り、再就職先の斡旋も何もなく、見捨てられるように解雇。

 路頭に迷いかけていたところでプランテッド伯爵家に再雇用され、今に至るのである。

 明日の食事にも事欠きかねない状況だったのが、日当だけでも相場よりは良く、更に毎日がプチボーナスデー。

 地獄から天国に来たかのような状況の変化に、彼らはいまだに慣れないでいた。


 だが、そんな彼らを、容赦なくカシムは巻き込んでいく。


「よぉっし、全員もらうもんはもらったな!?

 そんじゃ今日はこれで業務終了、お疲れさん!! ってことで、ぶわっと繰り出そうぜ、ぶわっと!!」

「おお~~~!!!」


 締めに入ったカシムが拳を突き上げれば、それに乗ってプランテッド領から来た人足達も拳と声を上げる。

 それにつられたか、元パシフィカ組も控えめながらも手を挙げていた。

 

「おいおいなんだよ、しけた顔すんなって。楽しく飲んで、また明日も楽しくお仕事にいそしみましょうってな!」

「あ、お、おう……?」


 表彰した10班の班長にカシムが絡めば、班長は戸惑った声しか返せない。

 何しろ彼らは、工事を遅延させカシム達がここに来なければならなくなった元凶、と言われても否定が出来ない立場なのだから。

 だというのに、カシム達はそんなことをまるで気にした様子もなく、現場仲間として普通に接してくる。

 

「明日は久々の休みだし、今日はとことんいこうぜ、とことん!

 ああそうだ、休み明けからは班替えすっか。他の班に入ってもらって、あんたらの技術を教えてもらいたいしよ!」

「そりゃ構わんが……俺等でいいのか?」

「何言ってんだ、良いも悪いもあんたらの方が先輩だろ? だったら大人しく頭を下げて教えを請うのは当然さ。

 ああいや、俺みたいなのが頭を下げても気持ち悪いかも知れないけどよ!」

「確かに気持ち悪いぞカシム!」

「うっせぇわ、俺が一番わかってるっての!」


 班長と話していたところに横から茶々が入るが、その声も返すカシムも、底抜けに明るい。

 釣られて、班長まで思わず笑ってしまう程に。


「まあ細かい話は後だ後! 今日はとことんいこうぜ、みんな!」


 カシムが声を掛ければ、また声が上がる。

 ……先程よりも大きな声だったのは……もしかしたら、旧パシフィカ組の声が少しばかり大きくなったから、かも知れない。

 

 こうして、日々競い合いながらも仕事が終われば臨時ボーナスを手に飲みに繰り出して親睦も深める、という好循環が成立した。


 その結果。


「……聞いていた話では、もうちょっとかかるんじゃなかったのかね、親方」

「いやまあ、若い衆が張り切りましてね? その結果がご覧の有様ですよ」


 呆れたようなジョウゼフへと応じるダイクンの顔は、実に誇らしげである。

 彼の鍛えた若い衆が、彼の予想を超える成果を挙げてくれた。

 その結果が……。


「プランテッド伯爵様、こちらの確認は終わりました。……この治水工事、確かに完了しております……」


 王家から派遣された監査官が、信じられないものを見たような顔でそう報告する。

 何しろ予定の工期三ヶ月の半分……までは行かないが、二ヶ月すら使わずに工事を完了してしまったのだ、信じられないのも無理はない。


「本当に、信じがたいことですが……品質も含めて全く問題ないと、私の名において陛下へとご報告させていただきます」

「ええ、監査業務、お疲れ様です。ああ、予定では数日滞在の予定でしたし、少しゆっくりされていかれては」

「いえ、それには及びません。何なら今すぐにでも帰ってしまいたいくらいですが……流石に、時間も時間ですので、一泊だけはさせていただこうかと」


 気遣うジョウゼフに、監査官はキッパリと首を横に振る。

 本当に、心から、今すぐ戻って報告をしたい。

 この突然降って湧いた工事を、慣れぬ北国の地で、誰もが予想だにしなかった速さで完了させた男達がいるのだと、出来うる限りの速さで伝えねばならぬ。

 燃えさかりそうな胸の熱を抑えるだけで一苦労。それだけの高揚感を、監査官は覚えていた。


 そんな彼らのやり取りの中、カシムが人足達の前に立った。


「皆!! ほんっとうにお疲れさんだ!!

