第31話 見ちゃいけないもの?

「妹さんがいるなら怖いよねぇ、今の状況は」


さっそくギルマスに頼み込んで家を借りさせてもらうことにした。

今までならクサいものにはフタをして見ないふりで終わらせてたけど、身バレした今はさすがに怖すぎる。


ので、ギルドが自慢してる最強セキュリティとかっていうやつに頼ることにした。

今日から住む家を変える。


「ギルドマスターってずっとギルドにいるイメージあるけど、出てきていいの?」

「公認配信者の世話するのもギルマスの仕事だから問題ないよ〜。てか、さすがにギルマスも家くらいは帰るからね?」


ギルマスと歩くその道中でコンビニの前でひとりの女の子を見つけた。


「悪いね。ユカ。やらかしたよ。許して」


今からギルドマスターが暮らしてるらしいマンションに向かうんだけど、一緒に向かおうってことで、こうしてマンションまでの道にあるコンビニまで来てもらったわけだ。


「いえ」


ふるふる。

首を横に振ってギルマスに目を向けるユカ。


「本日からよろしくお願いします」

「礼儀正しい子だねー。かわいー」


そう言いながら歩いていくと、


「ここだよ。このマンション」


背の高いマンションの中に入っていこうとする天羽。


エントランスに繋がる扉の横にあるスキャンを起動させてた。

緑色の光が天羽の体をスキャン。


「生体認証?」

「うん。びっくりした?これが最新のギルドマンションだよ。えへん」


あんたが胸を張るところなのか?とも思ったけど、たしかにすげぇよなぁ。


しかも。

チラッ。


扉の横に小さな詰所?みたいなのがある。


透明な窓で囲まれてて中が見えるんだけど。


中には


(うわー。こえぇおっちゃんたち)


スキンヘッドにサングラスでムキムキのいかつい姿のおっちゃんが数人いた。


ギロッ。

俺が見てるとその目を向けられた。


(こえーけど、この人たちが24時間マンションの見張りしてくれてるっぽい?)


なるほど。

たしかに最強のセキュリティだと思えるね。


これ、ひょっとして家を特定されてもなんの問題もないのでは?


マンションの中に入ってエレベーターを待ってると。


チーン。

すぐに来たので乗りこんで移動していく。


9階まで上がって廊下を歩いて、ひとつの部屋の前で止まる。


「ここ、使ってよ。私の部屋の横だから。なんかあったら呼んでよ」


スっ。

チャリン。


部屋の鍵を渡してきた。

それからマンションの説明書みたいなのも一緒に。


「助かるよ」

「気にしないでよ。さて、じゃあ私も寝るかなー」


バタン。

扉を閉めて家の中に入った。


ユカと完全にふたりきりになった。


チラッ。

ユカの顔を見てみると、あっちも俺の事見てた。

で、ふと気になる。


今まで気にしたことないけどさ。

ユカって俺の配信見たりしてたのだろうか?


聞きたくなったけど、やめとくことにした。


それより、やることがあるな。


ピッ。

リビングにあった端末に触れてみる。


「住民登録を行います。これをすることでマンションのゲートを生体認証で開いたりできます」


この端末を使って俺達は最低限の登録をした。

もうやることは、ないか。


ベッドはたしか用意してある、とか言ってた気がするな。


「先に寝かしてもらうわ」

「は、はい。おやすみなさい」


部屋はいくつかあって、適当な部屋に入っていく。

とりあえず寝たいな、そう思ったとき。


『えぇぇぇぇぇ?!!!ギルドに帰ってこい?!!!やだぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!!寝るのぉぉぉぉ!!!!』


隣から壁を貫通してバカでかい声が聞こえてきた。


寝ようかと思ったけど、気になることがひとつ。


おそるおそる自分のチャンネルを見てみた。


チャンネル登録者数は。


200万を超えていた。


これさぁ。


絶対。


バズったってやつだよなぁぁ!!!!!


しかも。


今もどんどんチャンネル登録者は増えてるし!




