第18話 うわああああああああああ!!!!!

ドラゴンは着地するとトカゲのように4本の足を地面に付けて威嚇していた。


「ゴァァァァァァァァァア!!!!!」


ドラゴンが口にエネルギーを溜め始めた。

以前に見た事があるな。


これは予備動作で。


この後ブレスを吐いてくるのだ。


"ブレスだ!"

"避けろよ!ナイト!"


チャットに言われるまでもない。

俺は回避行動を取った。


だけど。


「ゴアァァァァァァァァ!」


ジュっ!

ドロッ!


避けきれずに当たってしまった部位の鎧が溶けた。


(今のは避けれるタイミングだったはずだけど、強化個体だから予備動作が短い?)


"これ、まじでやばくね?"

"ナイトが初めて被弾したんじゃないのか?これ"

"直撃したらやばそうだな、あれ"

"冷静に逃げた方がよくないか?これ"

"ナイト後ろを見ろ"


チラッ。

後ろを見たが降りてきた道は封鎖されていた。


まぁ、そりゃそうか。


"逃がす気ないのか"

"ダンジョン抜けのアイテムないのか?"

"てかギルドに通報しろ"

"流石に通報しても許されるよなこれ"

"救援ないとキツイだろこれ"

"通報したわ。これは流石にやばそうだし"


そんなチャットを見ている間もどんどんブレスを放ってくるドラゴン。


そのドラゴンのブレスを全て回避する。

強化個体でもしょせんはドラゴン、か。


勝てそうだな。


「ウン」


頷いた。


"なんだ?そのウンってのは"

"自分の運命察したんだろ"


チャットが先程からずっと盛り上がってるけど。

今度は俺が反撃する番だ。


タッ。

ドラゴンに向かって駆け出して。


剣から出る斬撃をドラゴンに向かって飛ばす。


スパン!

ザン!


「ゴアッ!」


ドラゴンの前足が吹き飛ぶ。


グラッ。

ドラゴンの重心がぐらついていた。


"え?何が起きた?"

"左の前足がもがれてる"

"は?"

"ドラゴンの皮膚って鋼鉄より硬いって言われてんのに……まじかよ"

"ありえねー"


そして。

次にもう一度。


ザン!


次は右足を切り落とした。


"右もなくなた"

"は?"

"え?何が起きてんの?これ"

"ナイトが攻撃してるんだろうけど、明らかにリーチおかしくないか?さっきから"

"いや、ほんとそれ。剣のリーチ考えろよおかしいだろ"

"こいつ、斬撃飛ばしてないか?"

"そんなこと出来るのか?"

"出来るんだろ?じゃないと説明が"

"てか亜空間斬撃だろこれ"

"いろいろおかしいんだよこいつ"


「ギャウ!」


地上にいると不利だと思ったのか空を飛ぼうとするドラゴンだったけど。


ザン!

ザン!


俺の剣から飛んだ斬撃が左右の翼どちらも切断する。


グラァッ。

飛べなくなったドラゴンは落ちてきた。


"やべぇ!今度は翼切断?!"

"それよりも、斬撃飛ばす攻撃なんて初めて見た!"


チャットを見つつ、ドラゴンに近付いて口を開く。

今のところクイズ通りになっている。


「アサハヨンホン。ヒルハニホン」

「ゴァアァァアァァア!!!!!!」


最後の足掻きで尻尾を槍のようにして突き出してくるドラゴン。

それを避けて。


グサッ。


ドラゴンの胸に剣を突き刺す。


「ゴアァァァ……」


頑張って尻尾を杖みたいにして立とうとするドラゴンに告げる。

これで夜は


「サン」


それで、答えは。


オマエ。


スっ。

ドラゴンの胸から剣を引き抜くと。


グラッ。

ドサッ。

その場に倒れるドラゴン。


"……"

"……"

"……"


チャットが更新されなくなったのを見て口を開く。


「カテタ」


"やべぇこいつ……"

"ドラゴンをソロ討伐?"

"しかもさっきの質問の答え用意してたぞ?"

"『オマエ』←これが正解だった件"

"見とるかー?ダンジョン?ナイトの答えは正解だったぞー"

"ダンジョン「えぇ……」"

"ダンジョン「答えねじ曲げないで」"


そんなチャットを見ながら俺はこの場を更に進もうとしたその時だった。


「ゴアッ!」


後ろからドラゴンの声。


"まだ生きてるぞ!"

"ナイト!避けろ!"


