(三)-2

 そう応答すると、しばらくの沈黙の後、衝撃の答えが返ってきた。

「そんなものはない」

 返答は、飾り気が一切なくシンプルで明快だったが、二人を驚かせるには十分だった。二人は気づくと「えーっ」と大声を上げてしまっていた。

「じゃ、じゃあ小惑星八八七九八号っていうのは……?」

「それは一〇年前の宇宙海賊漫画の主人公が根城にしていた小惑星の名前だ」

 ヤコヴレフが無線越しに答えた。

「そういうことだ。ここは危険だ。さっさと航路へ戻れ」

「でもシュンが言ってたぜ」

「お前たちを騙したんだろう。そうすればライバルが減るからな」

 ツポレフの言葉に、ジョージもシッコも、お互いの顔を見合ったまま声が出なかった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る