第12話


樹はぐったりと瞼を開くことすら出来ない…。


樹は空腹で凍えている…。


樹は服のまま濡らされて凍えている…。


顔は血の気が引き、唇は変色してきた…。


忘れられてる樹でも、未だママを想っていた…。


「ママ…ママ…僕ね…」


「ママ…ママ…僕ね…ママが好き…」


「ママ…僕ね…今度の休みは一緒にいていい?」


「ママ…僕ね…お腹が空いた…」


「ママ…ママ…僕ね…ママの唄が聴きたいよ…」


「ママ…ねんねんころりよ唄って…」


樹は意識が遠のくその中で、ママの子守唄が聞こえて来た…。


ねんねんころりよ、おころりよ…。

ぼうやは良い子だねんねしな…。


樹はママの子守唄にいだかれて、ひと粒涙をポロッと流し、そのまま天へ旅立った…。



翌朝梨花が目覚めると、樹の姿が見えないことに気が付いた…。


「いつきー!いつきー!!」


返事は無い…。


ベランダ、押入れと探すがいない…。


そして、浴室の扉を開けた…。


濡れた服のままで横たわる樹がいた。


「樹!」


抱き上げ揺らしても目を開かない…。


身体は冷たく、息さえしていない…。


樹を抱き、梨花は呆然とその場に座り込む…。


どれだけの時間が過ぎただろう…。


ふと気付いて、梨花は119番へ電話をする…。


「119番です。どうされましたか?」


「樹が…樹が死んじゃった…」


電話の切れた後も樹を抱いたまま、座り込んだまま、梨花は虚ろな瞳をしていた…。


その時、玄関扉を開き彼が帰って来た…。


樹と梨花を見るなり、彼は言った…。


「俺は知らない!樹が汚いから水をかけてやっただけだ…樹が風呂から出てこないのが悪いんだ…」


救急センターから連絡を受けたパトカーのサイレンの音が聞こえてきた…。


警察官が入ってきた…。


警察官は梨花と彼に別々に話を訊く。


警察官が樹を寝かせ、服を脱がせる…。


調べてみると、傷だらけの身体では、虐待を受けていたのは一目瞭然…。


樹を救急車へ乗せ、梨花と彼はパトカーへ押し込まれた…。



樹は飢餓と凍死で亡くなった…。


最後までママを思って亡くなった…。



現在では、梨花と彼は厳しい尋問を受け、罪を認め服役している…。

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いつきの子守唄 ぐり吉たま吉 @samnokaori

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