第3話  手元に携帯を携えて

 会社に戻ったのは20時を少し廻った当りだったと思う、通常は定時で幕張の24時間対応のコールセンターに切り替えるが回線は受付がパンク状態の様で、対応協力の為切り替えずに置き大分減ったとは言え未だ電話は鳴って居る、対応状況報告の為と場所に寄っては以降の余震で停まる可能性が在り、氏名こそ伺わなかったが何方の方にお住まいかの確認はして置いた。


 件数が減って居り21時にて対応終了の指示が飛ぶ、電話対応を続け疲弊した者もおり電話対応の交代をする、そう掛けて来られる御客様はまさか関東の外れに繋がって居る事は気付いて居られない、直傍の担当店に繋がって居ると思って居られる、勿論此方も見知らぬ場所である、どんな建物か、どんな処かも判らない、設置環境に因り同じ震度でも作動感度が変って来る…。


 此の地区の電話は掛って来なく為った、此処の震度は5、戸建ての住宅が多い地区だから以降の電話は減るだろう、だが都心や其の周辺の県等高層の建物が多い地区では、低層階の再停止は減るだろうが高層階では余震でも停まる可能性が高い、長周期で伝わる地震波では高層階では揺れが増幅されるだろうから、外回りの対処班が戻って来て俺を含め電話担当を替わる。


 事務スタッフは良くやったと思う、現場に出ない純粋な事務スタッフは慌てふためき電話を掛けて来る御客様より話を聞き出し対応方法説明する、店長ともう一人ベテランの男性社員を残し特殊な設置場所等と思われる御客様の対応をしていた、家族が心配なのは皆同じ子供さんを家に残して対応して居るのだから、我々男性社員が後を引き継ぎ帰宅させる。


 唯、家族が心配なのは皆同じ被災地域の方はもっと不安を抱えて居られる、震源地に近い方からの電話は続いて居る被災を免れた茨城や千葉の方などから…、お断りして置きますねカバー出来るのが関東圏迄です、其れ以北は違う企業体なので此処には繋がらないんです。


 電話も疎らにに為って来た、乳飲み子を抱える家内の事が気に掛かる、被害が有ったか怪我は無いかの確認はして置いた、無事で在る事を聞き出し帰りは相当遅くなりそうだとだけ伝えて置いた、21時を廻り幕張へ回線を切り替え当日の電話対応は終了した。


 其の侭本社からの引継ぎ連絡を受ける、電話対応は明日も同じ様に行う事、何故なら都心では帰宅困難に為って居られる御客様が居られる事、余震を恐れて避難された方や使用する事を避けて居られ未だ機器の使用をされておらず使えない、其の事に気付いて無い御客様も居られる可能性が高い事が想定される、対応強化の為のメンバーの割り振りが伝えられる唯明日に為って見ないと判らぬ事も多い、通常業務も未だ寒い時期である為発生は免れぬ、中には供給停止を機器の故障と判断される方も居られるだろう、蓋を開けて見ない事には判らんと言う事なのか…。


 明日は一時間の早出と成る事を告げられる、ミーティングの最期に余震如何に因っては非常呼集が掛かる可能性も有る、選抜員は常に手元に携帯を携えて置く様に告げられる…。

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