 今日、国の監査官殿が確認して、工事の完了が認められた!

 そして今、ここに、プランテッド伯爵様がいらっしゃる!!

 俺達は、やったんだ!!!!」


 これまでで一番の声をカシムが張り上げれば、それに応える声もまた、今までで一番。

 そして、彼らが見せる笑顔もまた。

 その光景に、胸にこみ上げてくるものを感じながら、必死にそれを飲み込み抑え込み、カシムは声を上げる。


「いつもならここで表彰なんだが! 今日は、伯爵様がお言葉をくださるそうだ!!

 皆、心して聞け!!!」


 意味が浸透するように1秒だけ待ってからのカシムの言葉に、全員の背筋が伸びる。

 そこに悠然と……人前に立つことに慣れた様子で、ジョウゼフが進み出てきて穏やかな笑みを見せた。


「皆、楽にしてくれ。この突発的な工事を、こんな短期間で終えてくれたことに感謝する。本当にありがとう。そして、ご苦労様」


 張り上げるようなカシムの声と違い、ゆったりとした声。

 だというのに朗々と、この場に居る全員の耳へと確かにその声は届く。

 もう、それだけで涙ぐむ者が何人もいた。


「本当ならば、色々と語るべきことがあるのだろうけど、今この光景を、君達が成し遂げた偉業と言って良い工事を見て、私の乏しい語彙では語るべきことが語れない。

 だから言葉にできない代わりを用意したんだ」


 続けてジョウゼフが口にしたのは、旧パシフィカ組リーダーの名前だった。

 呼ばれた、と理解するのに、たっぷり五秒はかかっただろうか。

 周囲から促されて我に返った彼が前に出てくれば、ジョウゼフはとても柔らかな笑みを見せて。

 突如、その両手でもって一枚の紙を広げた。


「表彰状! 君は、本当に偉い!!!」


 響き渡るジョウゼフの声。

 呆気に取られ、班長も他の人足達も、カシムすら言葉を失う。

 そんな中、一人平然としているジョウゼフは、さらに言葉を続ける。


「貴殿は、この突発的な工事において、突貫などと言われぬだけの質でもって本工事を完了させるにあたり、多大な功績があった事を工事責任者、ジョウゼフ・フォン・プランテッドがここに認め、表彰する!

 君は、本当に、偉い!!!」


 言葉を句切り、言い聞かせるように。

 そして、その紙……表彰状が、彼の前へと差し出され。

 訳もわからぬ彼はそれをおずおずと受け取り、彼の名前やジョウゼフのサインが記されたそれを呆然と見つめていると、突然誰かの手が差し出された。


「本当に、ありがとう。君達がいなければ、この工事はこんなに早く終わらなかった」


 それは、握手を求めるジョウゼフの手。

 上手く頭が動かない中、それでも半ば反射的に恐る恐る応じようとすれば、がしっとその手を掴まれる。

 ぐ、ぐ、と力強く握られて、これが夢でないことを理解した彼は。

 どばっと涙を溢れさせた。


「おいおい、気持ちはわかるけどよ、もうちょいがんばれ、な、な?」


 そんな彼をカシムが支え、横へとはけさせる。

 そう、表彰されるのは彼だけではない。


「本当は皆をきちんと表彰したいんだけど、流石に時間がかかりすぎるからね、後は以下同文とさせてもらうのは勘弁して欲しい。……それでも、称える気持ちは皆一緒だ。

 君達は、私の誇りだよ!」


 ジョウゼフの言葉に、何が起こっているのかやっと人足達は理解出来て。

 これ以上ない程の声を、弾けさせた。

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