第12話 不本意ながらバズってしまいました

「なんだこれ」


ユラッチとの2度目のコラボを終えた翌日。

メッセージアプリの通知が999を超えていた。


なんでこんな大量の通知があるのかと思い端末のロックを解除してアプリを開いてみると



由良さん

ねぇ、起きてるんだよね? 999



という表示が1番上にあった。


「俺が寝てる間に999通送ってきたのかよ、この人は」


はぁ……とんでもないのに関わってしまった

そんなことを思いながらとりあえずメッセージを開いてみたらその間も一通メッセージが届いた。



"やっと既読ついた。ずっと見てるから●_●"



怖いんだけどこの人。


なんか重要な連絡でもあるのかと思ってサーっと軽くスクロールしてみたら


"チャンネル登録者数50万人だって!"


そんなメッセージがあった。

ん?ユラッチの登録者数が50万人に減ったの?ってことでユラッチのチャンネルの詳細を見に行ったけど


「ユラッチ、登録者数200万人じゃん。増えてる」


なんの話してんだ?

と思って俺はふと自分のチャンネルに通知が山ほど届いていることに気付いた。



〇〇さんがコメントしました

〇〇さんがGoodを押しました

〇〇さんがコメントしました


そんな表示がズラーっと伸びる。


なんなんだこれは。

昨日の配信に対して反応があるようだけど。


途中でやめた配信だけど、何で反応があるんだ?

もしかして途中でやめたから怒られてるのか?


ビクビクしながら昨日の配信を見返すとコメントが。


"なんで配信やめるんだよぉ。見せ場映ってないんだが"

"おいしいところだけ課金制ですか?"

"ワンパンシーンは排出率1%のガチャとなっております"


「なんだなんだ?充電切れちゃっただけなんだけど」


どうなってるんだ?


とりあえず何が起きてるのか分からないがチャンネル詳細を見たら



チャンネル登録者

50万人



「は?」


フリーズした。

え?どゆこと?


俺のアプリバグった?

端末がバグったのか?


トントントン。

古典的だけど端末の角を叩く。


んで、ページをリロード。


「50万人のままだな」


俺のチャンネルの登録者は一晩で50万人になっていた。


なにが起きたんだ?


自分でもなにが起きてるのかほんとに分からない。


いわゆるバズったという状況なのだろうが。なんでバズったんだ?


そんなことを思いながら動画サイトのホームに戻ると



あなたへのおすすめ


【職人技】Sランク配信者ナイト獰猛期ミノタウロスをワンパン


ナイトさんによるミノタウロス10秒クッキング



なんて動画がユラッチの配信から切り抜かれてアップされているようだ。


山ほどあった。


んでもって、そのどれもが何百万再生とかされてる。


ところでさ。


俺に許可取るとか無いわけ?


ていうか、なんでバズってんの?

ほんとに困るんだけど。俺なんて無名でよかったのに。

適当に稼いで消えるつもりだったのに、無理じゃね?これ。


「まずいな。俺としてはここまで目立つつもりじゃなかったんだが。細々と活動しようと思ってたのになぁ」


俺の予想と反してナイトチャンネルはおそらくだが、かなり名前が知られるほどのチャンネルになってしまったようだ。


(どんな反応されてるんだろうなこれ。この切り抜きのコメント見てみよう)


"獰猛期ミノタウロスワンパンってやばくね?"

"そもそも獰猛期は討伐難易度ハネ上がるから討伐報告ほとんどないんだよなぁ"

"それをワンパンってこいつゴリラ?"

"人間はやめてるよなぁw"


「日本人の人間なんだよなぁ」


まさかゴリラ扱いされるとは思っていなかった。

と、そのとき。

コンコン。


「兄さん?もう8時ですけど。先に行きますね?」


ノック、それから扉の向こう側からユカの声。

それで気が付く。


「うおっ、やべ。もう8時かよ」


そろそろ学校の時間だな。


出ないと。


そうして俺は家を出て学校に来たのだが。


ザワザワ。


教室に入る前から相変わらずザワザワしてる。

ココ最近はずっと騒がしいな。


なんてことを思いながら。


ガラッ。

教室に入ると


「やっと来たか!お前!」


田中がすっ飛んできた。


「え?なに?」


いきなりすっ飛んできて話しかけてくるから驚いた。


「なんかあった?」

「なんかあったどころじゃねぇよ!お前昨日のユラッチの配信見たか?!」


配信見たどころか俺その現場にいたんだが。


ユラッチファンであるこいつの前では口が裂けても言えないけど。


「で、どしたのさ?」

「聞いて驚け!」


スっ。

端末を見せてくる田中。


そこに映っていたのはギルドからの救援で保護された俺とユラッチの姿。


俺がダンジョン名ぼさっと呟いたからリスナーのひとりくらいは現場に見に来ていたのかもしれない、その時に盗撮されたのだろうか?


「この前からユラッチの周りをウロチョロしてるナイトとかってヤツ、この学園の生徒みたいだぜ?」


ドキッ!


「は?はぁ?そ、そんなわけないだろ?」


なんでバレてんの?

俺特に身分がバレるようなものは身につけてなかったはずだが。


そう思っていたら画像を拡大する田中。


「驚くよな?でも見ろよこれ」


そう言って田中が指し示すのは、


「これ、この学園の入学祝いのボールペンだぜ?」


俺が昨日の紙に書くのに使ったボールペンを指さしていた。

そこにはこの学園の名前【光坂高校】と刻まれていた。


それで気付いた。

昨日のギルド職員の顔を。

これを見てあんな顔してたのか。


「くぅぅぅぅぅ!!!誰なんだろうな!このナイトって!!なっ?!お前も気になるよな!」


終わった……?

ダラダラダラダラ。


滝のように汗が流れ落ちる。

俺のバカ……学園の名前の入ったボールペンを持ち歩きやがって。


昨日の俺をぶん殴りたい。


「お、おい。顔色悪いけど、大丈夫か?西条」


そんな俺を心配そうに覗き込む田中。

そこでハッとした様な顔をした。


「なぁ、おい西条」

「な、なにさ?」

「お前まさか知ってるのか?ナイトの正体」

「し、知らないでちゅ……」


少しの沈黙。

それから俺を救うように鳴るチャイム。


「ま、いいや。後でな」


ポンと肩に手を置いて席に戻る田中。

俺も自分の席に向かうと


「イックン。おはよう♡今日もカッコイイね♡」


隣に座る由良さんに話しかけられた。


4時間目の授業は剣術の授業だった。


ダンジョンが現れてから学校ではダンジョンを攻略できるように剣術などを教える授業が採用されている。


「よーし。じゃあ今日は居合切りの練習だな」


先生がそう指示を出すとクラスの陽キャが先生をからかう。


「先生、もしかしてナイトの動画見た?www」

「よく分かったなぁ。あれはすごかった。無駄のない美しい居合切りだった」

「そりゃ、分かるよ。このタイミングで居合切りてw」

「でも、お前たちもあんなふうになりたいだろ?」


そんな会話を聞きながらひとり思う。


「なんだこのブームは……」


まぁいいや。

練習しろと言われたので居合切りの練習をする。


そのとき。

じーっ。


(由良さんか?)


視線を感じてそっちに目をやるが。


(委員長?)


俺を見ていたのは委員長の白田 梨花リカだった。


その人が俺にカメラを向けて俺の事を撮影しているようだが。


(なんで、そんなことしてんだ?あの人)


委員長としての仕事か?

なんなんだ?

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