Mrマッチョへの祈りを込めて歌うとき

カフェ千世子

マッチョ、マッチョマーン

 声出し応援が解禁となった。

 このコロナ禍の間に、我らがオリックスバファローズはリーグ2連覇を果たし、日本一になった。

 声が出せない中、ハリセンを叩く手に力を込めて応援した。彼らの活躍に思わず声が漏れることもあった。


 優勝に欠かせなかったピース、打の要だった男が今期からメジャーリーグに挑戦する。

 本来なら、メジャーに行ってしまった彼を声を出して応援できる機会はなかったのだが、WBCが開催されたために彼をこの日本でかつての応援歌を歌って応援することが可能となった。


 パリーグの一チームから日本を背負うチームの一員となって、その打棒を揮う。

 その重圧はこちらからは測ることができない。


 彼はいつでも変わらぬ笑みを浮かべて白い歯を見せる。打席では、鋭い眼差しで球筋を見極めて、バットを振る。そして、確かな一打を放つ。

 体は何度も故障した。だが、そのたびに彼は治して戻ってきてくれた。


 プロ入り当初は腰に不安を抱えていたのを、室伏広治に師事して体を鍛えることにより克服した。


 応援歌通り、幾多の困難を乗り越えてきたのだ。



 日本がビハインドの展開の中、吉田正尚に打席が回る。手に汗を握る。大歓声は波のように響く。それを受けて、表情に変化のないまま、彼は打席に立つ。

 バットを構えて、ピッチャーと相対する。


 ピッチャーが一投を放ち、吉田に向かう中、観客はいざ彼を後押ししようと口を開く。

 いざ、応援歌が始まるところでバットが一閃。フルスイング。



「う、うわあああああーーーーーー!」


 打った!

 正尚が打った!

 正尚の打球は広く空いていたレフトへと落ちた。一人、また一人帰ってくる。

 2点タイムリー! 逆転だ!


 応援は歓喜の声となって球場を渦巻く。

 先制されて重たかった雰囲気はこれで一変する。



 次の打席。今度は大音声の応援歌が響いていた。

「正尚! 正尚! 正尚! 正尚! おおお……! ま! さ! た! か! ま! さ! た! か!」

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Mrマッチョへの祈りを込めて歌うとき カフェ千世子 @chocolantan

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