三日目

はぁぁ…部屋を出づらい…また誰か殺されてるだろうし…

「私、また殺されなかった…」

運が良いのか悪いのか。そんなことを考えながらのろのろとドアを開け、歩き出す。

と同時に、唯愛ちゃんが隣の部屋から出てきた。唯愛ちゃん、殺されてない!よかった。

「唯愛ちゃん、おはよー。」

「め…明菜。お、おはよう…」

昨日と同じように緊張した態度をとっている唯愛ちゃん。私がそんなに信用できないのかなぁ。みんなを守る狩人なのに…

二人で何も喋らず会議室へ向かう。


あ、会議室ついちゃった。嫌だなぁ。重い足取りで会議室へ入る。いる人を確認する。

由香ちゃん、いる。

拓野くん、いる。

秋日くん、いる。

晴也くん、いる。

柚ちゃん、いる。

冬良くん、いる。

…あれ?全員いるな。え?!もしかして、私…

『はい。今日は誰も殺されませんでした。狩人が守ったんだね〜。』

やった…!由香ちゃんを守れた!嬉しい!

『カイギジカンスタート(会議時間スタート)』

会議が始まった。狩人だってことがバレないように、嬉しさを頑張って飲み込む。

「俺、話していい?」

冬良くんがボソッと言った。「誰とも喋りません」オーラ出してるのに、どうしたんだろ。

「俺さ、占い師なんだよ。」

えっ!占い師誰かなーとは思ってたけど、冬良くんだったんだ。

いや、まてまて。嘘かもしれないじゃん。

「それで、昨日の夜、こいつを占ったんだ。」

冬良くんがそう言って、誰かに指を指した。

冬良くんが指を指した先には、唯愛ちゃんがいた。

「わ、私?」

唯愛ちゃんが顔をこわばらせた。



「こいつは、人狼だ。」



は?何言ってんの?唯愛ちゃんは違うよ。

「唯愛ちゃん、違うよね?」

唯愛ちゃんに聞く。

「………」

唯愛ちゃんは、下を向いて、喋ろうとしない。

「…そういえば…唯愛って、嘘つけないんじゃなかった?」

由香ちゃんの声。

そういえばそうだ。唯愛ちゃんは、嘘をつくのが苦手だった。トランプとかで人狼ゲームをやった時、唯愛ちゃんが人狼になっちゃった時も、今と同じ態度をとっていた。だから、唯愛ちゃんが人狼の時は、すぐに人狼ゲームが終わってしまっていた。

……でも、友達が人狼とか信じられないよ。いや、どちらかというと、信じたくない。

たぶん、冬良くんが言っていることはあっている。唯愛ちゃんが人狼と言われると、いままでの唯愛ちゃんの行動の謎がすべて解ける。それでも…あってるって認めたくない。


みんなそれぞれ考えているんだろう。会議室は時計の音しか聞こえない。

その時、一人が話しだした。

「そうだよ…私、人狼。」

唯愛ちゃんが言った。前を向いて言っていることに、本当なんだ、と分からされる。

「私、人狼になった時、「絶対バレる」と思ってた。死ぬ覚悟は…できてないけど。」

小さい声で喋り続ける唯愛ちゃん。

「ねぇろろ。会議時間はあとどのくらい?」

唯愛ちゃんがろろに聞く。

『あとねー。1分くらい!』

…前から思ってたけど、会議時間短すぎ。あと2分くらいのばしてくれてもいいのに。

「由香。明菜。」

唯愛ちゃんが私達にしか聞こえないくらいの音量で呼んだ。

唯愛ちゃんに体を寄せる。

唯愛ちゃんが言った。

「私たぶん…というか、絶対追放される。」

追放されるわけないよ!

そう言いたかったけど、唯愛ちゃんの言う事の方が正しいので、言おうとして開けた口を塞いだ。

「由香と明菜は、私のこと忘れないでね?」

唯愛ちゃんの切ない言葉に涙が溢れてきそうになる。唯愛ちゃんも泣いてないんだから、私は泣いちゃだめ。そう言い聞かせ、なんとか涙をとめる。

由香ちゃんも、私と同じことを考えていたようで、歯を食いしばっている。

『カイギジカン シュウリョウ(会議時間 終了)』

会議が終わった。


『──メイナ キテクダサイ(明菜 来てください)』

無表情で空中画面の前に立つ。目をつぶって、

『唯愛』

を押した。何も考えないようにする。考えちゃうと、後悔でいっぱいになっちゃうから。

『投票終了しました!結果を言うよ!』

結果を大声で言わないでほしい。存在が消されるなら、誰も見てないところでやってほしい。

そんな私の願いは叶うはずもない。ろろは大声で言った。

『今日追放されるのは──唯愛ちゃんです!

投票数は8人中6人だよ。』

唯愛ちゃんに投票してない2人は、唯愛ちゃんと、由香ちゃんだろう。唯愛ちゃんに投票してしまった自分が酷いと思った。

「じゃあね。」

唯愛ちゃんが悲しい笑顔でこちらに手を振っている。思わず唯愛ちゃんに手をのばす。

「い、唯愛ちゃ」

『さようなら。唯愛。』

唯愛ちゃんが、消えた。

私の手をのばしてつかんだものは、空気だった。


『あなたは狩人です。誰を守りますか?』

無意識に『由香』を押す。やっぱり、友達は信頼できる。だから守る。

唯愛ちゃんもそうだ。人狼ってことがバレたあともバレていない時も、嘘をついたりはしていなかった。嘘をつかないから信用して話を全て真実として聞くことができた。

たくさんの気持ちが混ざり合う。頭がどうかしそうだ。


「本気で…私殺されたい…」

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