第42話 天魔波旬

 正法眼蔵随聞記三の三

 「人に貴びられて財宝出来いできたるを以て道徳彰あらわれたると自らも思ひ、人も知るなり。是れ即ち天魔波旬てんまはじゅんの心に付きたると知るべし。」

 人から貴ばれて財宝を手にしたことを以て仏道を学んだ成果、徳が現れたと自分でも思い、世間の人もそう思う。これは即ち天魔である波旬が心に取り憑いたと知らなければいけない。

 人から「凄い、凄い」と言われ、多くの人に知られ、たくさん稼いだら、人間として優れていると、今の世の中思われているようだ。いかんねえ。駄目だねえ。

 天魔波旬が取り憑いたようなものだそうな。

 頭の中の考えに取り憑かれ、欲望に取り憑かれ、他人の評価に依存し、真実・真理を見失ってしまう。それを天魔波旬が取り憑いたと表現されている。

 今の世の中、こういう正気ではない人間が大手を振って歩き回り、大きな声で喚いている。

 これを末世と言わずしてなんと言うのか?

 坐禅して正気を取り戻しましょう。

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