第15話 配信環境は整えないとだめ?
翌日。
学園が終わって俺はまたダンジョンに潜り配信することにした。
とにかく、数をこなして配信慣れしないとな。
"やっぱナイトくんの配信を……最高やな!"
早速チャットが流れてくる。
んで、気になるチャットがあった。
"おい、シスコン騎士。今日は途中でやめたりしないだろうな?"
「ハナシハシテキタ(話はしてきた)」
ユカには寂しい思いをさせるかもしれないが、仕方ない。
今日はもう割り切ってきている。
ダンジョンに入る前の最終調整をしていたが。
"しっかしこのシスコンの配信は画質悪いよな"
"前にユラッチとコラボしてた時の画質見比べたらやばかったな。このシスコンの配信モザイクやもん"
"シスコンがえち過ぎて自動でモザイクかかってるのか?最近のデバイスはすごいな"
"でもこのモザイク画質のおかげでグロテスクなシーンがマシになるんだ"
"てことは、このモザイク画質はワザとだったのか?!"
「ソンナニワルイ?(そんなに悪い?)」
自分の配信を別の窓で見ることにした。
スマホと呼ばれてた旧世代のデバイスはスクリーンがひとつしかなかったが、今は空中投影式なので増やそうと思えばスクリーンをいくらでも増やせる。
んで、見てみたら
「ヤバ」
"だろ?"
"やっぱりこの画質わざとじゃないのか"
"回線どこ使ってんの?"
"この回線の悪さ、どうせギルドの回線だろ"
"あー、じゃあ端末もギルドのやつか?"
"高島のカスでも結構いい機材使ってたのによっぽど金ないんだなこのシスコン"
"そりゃ稼いだ金全部妹に貢いでるからだろ"
"このゴリラに貢がせる妹ってやっぱ【ゴリラ】なんじゃないのか?"
"中の人召喚しようとすんのやめろ"
"妹はゴリラ妹はゴリラ妹はゴリラ"
"やめーやw"
俺は学んだ。
昨日ゴリラ呼ばわりして思わず怒ってしまったけど、もうそんな軽い挑発には乗らないのだ。
それにしてもこのモザイク画質はどうにかした方がいいのだろうか?とか思うけど。
"でもこのモザイク画質一周回って癖になるんだよな"
"分かる。他の配信者はグロイとことかも全部鮮明に映すからなぁ"
"っぱシスコンモザイク配信よ"
チャット欄はそうでもなさそう?
"俺はこれはこれで味があると思うがなぁ"
そんな流れになりつつあったけど
「ガシツハモウスコシカンガエテミヨウ(画質はもう少し考えてみよう)」
俺が今配信に使っているものはギルド登録した時にギルドが支給してくれためちゃくちゃ安い端末だ。
それと回線の方もギルドのもの。
冒険者なら誰でも格安で契約できるものだから品質はお察しだが。
モザイク画質なのは多分それのせいだろう。
(回線とか端末は用意した方がいいかもなぁ)
なんてことを考えていたら
ユラッチ:おはよう。ナイトー( ⊃⸝⸝• · •̥⸝⸝)⊃配信すっごいモザイクでナイトがあんまり見えないよ( ¯꒳¯̥̥ )︎
ユラッチがコメントしてきていた。
それを見てリスナー達が驚いていた。
"ユラッチきてて草。本物か?これ"
"登録者200万。本物だな"
"モザイク画質にユラッチもご立腹じゃん"
そんなチャット欄を流し見しつつ
「ヨシ」
準備を終えてダンジョンに侵入していく。
カメラの位置は俺の後方に置く。
このカメラはドローンのように空中を飛ばして好きな位置から撮影させることができるのだ。
"ナイト禿げてるぞ"
「え?」
"鎧で隠れてるのに見えるわけないだろ"
"こいつほんと面白いな"
冗談で書かれたことを真に受けて面白がられたらしい。
はぁ、びっくりしたわ。
マジで禿げてるのかと思った。
そう思いながら歩いていると
ユラッチ:この視点ゲームみたいですっごくワクワクするなぁ('ω')ノ
とチャットされた。
まぁ、それを狙ってこの位置にしてみてるんだけど俺の目論見通り、というやつなのだろう。
俺が歩いていると、前からゴブリンが三体向かってきた。
「ギィ!ギィ!」
鳴き声を出しながら近寄ってくる。
"本日の犠牲者"
"安らかに眠れ"
"自殺志願者"
"人生RTA走者の3名"
なにか始める前に最早そんなチャットがされていた。
ただ倒すだけではつまらないかな?
