少しだけ呟きます
JOY POP
第1話 遠く離れた地にて起きた事
其の当日二件目の作業を終え三件目に向かう途中だった、走行中の車が激しく揺れる…。
<非常呼集が掛かる筈だ!>
大至急会社へ引き返す、災害発生時には使用して居る社用車丸ごと緊急出動要員として登録されて居る、保安確保、一般家庭の緊急復旧、危険回避、其の後通常状態へ復旧後は一軒ずつ伺い安全が確保された事を確認して、通常使用出来る事を説明と試運転迄行う必要が有る…。
赤色灯などは勿論付いては居ないが、道路封鎖された地区への通行許可は車両ナンバーと搭乗員迄含め、各所管轄機関へ登録されて居る、普段通常使用して居る軽のバンだが…。
各社の規模に応じて数名ずつ選抜され登録される、勿論日祭日夜間要請が掛かる自身の家庭に被害や怪我人等が無く出社可能で在ればの話だが。
会社に戻ると直ぐに非常呼集が掛かり大災害発生の通知受ける、被害甚大地域へはグループ本社の社員と供給管施工班が向かうらしい、私は我が社の担当エリア内では遠隔の供給停止は無かった様で、各戸の供給不良の対応を求められる、事務所の電話は鳴りやまず、関東の外れに有るのだが、遠くは都内、都下、川崎、横浜などの神奈川からも問合わせが鳴りやむ事は無かった。
社を出発し粗丸ごと一棟が供給不良に為って居る少し古めのマンションへ向かう、勿論エレベーターは止まって居る、14階まで駆け上がるカビゴンにはかなりキツイがそんな事を言って居る暇は無い、各フロアの各戸へ声を掛け復旧作業して降りて行く…。
一階迄降りる頃には日が落ちる時間に近かった。
マンションの各戸を周り乍ら、御客様宅でTVから流れる映像に起きた被害の大きさに愕然とした…、震源地から離れた場所とは言え、次の余震で又供給が絶たれて仕舞う、大声で停止して居ないか、次に起きたの時の対処方法をご存じかと叫びながら降りて来た…。
次に向かう場所、被害状況が刻々と絶える事無く携帯に入り続けている、その時頭を掠める関西の震災の事が…。
此の地では無く未だ千葉に居た頃、其の時は神戸の埋め立て地に本社が有る其のメーカーのサービスマンだった、被害でお亡くなりになった社員さんの御名前が伝わり続けていた…。
ただ、今回の被害の大きさの違いは解る、襲い来る波の大きさが伝えている…。
気を取り直し車を走らせ次へ向かう、追加で入って来た対処する御客様の無駄の無い道筋を考える、この順番では最後の御宅は夜に為るな、其処は山の中腹…。
闇が落ち中腹を目指し昇る、本震での被害は無いが何かが違う、街灯も家の明りも灯って居るのに何か暗い気がする、何故か判らぬ儘最後の地区を目指し坂を昇って行く…。
最後の御宅を終え、以降の追加は入って居ない、少し坂を昇り路地を右折、右折と繰り返し引き返し始め坂を下り始めるが両側に住宅が在る、其れが切れ開けた処迄来て我が目を奪われ車を止めた、俺は此処迄ずっと前を見て昇って来た、振り返る事無く…。
其処で此処迄の道程で普段と違う違和感の訳を漸く理解した…。
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