第8話


梨花は彼に捨てられたら、また頭が変になると言った畏れ(おそれ)からか、彼を溺愛しているからか、梨花におきるストレスは全て樹に向けられた…。


樹は血の繋がりの無い、ただの梨花の連れ子としか彼は思っていない…。


彼は梨花を金づる、金をくれる女としか、もう考えていなかったから、樹の事もどうなろうと知った事では無かった…。


ことある事に…いや、自分の気分次第で樹を殴った…。


樹はふたりに虐待されてた…。


彼は樹の目つきが悪い、性格が悪いと裸にして、外のベランダに樹を座らせる…。


泣けば罰だと言い、樹に笑えと言う…。


そして笑うまで食事はさせない…。


無理矢理作る、泣き笑いの顔を見て、彼は指差し嘲った…。



たまに梨花が、彼に対して口答えをすると、彼は梨花も殴った…。


殴られた梨花は、樹を叩く…。


お前のせいだと、樹を叩いた…。



樹は、意味も無く食事を抜かれ、叩かれ、傷だらけになり、痩せていった…。


樹は少しの音にも、ビクビクし、彼の腕が少しでも動くと首をすくめ、小さな腕で頭を庇う仕草をするようになった…。



彼はまた、梨花の財布から勝手に金を抜き、昼間出掛ける様になる…。


この時間が唯一、樹の気の休まる時になった…。


樹は優しかったママを思い出していた…。


「ママ…ママ…僕ね…ママ…」


樹は優しいママに抱っこされた時を思い出す…。


いつかはきっと優しいママに戻ってくる…。


空想の中では、ママはとても優しかった…。

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