第14話 閑話【ユカ視点】素敵なお兄さんだなぁ

「兄さん毎日バイトだなぁ」


前までこんなに行ってなかった気がするけどバイト先が忙しいのだろうか?


よく分からないけど。

でも迷惑かけるわけにもいかないしなぁ。


そういえば


(友達に聞いたけど最近ナイトっていう配信者が出てきたんだっけ)


私は配信者にはそんなに詳しくないけど配信者が好きな友達がナイトという人にハマっているらしく教えてもらったのだ。


今までにない甲冑フルアーマーで冒険して正にその姿は現代に蘇った騎士と聞く。


「見てみよ。暇だし」


端末を操作してナイトについて調べてみると丁度配信をしているところだった。


「チャンネル登録者数50万人?!すごっ!」


あまりに大きすぎる数字に思わず声に出して驚いた。

50万人って日本なら大手1歩手前くらいじゃないかな?


「うーん」


私はもう少しこの人について調べてみることにした。

グッグレ検索で調べると直ぐに結果がヒット。



ナイトとかいう謎の配信者www



「これ、まとめサイト?」


とりあえずまとめサイトを開いてみることにした。


001 名無し

誰なんや?この無名配信者


002 名無し

誰も知らんわ。知ってるの知り合い言うてるユラッチくらいやろ


003 名無し

こいつなんでこんな人気出てんの?


004 名無し

やってることチートやからや

ミノタウロスなんてSランクパーティが何十分もかけて倒すのにこいつソロでワンパンやぞ?

爽快感やばい

脳汁止まらんわ


005 名無し

は?

ワンパン?


006 名無し

ワンパンや

頭おかしい


007 名無し

考察厨が配信者Tier表作ってたで


ナイト ナイト

S Sランク冒険者

A リカポン


F ユラッチ


008 名無し

ガバガバTierやめろ


009 名無し

こいつだけぶっ飛んでて殿堂入りや

どの考察厨もこいつだけ別格扱いしとる。


Sラン冒険者複数集まってもこいつに勝てへん

ナイトはバケモンやで

ぶっちゃけこいつ目線で言うならSランク冒険者すら実力不足なんよなぁ


010 名無し

なぁ、流石にその強さは制限があったりするんやろ?

1分間強くなるからデメリットとしてその後行動不能とか


011 名無し

あったらいいね……


012 名無し

ないんか?


013 名無し

ないわ

だから今配信者共がコラボしたくてナイトのこと必死になって探しとる

日本は自国だからマシやけど海外とか地獄や


アメリカとかこいつのこと兵器呼ばわりして危険視しとる

日本は非核三原則を破った!とかって。


014 名無し

ファーwww

大国アメリカさんがたった一人の冒険者にビビってるってまじ?www草生えるんやがwww


015 名無し

いや、ぶっちゃけナイトは大したことないよ。

過剰評価。

魔法苦手って自分で言ってたから剣の射程範囲外から魔法でチクチクすればいい。後は剣術だけに気をつければいい。それだけで完封できる雑魚オブ雑魚。


まぁ、配信者の中じゃたしかに強いけどそれでもリカポンより上はない。

俺から見たらリカポンと同格。

剣だけでSランク相手に勝つとか夢物語。


016 名無し

こいつ名人のコウタだろ

一連の流れ切り抜きされまくったのにまだ傷口広げるんか?




そこでレスは止まる。


「へー。そんなに強いんだこの人」


まとめサイトを閉じてもう少し調べてみると


「よく見たら今配信中なんだ。同接……5万人?!」


どんな人なんだろう。

見てみると


「ココデオワリダ」


どうやら配信を終わろうとしているようだった。


「あ、終わっちゃうんだ」


ガックシ。

今見始めたところだし、もう少し見ていたかったけど。


仕方ないよね。

配信を閉じようとしたら


「妹はめっちゃかわいい。正直彼女にしたいくらい可愛いし結婚したいとも思ってる。とにかく可愛くて可愛くて目に入れても痛くないし、あと性格は天使だね」


という言葉が聞こえた。

それは画面の中の甲冑フルアーマーの男が話しているようだった。


「んぅ?この見た目で妹思いなんだこの人」


そう思って私はイツキ兄さんのことを思い出していた。


「兄さんは私の事どう思ってるんだろう?」


本当のことを言うとこれくらい言ってくれたら嬉しいかもしれないけど。


「きょ、兄妹でそれはまずいか……」


なんてことを思う。

画面の中のナイトは配信を停止した。


「さて」


カチッ。

ボタンを押して端末の電源をオフにしようとしたそのとき


ガチャっ。

玄関の扉が開いた。


「ただいま」

「兄さんお帰りなさい」


兄さんが帰ってきた。


「はーしんど……」


ばたっ。

玄関で寝始める兄さんの近くに駆け寄る。


「いつもお疲れ様です。でもこんなところで寝たら風邪ひくよ」


労いながら兄さんの体を引きずるようにして部屋の中に運んでいく。


「そういえばバイトってなにしてるんですか?」


その道中気になったことを聞いてみた。

今まで特に教えてくれることは無かったけどなんのバイトをしてるんだろうか?


「ま、いろいろとね」


今日もそんなふうに誤魔化された。


それと、ついさっきナイトの配信を見て思ったことを聞いてみた。


「兄さんは私の事好きですか?」

「なに?その質問は」

「いえ、その。あはは、き、気になっただけですよ」


返答に困っているようだ。

変なことを聞いてしまった。


「このまま寝ますか?」

「あーもう、寝るよ。はぁ、明日も学校だしな……」


もぞもぞ。

そう言ってベッドに飛び込んで布団にくるまる兄さんを見て。


「お疲れ様」


私はそう労い部屋を出る。



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