第35話 静かに普通に生きていく

 正法眼蔵随聞記二の十二

 「人は思ひ切って命をも捨て、身肉手足をも斬ることは中々せらるるなり。然れば、世間の事を思ひ、名利執心のためにも、かくのごとく思ふなり。ただ依り来る時に触れ、物にしたがって心器を調ととのふる事難かたきなり」。

 人間というのは思い切って命を捨てたり、身肉手足を斬るようなことはかえって出きるものだ。世間の評判や名利に執心するためにそのようなことをやろうと考えるのだ。ただ物事が発生した時に臨んで、ことがらの状況に従い、心を整えることが難しいのである。

 今の世の中、何かする度にわあわあ騒いでいる。自分は凄いと騒いでいる。注目されれば儲かる。注目されたい、かねが欲しい、実にあさましい。

 昔、暴力団の人間が10日間だったか穴にこもって出てきて悟りを開いたと称して宗教団体をこしらえた。信者が集まった。その暴力団員は若い綺麗な女性信者をレイプして逮捕された。

 10日間穴の中で我慢すれば教祖になって金儲け、やりたい放題ということだったんだろう。欲望のためなら10日間くらいなんとかなるのだ。しかし本性は変わるわけはない。

 人間は欲望のためならしばらくの間なら必死に頑張る。

 しかしそんなものは表面だけの偽物だ。

 真にすごいことは、毎日瞬間瞬間を静かに普通に真実・真理に基づいて生きていくことだ。それを死ぬまで続けることだ。

 これは本当に難しい。静かに普通に真実・真理に基づいて生きていくこと、これができれば真の人間と言えるのだ。

 自分は自分は!と騒ぐのは止めなさい。

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