ふむ。
今までに見せたことのないことをしてみようか。
「ライトニングアロー」
呟いて俺は魔力を使い光の弓と矢を作り出し、矢を構える。
"お?"
"ナイトの魔法始めてみるな"
"騎士のクセに遠距離武器使ってんぞこいつ。騎士道はどうしたよ"
"卑怯者"
色々言われるけど。
俺は弓矢を放った。
ビュン!!!!
ガン!!!!
それは天井にぶっ刺さり。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
やがて大きな音を鳴らして。
"天井が崩れたぞ!"
"ノーコン!どこ狙ってだよ!"
そんなチャットが見える中天井から崩れてきた落盤でゴブリンは下敷きになった。
「グエッ!」
「ギィィィィィィ!!!!!」
聞こえる断末魔。
周囲を漂う土煙。
俺のカメラはすぐ後ろにあるはずだが、その至近距離でも見えないほどの煙が巻き上がっていた。
数秒待っていると視界が開けた。
"大丈夫か?!ナイト!!"
煙が晴れてチャット欄を見た。
"とんでもないノーコンだなこいつ"
"にしてもやべぇな天井が崩れるなんて"
"弓であそこまで威力出るって何気にやばくね?"
"普通天井は崩れないからな"
"やっぱこいつの中身ゴリラだろ"
気になってたけどこのゴリラ扱いはなんなんだろう。
ま、いいけど。
それと勘違いを正しておこう。
「イマノハネラッテヤッタ(今のは狙ってやった)」
俺がそう言うと
"……"
"…………"
"…………"
"…………"
"……"
チャット欄が急に静かになった。
コメント自体が流れてこなくなった。
ユラッチ:?(´・ω・`)
ユラッチがコメントしたかと思ったら一気にチャットが進み始める。
"はぁ?"
"狙ってやった?どゆこと?"
"弓で天井を崩しにいったってか?"
"パワーに極振りしてますやん"
「ケンデタオシテモイツモトカワラナイダロウ?(剣で倒してもいつもと変わらないだろう)」
剣よりも弓とか他の武器での討伐光景も見たいかと思ってファンサービスをしたのだけど。
"脳筋ゴリラが俺たちの気持ち考えたって?"
"別に剣振り回してればいいんだが、ゴリラなんだし"
"騎士なんだから剣でいいだろ。むしろ弓なんて騎士道をどこやった?って聴きたくなるし"
とあまり好評ではなかったようだ。
(なるほど。俺は剣を振ってろ、ということなのか)
頷いて更にダンジョンを進んでいくことにした。
今日は前回の続きからになるのだが。
つまり中ボスは超えていて、次はボス戦のはずだが。
ザッ。
俺はでかい扉の前で足を止めた。
"もうここかよ"
"風呂いってたらもうボス部屋前かよ"
"ダンジョン攻略RTAでもしてんのかよこいつ"
"こいつには冒険者ランクSまでのRTAもしてほしい"
"普通の配信者だと中ボス突破したの見て寝て起きてもまだ次の階層さまよってたりするからなぁ。まじではええよ"
こうやってリスナーと触れ合っていると俺が今まで本当にすごい速さでダンジョンを攻略していたのが分かるな。
(俺ってそんなに実力あったんだな)
なんてことを思いながら
「イクゾ」
"死ぬなよ"
"次のボスはスパイダークイーンだな"
"糸攻撃に注意しろよ脳筋"
"糸に捕まったら即死コンボ食らうぞ"
そんなチャットを見ながら俺は
ピトッ。
扉に手を当てたのだ。
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