第4話


そんな梨花でも、常に頭痛や吐き気がある訳では無く、気分が勝れる時もある…。


「梨花です、お客様、お上がりになります」


ラストの客を見送って、部屋を片付け、今日来てくれた、客に感謝のメッセージを送る…。


客から貰った贈り物と途中で買った、樹の明日のお弁当を持って、足早に帰宅する…。


暗い部屋に灯りを点けると、樹がうっすら目を開けた…。


「ただいま」


「ママ…おかえり」


目を擦り、樹は起き上がる…。


「今日、ケーキを貰ったから、一緒に食べる?」


ひとつのショートケーキをふたりで食べる…。


「残りは、明日、食べなさいね」


「ママ…今日は元気?」


「いつもゴメンね、今日は大丈夫みたい」


「ママ…ねんねんころりよって唄ってくれる?」


「じゃぁ、お布団に入りなさい…」


子守唄を唄いながら、息子の樹を愛おしく思う…眠りに着くまで背中を叩き、髪や頬を優しく撫ぜた…。


シャワーを浴びて化粧を落とし、今度の休みは一緒に出掛けようと、シャワーのお湯を肩から流していると、急に樹が不憫に思えて、涙が目から溢れてくる…。


「樹…ゴメンね…ゴメンね…」


声に出して樹に謝るその声を、自分の耳で聞いていると、また、自分を責めている…。


樹が寂しいのは、私のせい…。


私が悪い…私なんか…。


この先どうなるのかな…?


死にたい…。


死ねば楽になるかな…?


寂しい…。


誰かにすがりたい…。


梨花は今夜も眠れなくなった…。



眠れぬまま、梨花はスマホを開く…。


店のホームページを開き、自分への口コミ、書きコミ、店の他の娘達のページも読み流す…。


そんな時、ふと目に触れたのは、出会系アプリ…。


梨花は女としての寂しさを埋める為に、出会系をやってみようと思った…。


アプリを調べて、女性は完全無料のサイトに登録をする…。


店での写真は、顔をぼかして写しているが、出会系のサイトには、そのまま、顔出しでアップした…。


登録している男達を検索する…。


何故かアプリを開き、男達を検索していると、気分が良くなる…。


梨花は男達のプロフィールから、何人かのガテン系を選び出し、自分自ら、その男にアクセスする…。


返事が直ぐに来る…。


まるで自分がどこかの令嬢の様な扱いをしている…。


他の男は、フレンドリーに軽めに梨花を口説いてる…。


金を持っているよとアピールする人…。


皆、梨花を必死で口説く…。


梨花は、自分がソープで働く風俗嬢なのを忘れてしまう程、ちやほやされて、楽しくなった…。


中でも、話が良く合う大工だと名のる男と会う事になった…。


休みの日、樹と一緒に出掛けるよりも、罪悪感無く、男と会う方を梨花は選んだ…。


初めて出会ったその男に、梨花はひと目で好意を持った…。


居酒屋に入り、飲みながら男の話を聞く…それは楽しく、樹の事も店の事も忘れさせ、程良く酔って、その日の内に男と寝た…。


梨花は女の喜びを思い出し、積極的にその男と付き合う様に持っていった…。


店の休みだけでは、もの足らずに休みを取って男に会う…。


すっかり梨花の頭痛も治まり、樹の事も忘れがちになった…。

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