第6話

アパートの住人がひとり増えても、彼は梨花が出掛けると、彼も毎日何処かへ出掛けて行き、樹は相変わらず、部屋にひとりで梨花を待つ…。


梨花は彼が居るからと、彼に樹の食べ物を買って来てと頼んでいた…。


だから樹は毎日昼食を食べているものと思っていたが、彼は何も買わずに何も食べさせずに外出していた…。


樹は、男に叩かれるのを恐れ、昼食を食べさせてくれない事も、彼に乱暴をされている事も梨花には話さなかった…。



梨花は、治まっていた頭痛や不眠がまた、時々振り返す…。


働かない彼が頻繁にお金を無心するようになったのだ…。


愛する彼の申し出に、中々嫌とは言えなくて、梨花は2万、3万と渡していた…。


しかし、店での収入が一向に増えない…。


彼氏が出来てから休みがちの上、店に居る時も待機が増え客がつかない…。


だから他の嬢達がやらないプレーまで無理して行なう…。


梨花は苛立ち、ちょっとした樹の失敗にも怒りに任せ樹を叩いた…。


樹を叩いて、鬱憤を晴らした…。


そして、彼も堂々と梨花の前でも樹を責めるようになる…。


「樹!ちょっとおいで!」


梨花に呼ばれて、梨花の所へ小走りで向かう…。


横たわる彼の足先につまづく…。


怒った彼はいきなり樹の腹を蹴った…。


蹴られた樹は、飛ばされて、壁に叩きつけられる…。


なきべそで彼を見る…。


「謝れ!」


それを見た梨花が来て、樹を叱る…。


「樹が悪い!謝りなさい!」


樹は怯えて黙っている…。


「謝れないのか?なら、ベランダで正座して反省しろ!!」

 

彼に無理矢理ベランダに連れていかれ、夜なのに、彼が寝るまで正座をされられた…。


ベランダで樹は悲しく窓から見える部屋の中を眺め、涙を流し呟いた…。


「ママ…僕ね…」


外ではコオロギが鳴いていた…。


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