第21話 ヤベェやつばっかだ

ボス部屋に入る。


「ガァァァァアァァァァア!!!!!」


早速キメラがいたので。

斬撃を飛ばした。


ザン!

ズルっ。


胴体で真っ二つに分かれるキメラの体。


今の俺は機嫌が悪い。

キメラには悪いが、もうこれで終わりだ。


"え?"

"なにが起きた?"

"誰か見えたやつ解説してくれ"

"速すぎてなんも見えんかったわ……"

"あーっ。もう1回やってくれ"


特に説明することもなくダンジョンを奥に進んでいく。


"ドラゴンのせいで怒ってるよこの人"

"NGワード決定だなドラゴンは。まぁしゃあないけど"

"なぁ、さっきからナイトのやつチャット欄ガン見してない?"

"もうドラゴンって単語が禁句なのかもしれない"

"目が離せなくなってますやん"

"トラウマになってるなぁこれ"

"そりゃそうだろ。実名バレたんだし"


黙って歩いているとチャットがどんどん更新されていく。

そしてそんな中目立つコメントが。



¥10,000円

ユラッチから離れろ。

これは警告だ。

西条 樹。



(なんかいるんだけど……だから顔バレ本名バレ嫌だったんだよぉ!)



"うわっ。やべぇやついる"

"わざわざスルーできないようにしてんのがマジっぽい"

"ユラッチの男ファンはやべぇの多いからな"

"ユラッチとの初コラボの時ソッコーでナイトのアンチスレできたからな"

"草"

"コウタ先生みたいなやつ大量にいたよなぁ、あそこ"

"この強さ見せられて壊れたラジオみたいに「過大評価」だからな"

"えぇ……"


(離れろって言われても当のユラッチがベタベタなんだよ。絶対離れてくれないだろうけど)


そもそも俺は別にユラッチとの距離を特段詰めにいってないのに向こうが詰めてくるからさぁ。


やばそうなコメントなので拾わずにスルーすることにした。


"流石にスルーすんのか"

"どう答えても発狂するだろうし正解だろ"

"アンチスレまで出来てるんなら、こういうのはスルー安定だろうな"

"わざわざアンチスレ立てるってどんだけ嫌ってんだよな"

"嫉妬やろなぁ。高校生でこんだけ強くてユラッチとも仲良いなんて知ったらそりゃ嫉妬もしたくなる。てか嫉妬するのが普通だろ"

"そう言えばナイトが表に出るようになってから、冒険者辞める人が増えたらしいな。多分心折られてる人多いんだろうな"

"まぁ実際こんなの見せられたら心折れるわw俺もやめようか考えたもんw"


特にチャットには答えることもなく、次のボス部屋の前に来た。


"ここ難所なんだよな?"

"Bランク昇格試験に使われるルートだから難所だよ。みんなのトラウマ製造機"

"俺もBランク昇格試験で10回くらい落ちた。普通に難所"

"これだけは普通に落ちるからなwまじでw"

"ソロでの攻略なんて普通できないようになってる。ここまでソロで来た奴にパーティを組むことの大事さを教える意味合いの強い試験ってギルドも発表してるくらいなのに"

"えぇ……"

"魔法の必須属性が3つくらいあってそれぞれの敵にあった魔法を使い分けていきましょっていう試験なんだが。さっきのキメラなら水属性、みたいにね"


ギィッ。

扉を開けた。


中にいたのは


"出たよ。スケルトンキング"

"大量の雑魚を呼び出してくるボスだな"

"どうするんだろ?うじゃうじゃいるけど。スケルトンが100体くらい?"


俺は剣を抜いてそのままスケルトンの方に歩いていく。


「カタカタカタ」


俺に気付いたスケルトンがこちらに向かって走ってきた。


ガッ。

スケルトンの頭を掴んだ。


ブン!

別のスケルトンに投げつける。


2体ともバラバラに崩れた。


"どんな腕力してんだよw"

"これ、普通の冒険者でもできる?"

"【注意】ナイトは特別な訓練を受けています。真似しないでください"


「カタカタ」


無数のスケルトンが近付いてくる。


それを、ブン!

剣を振った時に出る風圧で吹き飛ばす。


"え?なにいまの"

"風圧?w"

"え?風圧であんなんできるの?"

