第4話 魔女の脅威

「もうそろ食べるの止めて探検しようか」

 出会った当初は口に入れるくらいのサイズのスライムのハルだったが、私の【金生成】で飛び出た金貨を捕食することによって今では丸いクッション程に大きくなってしまった。前で抱える程に大きくなればハルはもう成長しレベルも上がったのではなかろうか。

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 名前 ハル

 レベル 7

 種族 スライム

 年齢 5日目

 HP 960

 MP 480

 固有スキル【捕食】

 主人 ヨメタニ ハルカ

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  違和感がなくなってきた眼前の幻を確認して湖を移動する。私が歩けばスライムもついてくるがその、のそのそとした歩き方が幼稚だったのもありハルを抱えて移動をする。この周りの動物達は大人しく怖がりらしいがあの時少年が逃げ回った猪くらいの気性の荒い生物も近くにいるのだろうか。

「あまりモンスターと遭遇しないねーハル。私もレベルアップしたかったけれど今日は食料探しをした方が早そうだね」

 しばらく歩いけば猪のような生物がいてくれれば肉も毛皮も手に入って嬉しいのだが一向に現れない。茂みをかき分けて進んだ先にはモンスターの集団が居たがどうも食用肉ではなさそうな小型の魔物だった。

「ゴブリンってかんじだね」

 相手も私のことに気づいて手に持っていた原始的な作りの槍や木剣を構えた。好戦的で私は嬉しい。

「ハル、倒れたゴブリンは捕食していいからね」

 そう伝えて抱き心地の良かったハルを地面に下ろして手を構える。手に【水魔法】の水球を出すイメージをして集中する。集中力はこの世界でいうMPなのだろう、なんだか消費しているように身体が感じる。

「水性弾!」

 勢いは大事なものでかけ声の後に小さいながらも速さと破壊を兼ねた威力の高い水球が手から放たれ一匹のゴブリンの顔半分をえぐり倒した。

 その威力にゴブリンの二、三匹が先に敗走した。前に塞がる三匹のゴブリンに勝てるかは私の残りのMPにかかってくる。

 両手を二匹のゴブリンに構えてもう一度同じ技をくりだす。ゴブリンも私が何をしようとしているのか分かっているので物理攻撃を私にくりだそうと武器を振るう。

「ぐぅ……わ!」

 溜めて撃ち放つということも出来る奥が深い【水魔法】は三匹のゴブリンを巻き込んでぜる。かなり近い距離で振り下ろされた刃物は爆ぜた水と押して遠ざかる力によって持ち主の手から離れて地面にカランと落ちる。

 赤い水たまりと歪んだ顔面の魔物を見て私はハルに言った。

「めしあがれ」

 スライムの子供はその声を聞いてフワフワと移動してゴブリンの死体の上をうごめきながら捕食していった。

 その様子を微笑ましいなと見つめて自分を【鑑定】してみる。この幻は非常に使えるスキルだ。

 

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 名前 ヨメタニ ハルカ

 レベル 2

 種族 人間

 年齢 27

 役職 魔女 特殊スキル【魔眼】Lv2

 HP 1000

 MP 1994

 固有スキル 【金生成】【魅了】

 スキル 【鑑定】【アイテムボックス】【水魔法】

 従魔 ハル(スライム)

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 私のレベルが2になりとても嬉しい。そしてMPの消費量もそこまで減っていないにも関わらずあの威力ならばあまり制限せずに魔法を使用してもいいのかもしれない。それにいつか水属性の他にもくりだしたい魔法もある。火属性の魔法を使って生活をより充実させたいのだ。いやそれはさておき、一体なんだろうか魔眼のレベルとは。凝らせば詳細な事が分かる。

 相手を石化することが可能らしいが、なんともメデューサらしくなった。それでも種族は人間なのだから私が使用しようと思わなければまず大丈夫でしょう。

 足の指に冷たい感触が乗る。これはハルのゼラチン質な触感だ。

「ハル綺麗に食べたのー?えらいねー」

 かがんで話せばハルは細い触手を伸ばして二匹のゴブリンが逃げた先を指さした。どうやら追いかけなくてもいいのかと伝えたいらしい。

「あれは食べられる肉じゃあなさそうだから追わないよ。それにまだ私は弱いから多勢には敵わないんだ」

 そう言えばハルは大人しくなる。もう少し強くなったら逃げたゴブリンも強襲きょうしゅうすることが出来るだろう。

「今度は夜のご飯を探そうかハル。私には【鑑定】って便利なスキルがあるから食用か否かも分かるかもよ」

 ハルを抱いて来た道を戻るようにして食料を探す。基本的に私の行動範囲は湖を中心にしようと思う。その方が水浴びも出来て食材を洗う水に困らないし、何よりもあれくらいの広さなら私の魔法攻撃の練習にもなる。そういう利点もあるのだ。

「ハルー、木の上に木の実っぽいのがあるよー」

 上も注意して見れば赤い木の実がぶら下がっていた。食用かどうかは【鑑定】して調べる。【鑑定結果】は食用の木の実で名前はタレアカボウというらしい。形状はサクランボに近いが甘いのだろうか。

「ハル―、あの木の実まで手を伸ばせるかな?」

 尋ねるとハルはみょーんと触手を伸ばしていき実のなる枝を手折り見せてくれた。

「毒味するよ、…………んん」

 口に放り込んだ赤丸の果実を噛むと酸味がほんのりと先にやってきてあとからじんわりと甘さがくる。これは美味しい。

「ハル、これ美味しいよ。沢山持って帰ろうか」

 そうしてハルを持ち上げタレアカボウを採らせているとガサガサと音がしたのでそちらを見た。無防備な茶髪を数時間前に見たので覚えていた。少年も私の顔を覚えていたらしくひぇっ、と小さな悲鳴を上げて腰を抜かしたのでハルを木の幹に接着させて少年の手を握って声をかけた。

「さっきぶりだね少年。また会えて私は嬉しいよ」

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