第6話 魔女の報酬とハルの成長

 野原で集めた採取アイテムは全部で13個、薬花草ヤッカソウが8本でブルーヒールキノコが5個だ。ハルの頭頂部らしいゼラチンに接着し手ぶらでラルゴ少年の前に戻って来たらおおと感嘆の声を漏らした。

「ここら辺で採取出来る物はこれで全部だけど足りなかったら別の場所に移動して採りに行こう」

 そう言って活けたキノコと薬草を引き抜いてラルゴの持つ麻袋に入れてあげると少年は少し安心した声で答える。

「もう充分です。ありがとう」

「どういたしまして」

 引き抜く度にぷるるんと揺れるスライムのハルも活躍したんだぞと言いたげだ。

「ハルもありがとう、おかげで手ぶらで移動出来たよ」

 そう伝えればハルは喜んだ。最後の一本の薬花草を麻袋に入れると紐を閉めて立ち上がった。

「これで僕は帰ることが出来るから、魔女様はどうするの?」

「そうかもう帰るのね。帰り道は気をつけてね、大人の人を見つけたら一緒に帰りなさい。嗚呼そうだ」

 手のひらを握り中で【金生成】を使用し金貨を作る。

「これは私からのお礼だよ。なるべく自分の得になるよう使いなさい」

 手に渡すと変わらぬ声色でありがとうと言ってくれる。

「それじゃあ日が暮れる前にお家に帰りなさい。いいかい、私と出会っていた事は君だけの秘密だよ」

 ラルゴは頷き金貨を握りしめた。

「さよならラルゴくん」

 その言葉を耳にすれば少年はくるりと私に背を向けて来た道を戻り去った。少年の背が森の奥に消えてしまうまで見送ったらハルを抱きかかえて別の方向へ歩き出す。

「ハル、私達はまだまだ食料採取を続けるよ。この辺りにキノコがあったんだ、群生地はもしかしたら近くかもしれない。それに何かの拍子に私のスキルに錬金術や回復薬の調合が出来るような事が起こる可能性もしれない。今のうちに知っておきたいんだ、付き合ってもらうよ」

 ハルは仕事を任された様子でやる気満々のエモーションだ。便利になってしまった【鑑定】を使用したい眼前のフィールドに試せば探しているブルーヒールキノコの他にも色んなキノコや木の実を見つけることが出来る。

「キノコの群生地サマサマだ。ブルーヒールキノコの安全性は分かったから採ってしまおう。ハルもこの青く光る白キノコを見つけたら沢山お食べ。元気になるよ」

 ハルは食いしん坊なようで捕食するよう指示した言葉には積極的に反応し単独行動をする。その積極性は私の手が届かない高い木の陰に生えたブルーヒールキノコを捕食しに行く程だ。私はわたしで採取するブルーヒールキノコを【アイテムボックス】の空間入口にポイポイと投げ込む。中には面白い見た目のキノコも存在する。

「グルルタケ……はて面白い色模様だ」

 オレンジ色の螺旋が特徴的なキノコは【鑑定】すると混乱作用のあるキノコらしかった。むやみに触れずに良かった、こういう時無防備に手で触れて指でも嚙み千切っていたらとんでもない事だった。

「この紫色のキノコはどう見ても毒キノコだな。またいつかの機会に採取しよう」

「ハルー、そろそろ帰るよー」

 木の上に居ると想定して上に向かって声をかけるがどうやら虚空こくうを越して鳥の鳴き声が返事をした。

「ハル―、何処に行ったのー?」

『ココ、だヨー』

 知らない声が返事をして思わずビクリとしてしまう。振り返れば幾分いくぶんか表情と体表現が豊かになったスライムのハルが居た。とてもウキウキしているのが目に見えて分かる。

「ハル、もしかしてお話出来るのかな?」

『ウン。あるじぃ』

『すごイ?』

 キノコを過剰に捕食したことによる知能が向上したのか、ただ単に捕食によって経験値が上がるスライムらしいレベルアップによる変化なのか、それとも主人である私と沢山会話し交流したことによる親愛度の変化なのか。定かではないが取り敢えずハルと私について【鑑定】をしてみる事にした。


 ーーーーーーーーーーーーーーー

 名前 ハル

 レベル 15

 種族 スライム

 年齢 5日目

 HP 2450

 MP 1970

 固有スキル【捕食】

 スキル 【回復薬生成】【主従念話】

 主人 ヨメタニ ハルカ

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 私の詳細は特に変わっていなかったのですぐに閉じて大いに変わったハルのステータスを凝視する。固有スキルの下にスキルが追加されレベルも生後五日目にも関わらず大成長をしている。まあある種の親馬鹿が発動していてもおかしくない思考をしているが敢えて言おう。

「天才だねーハル」

「私とお話出来るなんて普通の子達じゃあ出来ないことだよ。凄いよハル」

 それにもう一つの【回復薬生成】これは私が欲しかったが仕方ない。このスライムは私の子同然だ、生涯重宝しよう。

『ハルも、うれシいよ』

 可愛い可愛い私のスライムのハル。これから沢山私と話して遊んで狩って捕食してもっと成長をしてね。

 気がつけば夕陽の光が木漏れていた。ハルを抱えて湖を目指して歩き出す。

「また明日も沢山採取して狩ろうね」

『うん、あるじ』

「その前にご飯を食べて眠ろうね」

『うん』

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