第3話 魔女ハルカ
日向ぼっこしているとどんなに太陽が
「なにキミ?」
口にして言えばそれはゼラチン質な球体をふわりと揺らしている。自立して動く水饅頭みたいな生き物なんてゲームのアレしかいないとは思う。
「キミはあれなの?スライムってやつなの?」
手で包み込んでプルプルと揺らす。なにも話さないが可愛いらしい。表情はないものの、体表現は豊かなようだ。
「喜んでるの?可愛いね、私と暫く遊んでよ」
手から腕へコロコロ転がし、右から左へポヨポヨ投げて、一人キャッチボールをして時間を潰す。
「ん、お?」
なにを触ってしまったのか分からないが生きているスライムをボールにして遊んでいたらRPGゲームでよく見るモンスターの詳細画面のようなものが表示される。
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名前 ーー
レベル 1
種族 スライム(幼体)
年齢 5日目
HP 120
MP 60
固有スキル【捕食】
主人 ヨメタニ ハルカ
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「キミ赤ちゃんみたいだね。キミみたいな子がよく今まで外敵に狙われず生きてこれたね。頑張ったね〜」
そう言えば反応する可愛い魔物。
「可愛いね〜、お名前付けてあげようか」
名前に反応した様子の小さなスライムに私の名前の一部を
「キミの名前は今からハルだよ。私と同じ春って名前からとったんだよ。私の名前はね、ハルカっていうんだよハル。名前覚えてね」
そう言うとスライムは手の中でピョンピョンと跳ね出した。嬉しいのだろう。より愛着が湧く。再度詳細画面らしい四角の幻に目を向けると名前のところにハルと表示されていた。
「お腹とか空かないのかなキミ、私はまだお腹は空かないけれどこれから空腹になりそうだなー。水だけでもいいから飲みたいけれどね、私はまだこの世界の水は怖くて飲めないな」
腕も疲れたのでスライムのハルを地面に下ろしてボーとする。不思議な画面は時間が経てば目の前から消えた。あの画面は魔物だけなのだろうかとふと疑問が浮かんで私の詳細画面が出るようにと目を
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名前 ヨメタニ ハルカ
レベル 1
種族 人間
年齢 27
役職 魔女 特殊スキル【魔眼】
HP 1000
MP 2000
固有スキル 【金生成】【魅了】
スキル 【鑑定】【アイテムボックス】【水魔法】
従魔 ハル(スライム)
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「魔女…………?」
どうやら私は既に役職が決まっていたらしい。特殊スキルの【魔眼】とは一体なんなのだろうか調べるため【魔眼】の項目に集中するとレベルに応じて効果が解放されるシステムの幻が見える。レベル1の私ではまだ何も分からないみたいだ。そしてスキルとは一体何だろうか。きっとMPに応じて使えるのだろう。でもMPの表示が減少していないことからまだ使っていないのだろう。なら【水魔法】を使ってみよう。
「水が飲めますように」
両手を器にして手中に水が溢れるイメージをしていると水の粒が生まれて渦を巻いて球になった。
「水だ……!」
集中が途切れた瞬間に浮いていた水球は両手に落ちて重力に従って指の隙間からポタポタ
味は普段飲む水と変わらない。
MP表示は上限値より2減っており、魔法を使うと消費されるのだろう。では【鑑定】や【アイテムボックス】というスキルは一体何なのだろうか。ニュアンス的に【鑑定】はアイテムやドロップ品を調べることが出来る程度のものだろうか。【アイテムボックス】は四次元ポケットと同じ感覚だろうか。まあMP消費されないものは時間が経てば新たにわかるだろう。
「レベルアップしておこうか……。有事の際に魔法を扱い易くしておかないと夢で死ぬ、異世界で早々に死ぬなんて嫌だしね」
スライムのハルの感触が消えたのを指で確認して手元を見ると葉の衣を溶かしていた。これは
「お腹が空いたんだねハル。ちょっと待ってね、今食べさせてあげるよ」
そう言い聞かせて葉を捕食するのは止めさせようと手をかざす。ここで固有スキルとやらを使用してみせる。
「【金生成】」
ハルにかざした手の平からジャラジャラと金貨が飛び出し小山になった。それをハルは喜んで一枚一枚を丁寧に溶かす。
「一生お金には困らないだろうけれど知られたらきっと何処かに監禁されて、搾取されて、金安になって殺されるのかな」
悪い妄想をして一人青ざめる。ハルはつゆ知らず無限に飛び出る金貨を捕食して体を大きく成長させていく。ウチの子は食べて成長するらしい。
「ハル、もう少し大きくなったら一緒に森を探検しようか。きっとハルも強くなれるよ」
私の言葉をより理解しているようでハルはピョンと小さく跳ねてまだまだ生成される金貨を補食していく。
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