第11話




家戻った梨花は、彼の顔を見るとやっと安堵の表情になる…。


彼は梨花に残り物のチキンを食わせ、ビールを飲ませて、その後、梨花を抱いた…。


久々に彼に抱かれて喜ぶ梨花は、樹のことをすっかり思い出さない…、


梨花の中に彼は果てて、服を着ると、梨花の財布を持って来させた…。


「なんだ3万か…」


「明日はもっと頑張るから…」


「なんか食いもん買ってくるから…先に寝てろ」


彼は3万円をポケットにねじ込み、そのまま家を出た…。


「すぐに帰って来てね」


梨花の言葉に返事もせずに彼は玄関扉をバタンと閉めた…。


梨花は仕事疲れと彼に抱かれた安心感で、樹の姿の見えないことに不信感も無く寝むってしまった…。


樹は浴室で濡れたまま、朦朧としていた…。


しかし、薄っすらと聞こえた梨花と彼の声で梨花が家に帰って来たのを判っていた…。


「ママ…ママ…僕ね…」


声にならない呟きを樹は何度も何度も呟いた…。

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