第17話 ドラゴン

放課後。

昨日のダンジョンに戻ってきて攻略を再開する。


早速由良さんにもらった高級端末ボニターで配信していくと。


"なにこれ?モザイクじゃなくなってる。ダンジョンの壁の傷とかも見えるな"

"何回かスパチャされてたし環境整えたんじゃないかなぁ?"

"そもそもSランクだと通信の安定性とかも考えて高級端末必須なとこあんのにギルド支給の低スペ端末でやってたことがおかしいんだよなぁ"

"端末もダンジョン攻略の難易度にモロ影響するしな。やっとチュートリアル終わった"

"【速報】ナイトさんSランクでようやうチュートリアル終了"


今どれくらいの人が見ているのか気になって同接を確認してみる。

3万人、か。


俺はこう思う。

なんでこんな無名の俺なんかの配信をこんなに見る人がいるんだろうなぁ。


そう思いながら配信を続けていると。


¥1000円

質問です。大学卒業して冒険者になった者です。

大学はそこそこいい成績で卒業したはずなのですが、パーティに中々入れません。

なにかがダメなのか入団試験で落とされてしまいます。

ナイトさん的にこれだけはNGみたいな条件あったら教えてください


「パーティハイッタコトナイカラシラナイ(パーティ入ったことないから知らない)」


そう答えると


"パーティ入ったことない?!"

"は?"

"え?ずっとソロってこと?"

"流石に盛ってるだろ"

"パーティ必須のダンジョンとかなかったっけ?"

"あるな。火とか水とか各属性揃えないと突破がきついダンジョンがある。しかもそれがBランクの昇格クエストになってるから、実質パーティ組むの必須だな"

"どうやって突破したんだ?こいつ"


そんなチャットが流れてくる。

どこのことを言っているのかイマイチ分からないな。

俺にとって正直難所と感じるところはなかったからだ。


"ナイトはBランク昇格試験まじでどうやって突破したんだ?パーティ必須って言われてるんだが"

"それだそれ。覚えてるわ。リカポンもキツかったって言ってたし"

"みんなパーティ組んで突破してたよなぁ、あそこ"

"相手が嫌いなやつでもその場だけ力合わせるよなぁw"


どうやらそういう難所があったらしいけど、記憶に残ってないな。


「オボエテナイ(覚えてない)」


"質問者かわいそう。こいつに質問するべきじゃなかったな"

"こいつ規格外だからな。多分一般的な難所が全部難所じゃない"

"Bランク昇格試験めちゃキツかったのに記憶にないって……凹むわぁ"

"でも現状日本最強だろ?こいつ。それくらい言ってくれた方がいいわw"

"言われてみればそうwそれくらいぶっ飛んでてくれた方がいいなw"


多分望んでいたような答えじゃないと思うけど。

パーティは入ったことないし作ったこともないので、ほんとうに答えようがない。


だと言うのに。



¥1000

で、でも流石に誰かと組んだことくらいありますよね?

こいつとは組みたくないなぁ、みたいなのありましたか?



との質問が続いた。

なくもないけど。

この前のユラッチとのコラボもそんな感じだったし。


そうだなぁ。


「ノーマナーイガイハキニシナイ(ノーマナー以外は気にしない)」


高島とかみたいな迷惑行為しまくるやつじゃなかったら誰でもいいと思ってる。


少なくとも同行するやつに実力なんて求めてない。

俺が全部ぶっ倒せば問題ないんだから。

だから、いちいち面接みたいな事もしないし、過去のことも気にしない。


"おぉw流石最強の冒険者"

"言うこと違うよなぁ。あれこれ募集要項付ける冒険者は見習うべき"

"こいつ見習うってゴリラになれってことか?"

"全冒険者がゴリラになるのか……"


そこで質問者は納得したようだった。



¥3000

ありがとうございました。

ナイトさんはいい方ですね。

実力者の思考回路って感じで流石だなって思いました。

自分もこれから頑張ります。

少ないですが、活動の足しにしてください。



もう質問はこれで終わりらしい。

さてと。

そろそろ先日の続きといきますか。


俺は目の前にある下り階段に目を戻す。


"†最強冒険者出陣†"

"ダンジョン君今頃震えてそう"

"ダンジョン「来るな!来るな!」"

"ナイト「お前が来い」"


そんなチャット流れる中俺は階段に踏み出した。


ガシャッ。

ガシャッ。


鎧の音を鳴らしながら薄暗い階段を降りていく。


"鎧に薄暗い螺旋階段、これもうゲームだろ"

"死にゲー始まりそう"

"(敵にとって)死にゲー"

"ちげぇねぇ"


階段を降り終わった。


すると目の前には大きくパックリ開いた谷があったが、それを渡るための橋も見えた。

今は上がってるけど。

何かしたら降りてくるのかな?


これじゃ進めないが。


とりあえず。

グルーっ。


周りを見てみる。

近くに台座があった。


「ナンダコレ(なんだこれ)」


"謎解き要素っぽい?"

"ナイトって頭良くなさそうだから無理そう"

"脳筋だからなこいつ"


俺はその台座に目を落とした。


その台座には説明があった。


『クイズに正解すれば先に進むための道ができます。失敗すればペナルティ、門番が解き放たれます』


「フーン」


正解すればあの橋が降りるってことか。


『朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足で歩くものはなーんだ』


すると。

ブーッブーッ。


近くにあったモニターに数字が表示された。


30秒。

29秒。

28秒。


数字がドンドン減っていく。


「セイゲンジカン(制限時間)?!」


"あっ……(察し)"

"頑張れナイト"


人間だったっけ?

答え。


でも素直に答えていいんだろうか?これ。


俺がそんなことで悩んでいるとチャット欄は答えで溢れていくが。


俺は思った。


(マジメに答えてもつまんないよな?これ)


楽な道。

そんなものを歩いても視聴者はつまんないだろ。


答えを教えてやるよ。


「オマエ」

『不正解』


ヒューッ。

天井から何かが降りてきた。


『不正解によりエネミー。ドラゴンが出現します』


「ゴァァァァアァァァアァア!!!!!!」


"ドラゴン?!初めて見た"

"やべぇの出たー!!!!"

"聞いてないんですけどーーー"

"今度こそ終わったなこいつ"

"【悲報】ナイトチャンネル数日で閉鎖"


チャットの流れが加速していく。


チラッ。

同接に目をやると。


先程3万人だった同接は7万人になっていた。


"初見です"

"ドラゴンってまじですか?"

"うわーっ。ドラゴン初めて見たー!!!"

"ドラゴンって倒せんの?!"

"通常個体でSランク冒険者10人くらいいれば倒せます。それ未満の人数だと撤退が一般的です(白目)"


"流石に逃げた方がいいんじゃないのか?!ナイト?!聞いてるか?!"

"つかこれペナルティで出たドラゴンだから強化個体とかだろ?マジで逃げた方がいい"

"ナイトチャンネル作成から数日で閉鎖してしまうのか……"


そんな意見をまとめるようにユラッチも見える。


ユラッチ:逃げてーナイトー( ◜ω◝و(و 死んじゃいやーん(/ω\*)


"緊張感のカケラも無いクソみてェなコメント"

"草"


チャット欄からドラゴンに目を戻す。

さて、どうしてくれようか。


ドラゴンとは戦ったこともあるけど、たしかにこの個体は強化個体っぽい。

気合いを入れよう。

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