第39話 耐久の始まり

【オノコロ攻略まで】


タイトルをこうして俺は前回中断したところから配信をスタートする。


"待ってた"

"お?攻略まで配信してくれんの?"

"攻略までってやる気出したなー"

"妹に呼ばれたからってやめんなよ?今日は"


そんなチャットを見ながら俺は歩いていく。


そうして一応チャットに答えておく。


「クリアスルマデオワラン」


もう決意は固めてきた。

俺はオノコロ島というダンジョンを攻略するまで今日はやめない。


そうして歩きながらダンジョンのスキャンをしていく。


そのスキャンの経過を配信にも見せる。


"お?なんか、マップが作られていくな"

"始めてくるダンジョンはたしか、こうやって自分でスキャンして、マップ作るんだっけ?"


「ソウダ」


ギルドが作成済みのマップがあったらそれを利用できたりするが、今回みたいな前人未到のエリアだと冒険者が自分で作る必要がある。


ギルドが作成済みのマップを使える、というのはギルドに所属する大きな意味のひとつになってる。


ギルドに所属しない完全フリーの人間だと毎回ダンジョンのマップを作成する必要がある。


だから、よっぽどの変人でない限りはギルドに所属するってわけ。


"すげぇ。雑魚モンスターの場所とかも記録されていくんだなー"

"お?ここボス部屋じゃね?"

"この右にあるのは宝箱の部屋じゃね?"


そのチャットで気付いた。


(たしかに、これ宝物のエリアか?)


その部屋は俺が今たっている場所からすぐのとこ。

時間にして3分くらい歩いたところかな?


"行ってみようぜー"

"宝箱ガチャしようよーガチャー"

"ガチャなの?これ?"

"中身は宝箱ごとに決まってるぞ"

"でもこの宝箱開けるの初めてだし中身分からないから実質ガチャだな"


チャットは開けることに賛成の意見が多いようだ。


(向かってみようか)


何が出ても話のタネくらいになるだろうしな。


そうして歩いていく。


宝箱の部屋の扉を開けて中に入ると。


真ん中に設置されてた。


"結構でかいよな〜"

"武器とか入ってんじゃね?"

"どっちかっていうと防具が欲しくね?武器は手に入ったし"

"そうだよなー"


何が出るかなー?

ワクワクしながら開けてみる。


「ギィィィィィィ!!!!」


ガバッ!

俺に噛み付いてこようとするミミック。


俺の頭を丸かじりするくらい開いた口。


バギャリッ!

ボロボロ……。


ミミックの歯が砕けて地面に落ちていく。


(さすがに歯の方が折れるよね)


「ギィィィィ!!!ギィィィィィィ!!!!」


その場に倒れてジタバタ暴れてるミミック。


ミミックが冒険者を食べるのを失敗したところ初めて見たよ。


"自滅しとるwww"

"鎧が固すぎたか?"

"こいつの鎧が役に立ってるとこ初めて見た"

"前までただのコスプレ道具だったからなーwww"


それにしても思うよ。


「ザンネン」


宝箱の中に宝のひとつやふたつくらいあるんだろうと思ってきたのにミミックだったし。


剣で斬って倒して次に行こうとしたそのとき。


"なんか落としたぞ?"

"ほんとだ。なんか落ちてる"


チャットを見て振り返るとそこには光るアイテムが落ちてた。


近寄って拾ってみると


【Bルートの鍵】


とあって。


不思議に思ってるとスぅぅぅぅっと、フロアの奥に扉が現れた。


(あれがBルートか?)


"どうすんだよこれ"

"AB両方いけよ?"

"そうだよなぁ。分身くらい作れるだろ?"


いや、さすがに無理だろ分身は、と思いながら、マップを見る。


"マップ的には後で合流できるっぽい?"

"どっちから言っても行き着くところは同じなわけか"


俺も同じようにマップは見えた。

うん、本来のルートであるAを行っても、新しくできたBを通っても結局行き着くところは同じらしい。


どうしようかって思ってたらニーナが口を開いた。


「私がBに行くよ」


"般若ちゃん一人で行くの?"

"ヤマタノオロチに負けてるしなぁ"

"自殺志願者なの?"

"さすがに、このゴリラから離れない方がいいと思うけど"


「でも、めんどくさいでしょ?二回も別のルートいくの」


まぁ、それはそうだけど。


ニーナの顔を見てると。


「私の事信じられない?」


信じられるかどうかで言えば信じられないけど、俺の気持ち的には、まぁ2回行くのがめんどくさい!


「タノメルカ?」

「うん。いざとなったら逃げたらいいでしょ?」


鍵を渡すと受け取るニーナ。

そのまま扉の方に走っていく。


「どっちが早く攻略できるか、勝負ね」


そう言って直ぐに扉開けて進んで行ったニーナ。


公平性とかは考えてないらしい。


まぁ、俺は別に競うつもりなんてないしいいけど。


そう思いながら俺はAルートの扉の前に来た。


"何があるんだろうなぁ"

"あくいけよ"


扉を開けて先に進む。


先は少し明るい道になっていた。


それを確認しながらマップを見ていく。

今も現在進行形でマップは更新されていて。


そこで一つ点が増えた。


雑魚モンスターは黒い点で表示されるんだけど、増えたのは赤い点。

それだけ。


"ボス?"

"ボスばっかだな!"

"まぁ、こいつにかかればボスすらも雑魚なんですけどね"

"ボスが秒で死んでいくの見てたら可哀想に思えてくるよね"


チャットとマップを見ながら進んでいく。

結構入り組んでる地形のようだ。


「メンドウダカラムシスル(面倒だから無視する)」


ボスがなんなのかはまだ分からないし、このフロアは入り組んでるお陰でボスをやり過ごすのは簡単そうなので無視して進めるだろう。


それに雑魚モンスターもいない。となると無視が1番いい気がする。


そうして進んでいると2本の分かれ道に差し掛かる。


マップに目をやる。


(ボスは左の道から、きてるのか)


じゃあ俺は右を進む。


これで遭遇せずに進めるはずだ。


"こいつ戦う気ねぇwww"

"スルーしとるwww"

"やる気出せよwwwモンスターくんが待ってるぞwww"


そんなチャットを見ながら進んで考える。


(そういえばニーナの中での俺へのイメージとかってどうなってるんだろうな?)


たしか改造人間とかを疑われて派遣されたらしいけど。


大丈夫、だよね?


そう思いながら先に進む事にしたけど。


(ん?)


配信の画面が荒ぶり出した。


(電波が悪くなった……?)


元々海のど真ん中にあるダンジョンだった。

更に奥の方に来てるのだから、電波が不安定になる事もあるだろうな。


"今配信荒ぶってたぞ"

"お、戻ったか"


と、チャットも前のように戻ってきた。

一時的に電波が掴めなかっただけだろう。


そう思いながら先に進む。



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