2019年
猛怪注意(初出:2019/05/18)
ポストに「猛怪注意」のチラシが入っていた。
うちのマンションの裏に獰猛な妖怪がうろついているので、近づかないようにというお知らせだった。
そんなことを言われたら、見に行くのが当たり前だろ。
というわけで、さっそく裏口に回ってみると、本当に妖怪がいた。
これがどういう妖怪なのかは全然分からんけど、動物園でも見たことないヘンテコな格好の四つ足の生物で、全身がボワボワでフサフサな毛皮にくるまれてて、その毛の先がぽーっと光ってるから、エイリアンか妖怪以外はありえないよな、これ。で、マンションの管理会社が「妖怪」っつってるんだから、妖怪なんだろう、きっと。
ソイツはオレを見ると、牙を剥きだしてギーッとかクェーッとか声で威嚇してきた。声がめっちゃドス効いてて怖いし、あのギザギザの牙に咬まれたらすげえ痛そうだから、近づいちゃダメだな、確かに。
でも、ソイツのほうから「きゅーぐるぐるぐー」という、人間のハラの虫と同じ音が大音量で聞こえてきた。野良だったら、エサ獲るのも大変だから、ハラ減るんだろうなあ。
オレは部屋に戻って、うちのネコのカリカリをちょっとビニール袋に入れて、また妖怪んところに戻った。妖怪は、今度は吠えてこないで、鼻をくんかくんかさせてオレの手元をじーっと見ている。お、やっぱり食い物だってのが分かるんだな。
おっかないんで、カリカリの入った袋をぽーんと妖怪のほうに投げる。妖怪はワンコみたいに袋の落ちたポイントに走っていった。かがみこんで、しばらく袋の口からくんかくんかと匂いを確認していたけど、前足(?)を袋につっこんで、カリカリをかきだして一口食べる。
顔を上げた妖怪は、一瞬でオレの目の前にきた。ほんとに目の前、目の高さで空中に浮いてる…。
毛皮の中から、小さい両目がギラギラしていて、すんげえ怖い。ちびりそうだ。
「コンナ 安イ モノヲ 我ニ 食ワセルトハ、無礼ニモ ホドガ アロウ。ふぉあぐら トマデハ 言ワナイガ、モット美味イモノヲヨコセ」
おい、誰だよ、妖怪にフォアグラの味を教えた奴は。
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