一日目

『デハ、ジンロウゲームヲハジメマス(では、人狼ゲームを始めます)』

AIのような声。これはロボの声かな?

今はここに来て二日目。一日目、解散して、役職が発表されただけで、あとはヒマだった。お腹とかへったりは謎にしなかった。ご飯食べなくていいって楽。

あぁ、とうとう『人狼ゲーム』が始まってしまった。まぁ、追放されなきゃ大丈夫でしょ!私人狼じゃないし。あ、でも殺されるかもしんないか。

『カイギジカンハ 3フンデス デハ スタート(会議時間は3分です ではスタート)』

チッ チッ チッ チッ……

時計の秒針の音が静かになった会議室に響く。

「あの…」

由香ちゃんがおずおずと言う。

「まず、自己紹介しません?みなさんの名前分かんないので…」

あ、確かに。

「私は由香っていいます。」

「私、唯愛だよ!」

「私は、明菜です。」

「俺の名前は拓野だ。」

「僕は秋日(あきび)です。」

大人しそうな男の子。

「私は柚(ゆず)でーす。」

唯愛ちゃんと性格が似てそうな女の子。

「俺、晴也(はるや)っていうんだ。よろしくな!!」

元気そうな男の子。

「俺は啓太(けいた)だよー」

晴也くんと友達なのかな?元気な男の子。

「私…の名前…茉莉香(まりか)…です…」

人見知りな女の子。

「名前、冬良(ふゆら)。」

珍しい名前!一匹狼みたいな男の子。

これで自己紹介は終わったかな。ううう。全員の名前、覚えらんないよぅ。心の中で泣いているとき、

「私…市民です……」

茉莉香ちゃんが急にCO(カミングアウト)してきた。

「へぇ、市民なんだ。」

私は疑いもせずにそう答えた。

「いや、ウソかもしれないじゃん!」

「信じないほうがいいってー。」

晴也くんと啓太くんが口々に言った。あ、そっか。ウソ言ってる場合もあるんだ。

「う、ウソは…いって…な……」

茉莉香ちゃんが必死に反論しようとしているが、途中で下を向いて黙り込んでしまった。私悪いことしちゃったかも。

『カイギジカンシュウリョウデス トウヒョウノジカンニ ウツリマス(会議時間終了です 投票の時間に 移ります)』

突然ロボが喋りだす。

えっ。もう終わり?自己紹介しかしてないけど。

「えっ延長とかできないの?!」

啓太くんが質問をする。

『コノ クウチュウガメンニ トウヒョウシテクダサイ(この 空中画面に 投票してください)』

ロボは啓太くんの質問を無視して喋り続ける。ロボットだから啓太くんの声とか聞こえないのかも。

あと、空中画面って何?ろろがつけた名前?そのまんまじゃん。

『デハ フユラカラ キテクダサイ(では 冬良から 来てください。)』

冬良くんがはじめに呼ばれた。あいうえお順じゃなくて、ここに来た順なのかな?じゃあ、私最後らへんだ。


『──メイナ キテクダサイ(明菜 来てください)』

はー!やっっっと呼ばれたー。私最後だったんだ。

空中画面の前に立つ。空中画面には

『誰に投票しますか?』

と、表示されていて、その下には私以外のみんなの名前があった。

うーん、誰にも投票したくないな……

迷って表示されている文字をもう一度よく見る。すると、一番下に小さく

『スキップ』

とあった。私はすぐにそこを押した。

『はーい、投票終了だよー』

押した瞬間、ろろの声。び、ビックリした〜。

『結果が出たので集まってくださーい。』

みんな空中画面に近づく。

『結果は…スキップでした…』

…明らかにテンション下がってる。

「良かった〜みんな『スキップ』見つけたんだね。」

秋日くんが言った。

「小さくなかった?見つけるの大変だったんだけど。」

柚ちゃんがほおを膨らませて言った。

「ね~。」

私は共感したように言う。

『はいはい!会話は終了!自分たちの部屋に戻る戻る!』

ろろがせかすように言った。

「えーやだぁ~。」

啓太くんが赤ちゃんがわがままを言うように言った。

『じゃ、強制的に帰らすよ?』

ろろがそう言った後、ピッピッと機械をいじっている音が聞こえてきた。

と、思ったら、いつの間にか自分の部屋に移動していた。

「えっ」

勢いあまってベットに転がる。

ここの世界はろろが自由に操れるのかな。もう何でもアリじゃん。てか、眠い…


ウィンッ


ベットでうとうとしていると、突然空中画面の音。ずっと思ってたけど、空中画面って名前長いな。あと、ネーミングセンス…

いろいろなことを考えながら、空中画面のとこまで行く。

『あなたは狩人です。誰を守りますか?』

画面にはそう表示されている。そうか、私狩人だった。誰守ろう。唯愛ちゃんか由香ちゃんだな。…唯愛ちゃんでいっか。あの子嘘つかなそうだし。(由香ちゃんも嘘つかなそうだけど!)

『唯愛』をタップ。すると空中画面は薄くなり、空気の中に消えていった。

「はーっ!疲れたー。」

緊張からほんの少し開放された私は、ベットにダイブするとともに、眠りについた。



どこかの部屋の一つ。機械を操作する音が聞こえる。空中画面を操作しているようだ。その画面には、

『あなたは人狼です。誰を殺しますか?』

そう表示されていた。

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