"無理に決まってんじゃん。ナイトが特別な訓練受けてるだけ"


雑魚共はこれで俺の周りから消え失せた。


「ヨォ」


目の前にはスケルトンキングの姿。


こいつは他のスケルトンと違い体長が10メートルくらいある。


"頭が弱点だけど、どうするんだろ"


こうする。

心の中で答えて。


「ジャアナ」


斬撃を飛ばした。

ザン!


高いところにあったスケルトンキングの首をはね飛ばした。

次の階層への扉が開く。


"ここほんとに難所?"

"こいつがおかしいだけ。今のも普通は頭まで攻撃届かないから魔法必須なんよ"

"こんなサクサクならそりゃ覚えてないよなぁここ"


次のボス部屋、ドラゴンの部屋に向かって階段を降りていく。


"冒険者エアプなんだけど、ここまで何分なん?"

"1時間"

"普通はどれくらいかかるん?"

"ボス戦だけでも5時間くらい"

"え?"

"こいつは住んでる世界が違うんだよ。キメラもさっきのボスも数分で処理できるような敵じゃない"


俺が進んで、次のドラゴン部屋の前に着いた瞬間だった。



¥10,000円

ナイト。

急ぎだ。話を聞いて欲しい



「ナニ?」


無難そうな話なので反応を示す。


"やっぱ怒ってるな"

"ちょっと声の感じがダルそうだもんな"

"ドラゴンくんは罪深い"


¥10,000円

良かった。

あんまり表立って話せないんだ。

DMにメッセージ送っていいかな?

あと、できれば配信を止めて欲しい



少し考える。

先程ユラッチのファンが暴れたばかりだな。

それから考えてロクなことにならない気もする。


「ワルイガデキナイ」


殺害予告とかされても困るしな。


これで話は終わりだと思っていたが。



¥10,000円

本当に中断してくれないか?

急ぎなんだ。



首を横に振る。

だから、できないって。



¥10,000円

そうか、ならば。明日迎えに行く。

少々手荒になるだろうが、許してくれ。

こちらも手段を選んでいられない。



"なんだなんだ?"

"迎えに行くってどういうことだ?"

"またやべぇやつか?"

"なんでこんなにヤベェやつばっか来るんだこの配信は"


俺はそのままドラゴンの部屋に向かおうとしたが


リカポン:ナイト。ごめん、配信はここまでにしよう


リカポンもコメントを送ってきていた。

いつものキャラ付けの変な語尾はなしで。


(なんかあるのか?)



"え?ここでやめんの?"

"リカポンってドSだな。もうナイトの方はドラゴンやる気満々なのに。やめろって"



リカポン:私の方は全然攻略できてないし、とりあえずやめにしない?私は配信終わったよ



なんで急にって思ったけど。


(リカポンがやめた以上俺だけ続けるのも無駄だよなぁ)


「ヤメニスル」


"まぁ、何があったのか分かんないけど、色々あるしなナイトも"

"実名ネタとかな"

"やっぱそれ関係で今は色々あるんだろうな"

"同じ学校だけど名前出た人はすごい言い寄られてた今日。しかも否定してるし"

"否定してんのか?ワンチャン人違いか?"

"かも。とにかく名前出すのはよくないと思うんだよなぁ"

"まぁ、ナイトが顔隠してる意味考えてりゃ。そりゃあな"

"ドラゴン「ところで、俺は助かったっぽい?」"

"配信外で活動しなきゃ助かるんじゃね?良かったなw"


今日は比較的チャット欄は落ち着いてるらしい。

そのことにホッとしながら、配信を終了する。


んで、動画サイトのホームが目に入った。


(ん?急上昇動画?)


なになに。

見てみたらニュースの動画らしい。


見出しにはこう書いてあった。


【Sランク冒険者の山野さんパーティが、最近発見されたダンジョンの深奥エリアに向かったっきり行方不明。なにか情報をお持ちの方は御提供ください】


どうやら冒険者が行方不明?になってるらしいけど。


(まぁ、俺には関係のない話だな)


俺はドラゴンのいる部屋を振り向いて呟いた。


「次の配信でじっくりぶっ殺してやるから震えて眠ることだな」


ふふふ。

小さく笑って俺はこのダンジョンを後にすることにした。

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