第9話 休日2

僕は部屋に戻り弁当を食べた。ビニールとプラスチックのバリバリという音が響く。”明日はゴミ捨てか”。僕は、ふいにカレンダーに目をやった。今日は4月16日。中途半端な日だ。『明日は17日、月曜かー。』心の中でつぶやいた。『ぐらっ』僕の頭が揺れ、デスクの卓上カレンダーの数字がゆらゆら動き出す。まるで携帯画面アプリ移動の揺らぎのようだ。僕はカレンダーに近づくき指で今日16日と15日を入れ替えた。とたんに場面が切り替わり僕は飯田橋を歩いていた。会社帰り。携帯は21時05分。僕は、また歩き出した。昨日15日と同じ風景感覚だ。僕は昨日と同じ経路をあえて思い出しながら歩いた。時間はあっという間に21時28分。”おぼろの空間”が現れた。そして僕は次に佐々木ユイが現れるのを知っている。僕は先に”今だ。”振り返った。「佐々木ユイさん。同じ電車だったみたいだね。」僕は先制攻撃。佐々木ユイは急に振り返った僕に驚き顔が固まっている。まるで昨日の僕のように。僕は僕から言葉をかけ「同じ方向、案外家、近かったんだね。」佐々木ユイは「そうね。あとナダ君、私のことユイでいいよ。みすずのことみすずって呼び捨て、してたでしょう。」「そう、じゃ、遠慮なく。ユイ。じゃ僕こっちだから。」「私、春日だから。じゃ。」ユイはあっさり僕から離れた。昨日と同じ状況だったが、僕は事実を変えた。主導権はこれで僕が握れる。行動の”上書き”を僕はした。”僕の部屋のカレンダー。”これはどうやら僕の味方をしてくれそうだ。一種のタイムトラベルカレンダーとでも呼ぼう。時空の入り口がこんなところにあったなんで近すぎて笑える。それにしてもユイは境界線人だ。しかも悪い境界線人だ。罠にかける前にどうやら自爆しそうなタイプだ。もう少し様子を見よう。悪い境界線人はどうやって僕を陥れようとしているのか。もう少しだけ、このまま。僕は昨日の出来事をなぞるように歩き出した。案の定、大きな風が吹き。花びらが川に落ちてゆく。おぼろの空間。白い世界が現れる。昨日は、この白い世界を見つけた時にユイに声をかけられた。時間操作で得たこの15日には、ユイはいない。さっき僕より離した。今度こそ、邪魔をするものはいない。”菜”君は“この白い世界”にいるのだろう。時間の狭間に捕まっているのだろう。心配しなくてもいい。もうすぐだ。僕が助けに行くから。僕は数センチの隙間から”その世界に足を入れた。”黄色の春草野の匂い”がたちこめる。黄色の色を追いながら、まっすぐに歩いた。僕の足元がおぼつかない、ふわふわ歩いた。3メールほど前に黒髪の長い少女がいる。横に、横には僕が手をつないで歩いている。”僕は”ここにいる。目の前の二つの姿は。僕の脳内に”早く来て”懐かし声。この声は”菜”君なのか。僕は混乱した脳内僕に話かける。返事がない。「ガタン。」かけていたカレンダーが落ちている。僕は僕の部屋にいた。今見たのは、全部夢だったのか。目の前にコンビニ弁当の空が。”早く”の声。僕はどうすればよいのか。僕は、僕は、どうしたら君を助けられるんだ。”菜”手がかりが欲しい。僕は目の前の弁当の空をゴミ箱に捨てた。窓に目をやる。雨はまだ降っている。もうすぐ連休だ。僕は急にすり鉢状の長崎の街並が見たくなった。本社に来て3か月。長崎支店、報告も兼ねて行ってみようかな。時空空間エネルギーを僕は欲していた。


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