二日目

『会議室へ移動してください。会議室へ移動してください。』

ろろが言葉を繰り返している。

みんな緊張した顔つきで会議室の椅子に座った。その時、

「けっ啓太!!啓太はどこだ?!」

晴也くんが叫びながら会議室のドアを乱暴に開けて入ってきた。啓太くんがいないの?座っている人を見回してみると、本当に啓太くんはいない。ということは…

『はいはい。晴也くん座って。昨日の夜に殺された人は、』

もうみんな分かりきった顔をする。だってここにいないのは…

『啓太くんです。残念だったね。初日に殺されちゃうとは。』

「お前っ!!ふざけんな!!!」

晴也くんはロボに殴りかかろうとしたが、ロボがさっとよけたので、その場で転んでいる。

『恨むなら僕じゃなくて殺した人狼じゃない?』

「お前がここへ連れてきたんだろ?!俺はお前も人狼も一生恨んでやる。」

ジッとロボと私達をにらみつける。

『カイギジカンスタート(会議時間スタート)』

突然、ロボが喋った。こんな状況で会議が始まるの…?

「えと…今、会話全然できないと思うんだけど、いいかげん喋んないと、人狼にみんな殺されると思うんだよね…」

柚ちゃんがおずおずと言う。

確かにそうだ。会議をしないと、人狼にみんな殺されて終わりになっちゃう。

「ね、由香ちゃんは誰だと思う?」

そっと由香ちゃんに耳打ちする。

「私は、茉莉香とか秋日とか…って、正直明菜も信じられないんだけど。」

「あっそっか。そうだよね。」

友達に「信じられない」と言われると、少し傷つく。でもしょうがないよなぁ…

「唯愛ちゃんは?誰を疑ってる?」

また「信じられない」と言われるかもだけど、やっぱり気になる。

「…………」

唯愛ちゃんは下を向いて沈黙している。

「唯愛ちゃん?」

「えっあっ何?」

唯愛ちゃんはあわてて私に聞き返してきた。

「誰を疑ってるのかなーって思ったんだけど。」

「わ、私は…今はわかんないや。」

引きつった笑顔でそう答える。唯愛ちゃんも、やっぱ怖いのかな。私の質問に答えるとまた沈黙してしまっている。

「茉莉香ちゃんは、市民なんだよね。」

秋日くんが茉莉香ちゃんに聞いた。

「あ、は…はい。市、民、です…」

茉莉香ちゃんは途切れ途切れにそう答えた。

「俺はお前のこと、疑ってるけどな。」

拓野くんの声。

「え、ち、違います…!」

必死で反論する。

「わ、私、本当は…霊媒師なんです…!お願いします…信じて…!」

急な告白。えっ茉莉香ちゃんって霊媒師なの?!

「じゃあ、市民って言ってたのは、隠してたってことよね。」

由香ちゃんが会議に参加する。

「はい…あの時に言ったら殺されると思って……」

「嘘の場合もあるけどな。」

晴也くんの冷たい声。

なんか、茉莉香ちゃん質問攻めされてる。ちょっと可哀想だな。

「昨日は誰も追放されなかったんだろ?ってことは、嘘をつくのもたやすいはずだ。」

「本当…なのに…」

茉莉香ちゃんの絶望したような声。もう何を言っても、晴也くんは信じてくれないだろう。

『カイギジカン シュウリョウ(会議時間 終了)』

良いような悪いようなタイミングでロボが言った。

これ以上続けても悪い空気のままだし、終わってよかったかも。

『コノ クウチュウガメンニ トウヒョウシテクダサイ(この 空中画面に 投票してください)』

投票の時間だ。スキップをまた押そう。

『デハ フユラカラ キテクダサイ(では 冬良から 来てください。)』

冬良くんは、空中画面の文字を何回も見直している。スキップ探してるのかな?

『あ、もうスキップはないからね。スキップがあるのは一日目だけ!』

「え……」

じゃあ、嫌でも誰かに投票しなきゃいけないの?


『──メイナ キテクダサイ(明菜 来てください)』

私は空中画面の前に立った。誰にしよう。私が疑っているのは…みんななんだけど。

『アト20ビョウデ トウヒョウスルヒトガランダムデエラバレマス(あと20秒で 投票する人がランダムで選ばれます)』

えっ。あと20秒?!急がなきゃ!

うーん。私が一番疑っているのは、茉莉香ちゃんなんだよね。周りの人の意見に流されてるのかもしれないけど。

『茉莉香』

を震える手で押す。


『投票終了しました!結果を言うよ!』

ろろが喋った。誰が追放されちゃうの…?

『今回追放される人は、茉莉香ちゃんです!ちなみに茉莉香ちゃんに投票した人は7人でした!』

「え…わ、私…死ぬの…?」

茉莉香ちゃんは、恐怖で顔が真っ青にして、歯をガチガチさせている。

『では、茉莉香。さようなら。』

ろろがそういった瞬間、茉莉香ちゃんは消えた。

「えっ」

「?!」

「消えた…」

「茉莉香ちゃん?!」

「は?」

みんなが口々に言う。

茉莉香ちゃん…消えちゃったの…?罪悪感がすごい…でもこれから、もっとこの感覚を味わうことになるのだろうか。そう考えると恐ろしくなってくる。

みんなも、よく見るとこわばった顔をしている。

「あと6人か…」

「え?」

誰かのつぶやきが聞こえたが、誰かは分からなかった。


『あなたは狩人です。誰を守りますか?』

今夜は、誰を守ろう。誰も信用できない。でも、誰かを守らないといけない。

昨日は唯愛ちゃんを守ったから、今日は由香ちゃんでいいかな。

『由香』

を押す。

ああ、こんなつらい日が、あとどのくらい続くだろう…こんななら、殺されるほうがマシかも…

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