第2話 暗き理由
眼の前には一本の真っ直ぐな道が有った、闇と言う名で出来た一本道、其の左右は灯が灯って居るからこそ其の闇の道が際立つ、今居る此処から一直線に東京を目指す道が…。
<首都圏に電気を貢がせる>そう昔から言われる其の言葉を表す道が其処に存在して居る。
首都圏へ電気を送る道、
当時は知る由も無い事だが、福島原発の被災後直ぐに詳しい事を何も聞かされず、着の身着の儘バスに載せられ避難所を探し転々と移動して居た、後の身内が居る事も知らずに…。
停まった所から視線は右手へ其の暗き道を遡る、良く見ると真っ暗な中に何名かが表に居られる、何故?、余震が来るかもしれないのに?、当たり前の疑問だろう…。
高齢の方々の様で声を掛ける、此の地区の方々は私が何者で在るかは停めて有る社用車と、私が身に纏って居る制服で私の身分は御存知であるから…。
「こんな時間に如何されました?」
「何が起きて居るんですか?」
返って来た答えに耳を疑う、其れは勿論地震の事では無かった…。
「大きな地震で…」
「大変な地震が有ったのは判ったんですが、津波が押し寄せたのを見て居たら突然電気が停まって、其の後何が起きたかどう為ったか、どうすれば良いのかも判らないんです…」
時間も取れない為掻い摘んで状況を説明しご理解頂いた、確かに災害が少ない土地柄で防災に関して希薄な土地、高齢のお一人暮らしの方が多く、車もお持ちにならない方が居られる。
情報弱者の方が取り残され、其処には二日程電気は来なかった。
今では一人一台のスマホが当たり前、でも当時は携帯すらお持ちにならない高齢の方が居られた、防災観念がなければラジオすら無く、TVの情報無しに知る由も無く取り残された方々が居られた。
会社に戻り本社の指示を確認、今回は本社と施工会社で1000名規模で被災地へ向かうらしい、我々には手薄に為る業務のカバーをして欲しいと指示が届く、皆無事に帰って来られるのを祈るばかりしか出来ないが…。
遠き昔起きた事を届ける為に現地へ駆けて居た、今は其の地にお住いの方々が元の生活に戻られる為に、ほんの少しだけお手伝いに向います、熊本、大阪、水害に遭われた栃木の方々等、其の地の企業様からお手伝いの要請が有れば向います。
故郷の熊本へは志願しましたが、残念乍ら会社の指示にてお手伝いに向かう事が出来ませんでした、故郷の一大事にお手伝いに向かう事が出来ず悲しかった、Twitterで私をご存知の方なら分かると思いますが、その前年の7月に導入が始まったラスボスを直すのが私だけ、此の距離では交代要員を派遣する事が難しく長期間滞在する事に成る、ただ被災地の方で私と電話で話をされた方はお読みの方の中に居られるかも知れないですね?、向かった部下が復旧の対処方法が判らず、回復指示を出す為に状況確認伺い私と直接お話された方が幾名か居られますから。
話が逸れて仕舞いました、此の頃行く先も決まらぬバスの中で一人の青年がバスに揺られて居る事を、私は知る由もなかった…。
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