人狼ゲーム
なつふゆ
プロローグ
ピピピピピピ……
アラームの音が部屋中に鳴り響く。
「ん………うるさい………」
手をのばしてアラームを止める。
「ふわぁぁぁ………」
私は桜井明菜(さくらいめいな)。中学一年生である。
のそのそと部屋を出て、朝食を食べに行く。
「おはよう。朝ご飯できてるよ。」
「お父さん、もう家出ちゃったよ?起きるのおっそ。」
私のお母さんと弟が同時にしゃべる。私のお母さんは、とっても優しくて元気な人。最高のお母さん!!弟の名前は暖(はる)っていうの。生意気だけど、かわいい弟なんだ。そしてお父さんは力が強くって頼りになる!中学校もうまくいってるし、私の人生最高ですか??
朝ごはんを食べて着替える。
「行ってきまーす!!」
「おはよう!!」
「あっ明菜。おはよう。」
「おっはよー明菜!!」
クールにあいさつしたのは月江由香(つきえゆか)ちゃん。成績優秀な女の子。
元気にあいさつしたのは、雪村唯愛(ゆきむらいあ)ちゃん。元気なムードメーカー。小学生からの友達なんだ。こんな子たちの親友で良かった!
「明菜、見て見てこれ。」
「ん?何?」
唯愛ちゃんがこっそりスマホを取り出してなにかのサイトを開いている。
のぞき込んでみる。
『人狼ゲーム』
赤い字でそうかいてある。はじっこで狼が口を開けている。
「へー人狼?インターネット版かな?」
由香ちゃんが言う。
「はい、ポチッとな」
唯愛ちゃんが指で『START』とかいてあるところを押した。
すると、
『参加人数は何人ですか?』
と出てきた。
「三人でいいよね?」
「うっうん!!」
私は急いでうなずく。
『3』を押す。するとまた文字が出てきた。
『名前を入力してください。』
「名前だけでいいなら……やる?」
さすがに人の名前を勝手に入力するわけにはいかないので、唯愛ちゃんが聞いてくる。
「私は別にいいけど…」
名前くらい別にいいよね。
「私も大丈夫」
「じゃあ、やっちゃうよー」
名前をちゃちゃっと入力し、『次へ』を押す。
『人狼ゲームを始めます。
始める
やめる 』
唯愛ちゃんは『始める』を即座に押す。もうチャイム鳴っちゃうよ??でもちょっとならいっか!
───今になって思う。簡単に『人狼ゲーム』なんて始めなければよかった。
『始める』を唯愛ちゃんが押した瞬間、私達の体が光りだした。声を出すひまもなく、変なホテルっぽい場所にワープした。
「は?」
「…………」
「え」
私達は混乱して、建物を見上げながら突っ立ってることしか出来なかった。ぽかーんとしていると、
「お前らも『人狼ゲーム』始めたのか。」
「きゃっ誰?!」
突然、後ろから男の子の声。振り返ると、男の子が立っていた。
「俺、拓野(たくや)。一人で『人狼ゲーム』始めた。」
「ここどこか分かる?」
「いや、分かんね」
即答される。拓野くんも何も知らずに来ちゃったのかなぁ。
『10人そろったね!じゃあ人狼ゲームを始めよう!!』
急に声が聞こえた。見ると、ロボットが立っている。
「誰?人狼ゲームってどういうこと?」
隣に立っていた知らない男の子が言った。
『このロボットの名前はロボ第15号で、僕の名前は……ろろでいいや。人狼ゲームの説明をするから、この建物に入って!』
え、結局ロボットの名前しか分かんなかった…ロボ15号、略してロボごしに喋っている人のあだ名は分かったけど。
私と唯愛ちゃんと由香ちゃんは、3人でくっつき合いながら、おそるおそる建物の中に足を踏み入れた。
『じゃあ、人狼ゲームの説明をするよ。』
ホテルのような建物の会議室のようなところで、ろろが話し出す。
『みんな、人狼ゲームのルールは知ってるよね?今回の役職は、市民5人、人狼2人、占い師1人、霊媒師1人、狩人1人の合計10人だよ!!』
『まぁ伝えることはこれくらい?あとでいくつか付け足すかも〜。』
説明少ないな。まぁルール知ってるからいいけど。
『あ、付け足し一個目。』
付け足し早くね??
『追放されたり、人狼に殺された人がどうなるのか、知りたいでしょ?教えてあげる。』
確かに知りたい。本当に死んだりは…しないよね。
『追放されたり、人狼に殺された人は、存在がなくなって死ぬんだ。』
……どういう意味?
『まあ要するに、もともといなかったことになるってこと。その人の記憶もなくなる。君たちは記憶なくなんないけど。あの世でも存在を忘れられるから、天国へ行っても地獄だね♡』
楽しそうな声を出している。
「そっそんなの……!!」
由香ちゃんがそう言って椅子から思い切り立ち上がった。椅子がガラガラと音を立てて倒れる。
「ただ死ぬよりもつらいじゃない!!!」
叫ぶように言う。シーンとなるなかで、ろろだけが、
『そうだね~』
と軽く言った。たぶん、今みーんなろろにイラついてるだろうな。その証拠にみんな顔が赤くなっていた。もちろん私も。人の命軽く見てる。許せない。
「質問があんだけど。」
拓野くんが手を上げて言った。
『なに~?』
「人狼を全員追放するか、人狼と市民側が同数になった場合、どうなるんだ?」
『その場合はね、残った人全員もとの世界に帰れるよ。』
ここって別の世界なのか…
『自分たちの部屋についたら役職見せるから、かいさーん。』
そう言われ、私達は強制的に解散した。
うぅ、一気に情報が頭の中に詰め込まれて、熱出そう。
部屋のドアがいくつもあるところに、一つ一つネームプレートが飾られていた。その中の「明菜」と書いてあるドアを開け、部屋に入る。机と椅子、ベッドが置いてある。お風呂とトイレは別の小部屋にあって、まるでホテルだ。いや、もしかしてここ、ホテルかもしれない。周りを見回しながら椅子に座る。すると、空中にモニターのようなものが現れた。びっくりして椅子から落ちそうになったが、なんとか体制を戻してモニターの文字を読んでみる。
『あなたの役職は、【狩人】です。
夜になると、自分以外の誰か一人を守ることができます。』
モニターにはそう表示されてあった。
「私…狩人……?」
本当に人狼ゲームがはじまったと実感して背筋がゾワッとする。もう、逃げられない…
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