2020年
増殖中(初出:2020/08/16)
その海岸までの道路は封鎖してあるし、そもそも今年は例の病気があるので海水浴場を開いていない。
それなのに、誰もいないはずの海に常時不自然な波が立っているという報告が複数の船からもたらされた。
というわけで、視えるオレが駆り出された。
相棒と一緒に問題の海岸まで行ってみると、どえらいことになっていた。
人間のいない砂浜と海を、大量の別の生物が遊び回っている。
砂浜では直立歩行しているが、人間ではない。髪が背丈と同じくらいあって、くちばしがとんがっている。顔(?)以外は鱗で覆われていて、三本の尾で器用にバランスをとって歩いている。アマビエだ。
アマビエが海で泳いだり、浮き輪でぷかぷか浮いてたり、バナナボートに乗っていたり、ジェットスキーで走り回っている。
砂浜でも、ビーチバレーしていたり、スイカ割りしていたり、デッキチェアでくつろいでたり、パラソルの下で昼寝してたりする。
しかもこのアマビエたち、全部色が違う。シンプルな黒一色のがいるかと思えば、全身が虹色で少女漫画みたいなキラキラおめめのアマビエもいたりする。
めちゃめちゃカオスだ。
どうしてこんなことになっているのか相棒に聞くと、人間が描いたアマビエの絵が「アマビエ」として顕現するから、描かれた数だけアマビエがいるのだそうだ。しかも、最初に海からやってきた本物のアマビエを絵にしないと疫病退散と豊作のご利益がないし、それまでは偽物のアマビエが増え続けるのだという。
「なんだそれは」と思わず相棒に文句をつけたが、「ご利益がデカいぶん難易度が高くなっている」と淡々と返されてしまった。
そうこう言っているうちに、またアマビエが増えた。が、足が三本あって、カラフルな髪をした人間にしか見えない。
「あれもアマビエか…?」と相棒に聞くと、「擬人化アマビエの絵から顕現したアマビエだな」と答えがきた。
なんか、もう、いろいろとついていけない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます