第34話 固執と妄想

 正法眼蔵随聞記二の十

 「近代の学者、自らが情見を執して、己見にたがふ時は、仏とはとこそ有るべけれ、また我が存ずるやうにたがへば、さは有るまじなんどと言って、自らが情量に似たる事や有ると迷ひありくほどに、おほかた仏道の昇進無きなり」。

 近ごろの仏道を学者は、自分の考えに固執して自分の考えと異なっている時は「仏とはこういうものであるはずである」として、また自分の理解と異なると「そんなはずがあるまい」などと言って自分の考えに似たところが有るのではないかなどと迷い歩くほどに、まったく仏道の理解が進まないのである。

 ここは仏道の学び方について道元禅師が述べられたところだ。

 ちょっと仏道からは離れてしまうけれど、ここを読んで今の世の中を眺めてみる。

 今の世の中、自分の考えに固執している人間ばかりに見える。自分は正しいと妄想し、執着する。異なる意見には、そんなはずはないと否定しまくるか、自分の考えに無理矢理引き寄せて訳のわからんことを叫ぶ。そんな光景が毎日飽くことなく続いている。

 ロシアもウクライナも中国もアメリカも自分の考えに固執して妄想をたくましくしている。

 日本もおんなじだ。自分は正しく他は間違っているとひたすら妄執する人間で溢れている。

 いやはや困ったもんだ。

 固執と妄執を捨てられませんかねえ?実に幼稚で気味が悪い。怖いねえ。

 

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