コメントに気付いた時には反応が遅れていた。

俺の眼前にドラゴンの尻尾の先端が近付いていた。


「ガッ!」


なんとか直撃はしなかったけど、兜の端っこに当たっていた。

視界が少し霞む。

やばい……甘く見ていたなドラゴンのこと。

そういえば、強化個体だもんな。


まだ悪あがきするなんて。

しかし


「……」


ドォォォォォン。

最後の力を振り絞っていたのかドラゴンはその場に倒れたが。


(油断も隙もないな。最後の悪あがきだなんて)


一応ドラゴンの心臓部分に剣を突き立てておく。

流石に確実に殺しておこう。

もう反撃を喰らわないように。


んで、コメント欄を見る。


"おい、見たか?"

"ちゃんとスクショしとけ"

"この配信いつ消えるか分からんぞ"

"むしろ今中止されてもまったく疑問に思わんしな"

"こいつ気付いてないっぽい。マジでスクショチャンスだぞこれ"

"終わったらほぼ確実に非公開だろうな"


そんなよく分からないチャットが並ぶ中目立つコメントが。



¥10,000円

少ないですがどうぞ。

すごくタイプの雰囲気です。



スパチャか。


「カンシャスル」


そう呟いて違和感。

なんだ、今の声は。


いつも装備をしているから少しくぐもったような声になるのに。

今日はクリアだ。


まさか……。


自分の顔をペタペタ触る。

いつもはカブトの冷たい感触なのに、ぬくい……?


(素顔だ!これ!)


なんで?!

キョロキョロ。

周りを見ると少し離れた所に。


カブトが落ちていた。


「うわっ……」


やった。

やらかした。


さっきドラゴンの攻撃食らった時に頭からすっぽ抜けたんだ。


そうとしか考えられない。

やばいやばいやばい。


マジでやばい。

え、どうしたらいいんだろう。


そう思っていた時チラッとチャット欄が見えた。

いや、見えてしまった。


"光坂高校2年の西条 樹"


それだけの短いコメントなのに、今までのどんなコメントよりもはっきりと見えてしまった。

すぐに他のチャットで流されたにも関わらず。


"え?本名?"

"えぇ……顔と名前一致するって。同じ高校のやつ?モラルどうなってんの……?"

"で、でも前に出てた坂本 コウタってのは誰?"

"いや、分かんね。てかナイトなんとか言えよ?ヤバいんじゃないのか?"


「……」


とにかく、急いで配信を中断した。

やばい。バレたかもしれない。


心臓が爆発しそうなくらい脈打っていた。

やばい。身バレした。


高島の末路は知ってる。

迷惑行為なんてしてないはずだけど俺はどうなるんだろう?


やばい。


やばいやばいやばいやばいやばい。


ほんとにやばいかもしれない。



家に帰る道中ユラッチがまた大量にメッセージを送ってきていたが、確認する気になれなかった。


その途中で一応自分の配信を見返した。

くっきりと顔が写っている。


「マジでやばい……同接7万だろ?7万人が俺の顔を見たんだよな?」


どうなってしまうんだろう……。

そんなことを思いながら。


「ただいま」


モヤモヤする気持ちの中家に帰るとユカが出迎えてくれた。


「おかえりなさい兄さん」

「ん、あぁ」


そう言ってユカの横をすれ違った時。


「ねぇ、兄さん」

「なに?」

「私の事好きですか?」

「何の話?」

「いえ」


そう言って俺の荷物を持ってくれるユカ。

そうしながら聞いてくる。


「その頭の怪我はどうしたのですか?」

「階段から落ちちゃってさ」


苦しいか?とも思ったけど俺の手を引くユカ。

そのままソファに座らされて。


「動かないでくださいね」


そのまま俺の頭に包帯を巻いていくユカ。


「ありがと助かったよ」

「今日はもうお休みになった方がいいかと」


そう言われたし俺は頷いて立ち上がると自分の部屋に向かうことにした。


「そうだね。もうこのまま休ませてもらうよ」

「はい」


頷いてユカが見送ってくれるのだが。

部屋に入る直前。


「おやすみ」


そう言うために振り返ったのだが


「おやすみなさい」


最後に見たユカの顔は少しニヤけているように見えた。

気のせいか?


うん。

気のせいだと思うことにしよう。


いや、そんなことより、だ。

顔が。


ばれたああああああああああああ!!!!!!!

うわあああああああああああああああ!!!!!!


どうなっちまうんだこれ?!!!!!!!

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