第41話 結果

ねぇ、例えば。

君が壁にもたれて座ってたとしてさ。

その壁ぶち抜いてさぁ。

剣でぶっ刺されたらあまりにもクソだと思わない?


ズブっ。


「ガ……」


ボスの断末魔が小さく聞こえてきた。


俺は今剣を魔力で延長して、別の通路にいるボスを壁ごと貫いていた。


延長してる距離は30メートルくらい。


"とんでもねぇクソ技出してて草"

"壁に背をあずけてても意味ねぇのかよwww"

"???「戦闘時は壁を背に立てばいいぞ!」"

"それで警戒しなくなるから余計攻撃が通りやすくなるんだな"


ズバッ。


ガガガガガガ。


ダンジョンの壁ごと横に斬り払ってボスを倒す。


"ダンジョンを斬るなwww"

"モンスターを斬れwww"

"草薙剣くん早速ハードワークかよwww"

"ようこそクソッタレな職場へってやつじゃんwww"


マップに目をやる。


敵数

0/1


討伐完了だな。


"こんなことできるなら初めからやっとけば良かったのでは?"

"たしかに"


「ダンジョンガコワレル」


"もう壊れてるんだよなぁ"

"壊した後に言うな"


前に一回やったことあるけど、ダンジョンが壊れました!ってギルドで大騒ぎになってたからあんまりやらなくなった。


今回みたいに嫌がらせされた時はやるけど、それ以外だとあんまりやらない。ダンジョン崩壊の可能性もあるし。


あと、剣がだいたいむちゃくちゃな使い方に耐えられずに壊れる。


剣に目をやった。


"ボロボロやんwww"

"草薙剣「勘弁して……」"

"これダンジョンクリアまでもつか?"

"さすがにスペアくらい持っとるんちゃうん?"


アイテムポーチに手を入れてスペアの剣を取りだした。


3本くらいあった。


"残機3か"

"そっちが残機かよwww"

"まぁこいつの場合は、剣が壊れない限りはダンジョン潜れるからなぁ"


で、さっきから気になってたけど。


(攻撃、終わったな。やっぱモンスターが発生させてたっぽい)


どんな陰キャ面したやつがあんな攻撃してたのか見に行こう。


そうして、ボスを倒した場所に来ると。

ボスは人型をしていて、手には剣を持っていた。


この剣であの意味のわからない攻撃をしてきていたらしい。


んで、モンスターはと言うと。


名前:スサノオ


となっていた。


"【速報】スサノオくん超絶陰キャだった"

"まぁ実際あの攻撃はやばいわなwww"


(ん?)


スサノオの死体の近くを見ていると光るアイテムがあった。


チャリっ。

拾ってみると


【スサノオの尾】


というアイテムだった。


この先で必要になりそうなニオイがピンピンしますなぁ。

そう思いながら俺は先に進むことにした。


しばらく進むと少し広い空間に出て、でかい扉と横穴があった。

横穴の方は先に続いてるようで


(Bルートから来れる道かな?)


まぁ、なんにせよ。

扉の横に台座がふたつあるし、ニーナのやつを待ってみるか。


待っているとニーナがやってきた。

正直驚いたな。


ルートを突破してくると思ってなかった。


「やっぱ余裕だよね」


と、余裕ぶってるがけっこうボロボロになってて、そんな状態で台座にアイテムを乗っけた。


俺もアイテムを乗っけようとしたら。


「配信一回止めてくれる?話がある」


"なんで?止めんの?"

"ふたりでイチャコラすんのかよ?!ゴラァ"


「ミュートハ?」

「それでもいい」


ミュートすることを謝罪して俺はミュートにして声を配信に載せないようにする。


"なんも聞こえねぇ"

"でもいい雰囲気じゃないよなぁ"

"なんかギスギスしてるよね"

"表情見えないけどなんか張り詰めてるよな"


そんな雰囲気の中ニーナが口を開いた。


「私はWGOから派遣されてきた。言わばスパイ」


知ってたことを改めて口にするニーナ。


「スパイ?」


でも知らないような反応をしておく。


「あなたの強さがおかしすぎてさ。調査を頼まれてた。で、その結果が今出た」


肩をすくめてこう言ってくる。


「普通よね。疑ってごめんなさい。思ったより普通でした。だからさ。私はそうやって報告するし。これからはもうちゃんと君の味方でいるよ」


そう言ってくる。

般若の仮面で。


その見た目でそんなこと言われても怖いよねー?

まぁでも。


演技じゃなくて素の声で返す。


「そっか。打ち明けてくれてありがとうね」

「配信再開して。あんまり長くミュートしてると、ヒステリー局長おばさんもうるさいからさ」


俺はミュートを解除してまた配信を再開した。


それきりまた黙り込むニーナを見てから台座にアイテム置くと。


ズガガガーと台座が下がってまた扉の鍵が開くような音。


「Bルートにいたのはツクヨミだったよ。そっちにいたのがスサノオってことは、この先はアマテラスかな?日本神話詳しくないから間違ってるかもだけど」


"結構詳しくて草"

"アマテラスis誰?"

"やっぱスサノオときたらその辺が出んのね"


そんなチャットを見ながら俺は扉を押してみた。


するとその瞬間急に画質が悪くなった。


「え?」


"またモザイク?"

"なんか今日配信やばくね?"

"おま環じゃなかったのか"

"でも配信環境でもないと思うんだよな?"

"だよなぁ。こいつが使ってんの最高級レベルのだし"


で、俺は目の前のフロアにいるボスに目をやって見ると。


"なんか食われてね?"

"共食いしてて草"

"ガチで共食いしててワロタ"


そんなチャットを見てから俺はマップに目をやる。


残数

1/3


になってた。


なんか人型のが3体いるんだけど。

女っぽいのが残り2体を食べてた。


端末を見てみるとそいつら三体の名前が分かった。


イザナギ

イザナミ

アマテラス


ってなってて。

残ってんのがイザナミってやつっぽい。


「イザナミしか残ってないみたいだね」


ニーナの目にもそう見えてるらしくて。


"イザナミ「他2人始末しといたぞ」"

"ガチで始末されてて受けるwww"

"なんで食い殺されとるんや?あいつら"

"分かるやつおらんで"

"腹減ったから食ったんやろ(適当)"

"腹減ったんなら仕方ない"


グチッ!

ブチッ!


モンスターがモンスターの体を食いながら。

ゆっくりと俺たちに目を向けてくる。


"これなんてホラーゲーム?"

"ガチホラーなんだよなぁ"


あぁ、なんでモンスターがモンスター食ってるんだ?これ


本当に理解ができない。


「固有ダンジョンはクレイジーだね」


隣にいるニーナですら分かってなさそうだった。


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