翌日。

学校を休んだ。


問題を先延ばしにしてるだけとは思うけど。

今日ばっかりは休みたかった。


ユカは学校に行ったけど。

普通に生活したいとか、なんとかって言って。

強いね、あの子は。


「はぁ」


昨日、ユカが必要最低限のものをアイテムポーチにいれて持って来てくれていたので、その荷物を確認。


フード付きの服。

と、サングラスもあるな。

俺の状況をよく分かってるらしい。


服を着て深くフードを被った。


(まだ荷物少ないけど、また夜にでも取りに戻ろうか)


前の家を引き払う手続きとかは全部ギルドがやってくれるって言ってた。


そんなことを思い出しながら外に出る。


昨日天羽にはもう一度ギルドに来てくれ、と頼まれてるので向かう。


気のせいだとは思うけど。


(見られてないよなぁ?)


外に出ると、全員に見られてる気がする。

気のせいだろうけどさ。


(ふぅ)


なんとかギルドまで来ることが出来た。


カウンターに向かうとギルマスを呼び出してもらう。


「まだ、昼だけど、学校は、って行けるわけないか」


自分で答えを出しつつ俺をカウンターの中にいれてくれる。


「また昨日の部屋で、ね」


案内されて昨日の部屋に入ると、そこでやっとフードを外した。

机を間に挟んで向かい合って座った。


「大変そうだね」


そう言われたけど天羽も寝てないのか目の下のクマがすごいことになってた。


それから本題を切り出してくる。


「昨日、あの後だけどまた世界冒険者機関のWBOがね、会談してたのよ。それだけ世界が君に注目してる」


それ関係で寝てないのかな?


「それで新ランクが解放されることになったわけよ」

「そのランクってのは?」

「SSランク。最近はそのぉ、Sランクの中でも実力差が出てきたからさ。その事も考えてSSランクを新設することにしたってさ」


更に続けていく天羽。


「もう分かると思うけど、更新のためにきてもらったよ。カード」


頷いてギルドカードを取りだした。


スっ。

机の上出すと天羽は受け取った。


ピー。

ガガーッ。


机の上にあった機械に通して


「はい」


返してきた。


「おーっ」


ランクのところを見てみると、たしかにS→SSとなっていた。


限界突破だ!限界突破!


「いやぁ、すごいよねぇ。私のギルド利用してくれてる子がさ。新ランク設立してくれるなんてすごいよね!鼻が高いよね!」


ギルドカードをなくさないように、しまいながら俺も口を開いた。


「ギルマス?」

「どしたの?」

「すっごいクマだけど寝てるの?」

「寝てない!だから一時間くらい寝ていい?!君がこの部屋から出ていかなかったら、みんな気付かないからさ。ちょっとゆっくりしててよ」


バタン。

ぐがーっ。


机に突っ伏して寝始めた。


「せめて返事くらい聞いたらどうなんだよ」


まぁ。俺もやることないし、一時間くらいはいいか。


(てか暇つぶしのひとつくらい用意してくれよな?)


そう思いながら普段あんまり入ることないこの部屋を少し散策してみることにした。


てか冒険者でこの部屋入れるやつ、なかなかいないんじゃないか?


んで、そうして歩いてると。


「……という……けで……」


小さく声が聞こえてきた。


ん?なんの声だ?


(机から?)


そう思ってギルマスの突っ伏してる机の方に目をやると、タブレットがあった。


さっきまで俺のいた場所からは見えない場所にあったタブレットが音を鳴らしてるのに気付いた。


机の上に物を積みすぎててまったく見えない場所。


そこには、昨日見せられたWBOとかいう機関の本部の映像が流れてる。

映ってるのは、昨日の局長、と顔が見えない人物。


(見ちゃダメかな?)


とか思いつつちょっと気になったので見てみる。


見ちゃいけないものほど見たくなるよね?


『とても急な話で悪いとは思ってるが、イツキ サイジョーの調査の件。君に任せていいか?留学の手続きは既に終わっている』


局長が続ける。


『頼めるか?ジョニー?君は彼の配信を見てコミュニケーションも取ったのだろう?』


俺の配信を見てたジョニーって、?


『イエス。私にお任せを。日本に行きましょう』


ジョニーって一人称【私】だったっけ?

自動翻訳のせいか?


そもそも調査ってなに?

情報が多すぎるよー。

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